関税自主権ってなんだ?? | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

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ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします


当初は農業の問題を取り上げてTPPに反対する人たちが多かった。


僕も取り上げたが、多くのブログで「日本の農業は今のままでも弱くない」「むしろ自由貿易は日本の農業にとってのチャンスだ」という論調が目立ち始めた。


そうすると、今度は関税自主権(??)とかいうよくわからない論理を持ち出す人が増えてきているように見える。


僕はTPPには賛成だ。これに関しては農業絡みでいろいろ書いたが、樋口稔 さんからリクエストがあったので、一度、もうちょっと幅を広げて整理してシンプルに自分なりの考えを書いてみたい。


①輸入をブロックしても貿易黒字は増えない


 マンデル・フレミングモデル というのがある。有名な経済理論の一つ。これによると、輸入の制限は貿易黒字を増やさないという。なぜだろうか?数式やグラフが出てくるといやな人も多いだろうし、それだけでひとつの記事になるので、言葉で簡単に説明すると・・・


輸入を関税や非関税障壁を使ってブロックしたとしよう。当初は貿易黒字が増大する。当然、GDPが増え(景気がよくなる)。すると当然、その国の通貨(円)が買われる。


その結果何が起きるだろうか?円高に進めば、輸出が減る。その結果貿易黒字は結局増えない。


だから、輸入制限は貿易黒字を増やすことはない。これは経済学の基本だ。


さらに言うとこの場合、貿易黒字の額は減らないが、輸入と輸出のそれぞれの額が減少する。これは消費者と企業の両者にとって大きなマイナスになるのは当たり前のことだ。


比較優位 。これもいろんな人が言っていることだが、各国が自分の得意なモノを生産・輸出しそれ以外のものは他国から購入する。これが効率がいいのは誰もが理解できるはずだ。


「アインシュタインはその秘書よりもタイピングがうまいとしても、アインシュタインは科学者としての研究に専念すべきで、秘書はタイピングに専念すべき」というのがわかりやすいたとえ話。これを国に置き換えても同じだ。各国が自分の得意な分野のモノを生産して輸出しあえばいいということ。


③消費者にとって、貿易の自由化は幅広くメリットがある。より安い輸入品が買えるし、購入の際の選択肢も増えるはずだ。同時にこれは消費者のみならず企業にも当てはまる、より安い原材料、より多くの選択肢の存在は企業活動にもプラスだ。


④輸入にまつわる仕事。貿易が活発になれば貿易にまつわる業務が増えるはずだ。仮に貿易黒字が減ったとしても、輸入にまつわる仕事が増えれば国内景気と雇用にプラスに働く可能性は高い。


⑤収支は必ず一致する。貿易赤字に万が一陥ったとしてもそれは必ずしも悪いことではない。他国が貿易黒字で稼いだ円は日本製品の購入に当てられるか日本株や日本の債券・不動産などへの投資に充てられるからだ。


こう考えれば自由貿易のメリットは簡単に理解できるし、関税自主権がどうのこうのと言って関税をかけて貿易の促進を阻害しようと言ってることがいかに的外れか容易に理解できるはずだ。


貿易というのは勝ち負けではないし、輸入と輸出のそれぞれの額が増えることこそにも意味があるわけだ。


さて、その上でTPPどうなのよ?っていうと


*個人的に懸念しているのは労働の移動の自由というのが入っている点だ。これが今後の交渉でどうなるのか見ていきたい。しかし、アメリカだって移民に対する姿勢が厳しくなっているようにも聞く。これは意外と無条件に認めるというようなことにはならないのではないだろうか?


*TPPの条件交渉に参加できないから不利じゃないの?


→仮にTPPでなくて二国間交渉のFTAを推進したとしよう。日本が日本に有利な条件を設定すれば、相手にとっても有利な条件を飲むのは当たり前だ。二国間交渉だからと言って日本が一方的に有利な条件を結べると考えるのは単純すぎる。また、日本がそんな交渉がうまいとはあまり思えない・・・。


→二国間交渉や変に条件交渉に参加するのは利権団体や族議員のインフルエンス活動を活発化させ、交渉決裂に追い込まれる可能性も高い。作られた条件を飲むくらいが今の日本の政治の体たらくを見ていればいいと個人的には思っている。


TPP自体は貿易額を拡大させないという声もある。仮にそうだとしても、TPPはEUとのFTAなどのその他の国々との自由貿易協定へ向けてたたき台だと思っている。そして、自由貿易は前半部分で述べたように大きなメリットを日本にもたらすはずだ。


だから、関税自主権なんていう古臭い重商主義の臭いがする理論を持ち出して反対するのはまったく的外れだろう。


TPPに関する過去記事

TPPって国論を二分してるの? (2010/11/14)

農業と比較優位 (2010/12/13)

日本の農業は弱いのか (2010/12/22)

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