「みらいいろ‥3月11日‥」


(五)

テレビから流れる被害状況と警報。

いつの間にか、辺りは薄暗くなっていた。

何度も起こる余震。

僕はベッドの上で膝を抱えたまま、じっとしていた。

久々に感じた、恐怖と孤独感。

夜になるのが怖かった。

ベッドに潜り込んだまま、点けっ放しのテレビの映像を見る。

揺れる映像。

駅前で、帰れずに途方に暮れる大勢の人。

各地の震度。

そして、襲い来る津波。

その津波に流される家。

一瞬にして消える街。

何だよ、これ?

現実味の無い映像。

実感出来ない現状。

夢でも見てるのかな?

それでも、度々起こる余震に、ああ、現実なんだと、ぼんやりと思った。

僕は頭から毛布を被ると、ぎゅっと目を閉じた。
「みらいいろ‥3月11日‥」


(四)

不意に電話が鳴る。

「もしもし。」

「良かった、無事だったんだ。」

相手はリュウだった。

どうやらリュウも、あの後すぐに帰らされたみたいだった。

家に着くと、リュウはみんなに連絡をした。

ヒロとタケも家に居て、二人とも無事みたいだった。

最後に連絡を入れたのが、僕みたいだった。

「フジに繋がらないんだ。」

リュウが最初に連絡を入れたのは、フジだったらしい。

携帯も家電も、繋がらないとの事だ。

「僕も連絡入れたけど、繋がらなかったよ。」

僕の一言に、リュウが小さく息を吐いた。

「今日はさ、とりあえずみんな家に居よう。下手に動くと危ないし。」

リュウの言葉に、僕はうんと頷いた。
「みらいいろ‥3月11日‥」


(三)

ドアを開けて中に入ると、部屋の中はめちゃくちゃだった。

もともと物は少なかったから、壊れてる物は無さそうだった。

僕は真っ先にギターを手に取った。

幸い、目立った傷なんかは無かった。

後で、もっとよく確認しよう。

僕は携帯を開いた。

圏外が表示されている。

しばらくは、携帯での連絡は無理かな。

僕はテレビを点けると、玄関脇に置いてある電話に向かい、留守電を確認した。

実家とカイトから連絡が入っていた。

みんなからは来ていない。

今日はみんなバイトのはずだった。

リュウは駅ビルの中にある飲食店でバイトをしている。

ヒロも駅ビルの中の雑貨屋でバイトだった。

タケは駅前の居酒屋だ。

タケは夜からだと言っていたから、まだ家に居るはずだ。

リュウとヒロも、もしかしたら帰ってきてるかもしれない。

問題はフジだった。

フジは、一駅先になるCDショップでバイトをしている。

先程からテレビで流れる、各地の被害状況。

沿岸の地域では、津波に警戒して下さい。

そうアナウンサーが、繰り返し言う。

この状況じゃ、たぶん電車は運休になる。

一駅といえど、歩いて帰って来るには、それなりの時間がかかる。

僕は受話器を取ると、フジの携帯の番号に電話をかけた。

「おかけになった電話番号は、現在電波の届かないところにあるか…。」

メッセージの途中で、僕は受話器を置いた。

再び持ち直すと、今度はフジの家に電話をかけた。

ひたすらコールが続く。

一向に出る気配が無い。

その内、留守電のメッセージが流れ始めた。

僕は受話器を置くと、溜息を吐いた。