アメリカの医療がゆがんでいる理由 | ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドンで怠惰な生活を送りながら日本を思ふ 「東京編」

ロンドン・東京そしてNYといつの間にかいろんなところを転々とそしてまた東京に。海外なんて全く興味なかったし今もないという予想外の人生でした。今は東京に戻りしばらくお休みしていましたが少しずつ再開してみようかと思ってます。よろしくお願いします

一般的には過度な市場機能の導入がアメリカの医療制度をおかしくしていると言われている。しかし、僕は本当にそうなんだろうか?という疑問を持っている。

過去にもそうじゃないんじゃないかなあということをオバマの国民皆保険導入にからめて何回か書いてきた。


今日はメディケア とよばれる高齢者向けの医療保険制度の問題点を扱ったブログから。

メディケアやメディケイド の診療報酬は国家によって決定されている。そしてアメリカの医療費の異常な伸びの原因の一因は実はこの両制度にあるとも言われている。

まずは要約したい。

http://american.com/archive/2010/october/confessions-of-a-price-controller

政府による統制価格がアメリカの医療制度の値段を押し上げている。その理由は?


メディケアは高度な専門医療の診療報酬が過度に高額に設定され、初期医療の報酬は過度に安い。その結果メディケア制度にかかるコストを押し上げ初期診療を行う医者が不足している。


私はすべての間違いの原因は政府による価格統制にあると主張してきた。

現在の医療費決定の方法は供給サイドでどれだけの(労働と資本)の投入量があったかのみに基づいて計算されていて、需要サイドはまったく無視しているのだ。

たとえば、高度な技術が必要な心臓の手術の診療報酬は高額だ。

しかし、もし心臓疾患が薬によって治るとしたら手術の必要はなくなる。それでも心臓外科の報酬は高額に設定され続けるのが現在の制度だ。なぜなら心臓外科を行うための資本と労働の投入量が大きいから。


本来は需要がなくなれば、価格は低下し外科医に他の診療分野に移ろうというインセンティブが働かねばならないのに現在の制度ではそれはない。


これはもちろん、大げさすぎる例だが要点をよくあらわしている。


要はいくつかの診療は需要に対して価格が安すぎるために需要超過になり供給がおいつかない。一方で別のいくつかな診療の価格は高すぎるために医者にその高価格の診療(たとえそれが患者のためにならなくても)を行うインセンティブを持たせ納税者に多大な負担を負わせている。


アメリカは医療費が自由すぎるから問題なんだ。という声もある。繰り返しになるがアメリカの財政を圧迫しているのはメディケアやメディケイドと呼ばれる公的医療保険制度だ。そして、なぜかという理由がここに明確に示されていると思うのは僕だけだろうか。


しかも、市場機能に基づかない医療価格の政府による設定は明らかに技術革新を妨げている。より安くニーズのある医療技術の革新が進んでしかるべきなのに需要サイドがまったく無視された価格設定はそういった可能性を妨げているのだ。


より安く簡素な医療技術の導入は医者にとっては自分の報酬が減ることになるから公定価格のもとでは導入するインセンティブがない。メディケアの安い医療費は患者の側にもそういった医療技術の導入を望むインセンティブを減退させる。


さらに需要がない分野は価格が安くなる。そうすると供給する側はよりニーズのある医療分野に移っていくはずだが公定価格は価格を通した適切な資源配分も捻じ曲げてしまう。


そして、これらは個人的にはこれからの日本でも起こっていく可能性の高いことだと思っている。いや、すでに起こっていたがこれまで税金の投入と経済の高度な成長でなんとかごまかせたのだろう。


多額の税金を投入することで何とか成り立っている国民皆保険の制度。一方で診療報酬は公定価格であり規制されている。そのために医療分野ごとに需要と供給のバランスを崩すような事態が起こっている。産婦人科医や小児科医の不足と彼らの過酷な勤務実態、そしてその分野のなり手不足。一方で比較的楽でおいしい分野や開業医が増えている。


しかも繰り返しになるが公定価格は技術革新の余地やインセンティブを減退させる。


逆に言うと診療価格の自由化が医療のさらなる技術革新を生み出す可能性は高いだろう。技術革新というと高額な医療だけがイメージされがちだが、おそらく大きく価格が下落する分野も増えるのではないだろう。


さらに価格を通した適切な資源配分を通して医療分野間の医者の偏在の問題も相当解消されるはずだ。


少なくとも官僚や医師会などの業界団体があれこれ考えてやるよりはよっぽどか効率的だろう。


やはり、診療報酬の自由化や健康保険の民営化が必要なんじゃないかなと言う気がますますしてきている。


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参考記事

医療保険の民営化 一考 ①

医療保険の民営化 一考 ②

,オバマの医療保険改革(頭の体操)

オバマの医療保険改革批判(頭の体操その2?)