「みらいいろ‥3月11日‥」


(八)

徐々に落ち着いてきた頃、みんなが僕の部屋へと来た。

「いきなりごめんね。」

リュウが申し訳なさそうに言う。

別に良いよと僕は言うと、みんなを中に入れた。

まだ、スタジオにも行ける状態じゃないしね。

みんなは床に座り、僕はベッドに腰掛けた。

「何だか、こうして集まるの、久々な気がする。」

ぽつりと僕は呟いた。

「そうだね。ずっとバタバタしてたからね。」

リュウが言った。

僕らは久々に、たわいもない話で笑い合った。

ずっと張り詰めていた空気が、何だか切れたような気がした。

みんなの顔を見た時、僕は凄く安心した。

「ライブはさ、やっぱり中止にならざるを得ないよ。」

寂しそうにリュウが言った。

僕らは三月末に、ライブをやる予定だった。

今の状況じゃ、中止はやむを得ない。

「やっぱり、やりたかったよな。」

「久々のライブだったもんね。」

タケとヒロが、心底残念そうに言った。

「仕方ない事だけどな、やっぱりな。」

フジも残念そうだった。

電力不足で、無駄に電力を使える状態じゃない。

中止は残念だけど、その電力を、被災地の人々に届けるのが第一だった。
「みらいいろ‥3月11日‥」


(七)

その日、僕は買い出しに行ったものの、どこも品切れで帰ってきた。

大通りは、いつになく混雑している。

店は、どこもかしこも人でいっぱいだった。

コンビニにさえ、ほとんど何も無い。

駅は、相変わらず混み合っていた。

運休なんかが相次いで、交通手段がほとんど断たれた状態だった。

翌日の午後に、店長から電話があった。

計画停電やなんかで、先の見通しが立たないから、しばらく店を休業するとの事だった。

また何かあったら連絡すると、店長は言った。

分かりましたと僕は答え、電話が切れる。

それからしばらくは、身動きが取れず、引きこもる日が続いた。
「みらいいろ‥3月11日‥」


(六)

ふと目が覚めた。

既に朝になっていた。

時刻は、8時ちょっと過ぎ。

昨日の事は、悪い夢だった。

そうであって欲しいと思いながら起きあがる。

部屋は昨日のまま、散乱した状態だった。

ああ、現実だったんだ。

そっとベッドから起き上がる。

何だか、いやに静かだな。

そんな事を思っていると、不意に電話が鳴った。

「もしもし。」

「無事だったか。」

一瞬の間の後に聞こえた、低い声。

電話の相手はフジだった。

「良かった。フジも無事だったんだね。昨日は繋がらなくて。」

僕は小さく息を吐いた。

「昨日さ、あの後すぐ帰らされたんだけどさ、電車止まっててどうにもなんなくてよ。仕方ないから、歩いて帰ってきたんだ。」

苦笑い気味に、フジが言う。

「すぐにみんなに連絡しようと思ったんだけどさ、疲れちまって。」

そう言いながら、フジが笑った。

「いやでも、無事で良かったよ。みんな心配してたよ。」

僕の一言に、フジは苦笑いを漏らした。

いつもと変わらないフジの様子に、僕は安心していた。