2019. 10. 24 (木) 19 : 00 ~ 福岡シンフォニーホールにて
【第1部】
J.S.バッハ/メンデルスゾーン編:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068より ガヴォット第1番、第2番
ベートーヴェン:交響曲 第5番 ハ短調 Op.67 「運命」
(アンコール)
ベートーヴェン:弦楽四重奏曲 第13番 変ロ長調 Op.130より 第5楽章 Cavatina (カヴァティーナ)
指揮:クリスチャン・ヤルヴィ
MDRライプツィヒ放送交響楽団
【第2部】
ショパン:エチュード Op.25-1 変イ長調 「エオリアン・ハープ」
エチュード Op.10-3 ホ長調 「別れの曲」
エチュード Op.10-5 変ト長調 「黒鍵」
エチュード Op.10-12 ハ短調 「革命」
ノクターン Op.9-1 変ロ短調
ポロネーズ 第6番 変イ長調 Op.53 「英雄」
リスト: パガニーニによる大練習曲より 第6番 S.141-6 イ短調 「主題と変奏」
愛の夢 S.541より 第3番 変イ長調
パガニーニによる大練習曲より 第3番 S.141-3 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」
(アンコール)
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第17番 二短調 Op.31-2 「テンペスト」より 第3楽章
ピアノ:フジコ・ヘミング
この日は朝から一日中どしゃ降りの大雨
朝出勤の時バスは軒並み遅れて全然来ないし、走って駅まで行って急きょ地下鉄に切り替えたらギューギューの満員。帰りのバスもやっと来たと思ったらギューギュー詰め・・
服と靴はびしょぬれ、髪はボサボサ、化粧直しもせずギリギリでアクロスに着いたらこんなお知らせが
ええ~そうなんだ・・
今日は大雨でえらく渋滞してるけど、フジコさんほんとに無事にアクロスに来られるんだろうか・・と一抹の不安を抱きつつ会場へ。
席について気づいたら、私にとってコンサートに必須のハンカチと(演奏前に必ずなめる)のど飴がないっっ あぁ~今日はついてないっ! ・・・と思っていたが、翌日にはこの雨雲が関東地方へ行って千葉や福島などに大きな災害をもたらした。福岡などまだ全然いい方だったのだ・・・
この場をお借りして、被害に遭われた方々へお見舞い申し上げます。少しでも早い復旧を心から願っています。
そんなわけで、前半がオーケストラのみの演奏だった。
最初の曲も事前の告知ではマーラー編となっていたが、メンデルスゾーンの編曲版だった(でも違いは私には分かりましぇん)
私は最近アクロスでは2階や3階席ばかり座っていたので、この日は久しぶりに1階後方の席に座ってみた。いつもの聴こえ方とまた違うような気がしてこれはこれでよかった。
次がメインのベートーヴェンの「運命」。
テンポはサクサクっと速い。ただ熱量がすごいと思った。なんというか、”The Rock ! ”という感じ。 指揮者のクリスチャン・ヤルヴィ氏は今年47歳、ご存知のようにネーメ・ヤルヴィの息子で兄はパーヴォ・ヤルヴィ。 私は初聴きだったが、パーヴォの指揮振りと全く違~う!指揮棒を持たずに振っていたが、すごい情熱的な振り。クリスチャン自身が俳優なんじゃないかと思うくらい指揮台の上で演技してるみたい。さらに時々”yo~, yo~♪”とDJがディスクを回してるようなノリで観ていて面白かった
誰かに似ているなぁと思ったら今年聴いたウィーン少年合唱団のときに指揮していた先生に顔も指揮もそっくりだったw
オケも彼の指揮に応えるごとく、ここぞという爆発力がすごかった。
コンマスの方など痙攣してるんじゃ?というくらい、時々椅子から立ち上がりそうになるくらい、一心不乱に弾いていた。あとチェロの首席の方もこれまた髪を振り乱すかのようにすごい熱量で弾いていた
こういう風だったので、第2楽章などは穏やかな癒しの音楽というよりも、パワーあふれる推進力でぐいぐい来るという感じだった。この楽章の途中、ヴァイオリンが主旋律で低弦が伴奏のときはむしろ低弦、次に低弦が主旋律でヴァイオリンが伴奏のときはヴァイオリンの音を強調していたのは興味深かった。
第2楽章のあとは指揮者は手をほとんど降ろさずにそのまま第3楽章へ。第3楽章のコントラバスの、タ、タララララララ!というとこ、通常よりもさらに高速だった。 最終楽章の提示部の反復あり。
弦の音色にしても金管の音色にしても抜群に美しい、というわけではないが(ただオーボエの音色は素晴らしかった)、オケ全体の一丸となった熱量にとても感動した。こういうオケ好きだなぁ
アンコールはクリスチャン自ら拍手を静めて曲紹介、「ベートーヴェン、カヴァティーナ」。
「えっ?今カヴァティーナって言った??」と思ったら、やっぱり弦楽四重奏曲13番の第5楽章、私の大大好きなカヴァティーナだった オケで聴くのは初めて。当然弦の大勢(たぶん14型)で聴くカヴァティーナは雄壮な響きだった。思わずウルウルとなった
20分の休憩のときに椅子はすべて舞台の両脇に片付けられ、真ん中にスタインウェイのピアノが置かれた
フジコさん無事到着できたかな~と思っていたら、付き添いの人に手を引かれ、腰を支えられながら登場した。そしてマイクを持ってご挨拶。
まずは今日のことについて謝罪され、状況をお話された。1週間前にロンドン公演があるためパリ北駅へ行ったところでスリにあってパスポートごと盗まれたとのこと、ロンドンは(まだ)同じEUなので仮パスポートを発行してもらって無事に行けたが、日本への渡航がなかなか許可がおりず大変だったそうだ さっき会場に着いたばかりなのでいい演奏ができるか自信がないが、試しに弾いてみますね~ と淡々とお話された。
そして、ショパン、リストと演奏した。
ショパンは皆が知ってる曲ばかり。ただ、指がそんなに回るわけではなく、打鍵も力強いわけでもない。「黒鍵」の最後や「革命」の最後もバン!というよりむしろふっと抜けた感じだった。
たどたどしい感じは否めず、「革命」や「英雄」のようなよりパワーが必要となる曲はやや無理があるんではないかなと正直思った。
そうして迎えたショパン最後の「英雄」。だいじょぶかなと思っていた中間部の左手のオクターブ連打のところはゆっくりとしたテンポで乗り切った。・・・と思っていたら、この後から演奏が急に見違えるほどよくなったのだ。これにはびっくり!
そのあと弾いたリストもその調子を保ったままだった。
私が一番聴きたかったのが「ラ・カンパネラ」。今年5月に彼女の同曲を初めて聴いたときに涙があふれた。もう一度聴いてみたくてこの日のチケットを買ったようなものなのだ。
そしてこの日の「ラ・カンパネラ」もやっぱり素晴らしかった
指回りがキレキレの、テクニック的に文句のつけようがないラ・カンパネラの演奏は他にたくさんあると思う。フジコさんのラ・カンパネラは時にミスタッチもあれば、シャープでスピーディなわけでもない。でも何か私の心の琴線に触れまくるのはなぜなんでしょう。ほんとに不思議です。 音色が美しいだけではなく、何か人生の襞や哀愁を感じて聴いていて胸にぐっとくるのです
彼女が弾く「ラ・カンパネラ」は他の人たちとは違う、特別な「ラ・カンパネラ」だと私は思う。
この曲を弾き終わったあとは熱い拍手が沸き起こった。
そしてアンコールに弾いたベートーヴェンの「テンペスト」の第3楽章、これがまた本当に素晴らしくってフジコさん、年齢は非公開なのだが私の計算上はたぶん今年87歳だと思う。こんなに弾ける87歳ってすごい!弾き終わったあとはあちこちから”はぁ~~っ”というため息がもれ、そして拍手大喝采。
フジコさんは『たくさんの拍手ありがとうございまぁ~す』と言って、『このあとのオーケストラにもたくさんの拍手をお願いしまぁす』と仰ったのだが、・・・・もう終わっとるがなww
フジコさんはまた付き添いの人に手を引かれ腰を支えながら一歩一歩ゆっくりと歩いていった。舞台袖でちょっと客席の方を振り返ると、もうみんなすごい拍手だった。
「昨年12月に足を怪我した」そうで、5月のときは手押し車を押しながらの登場だったので、足の状態は若干はよくなっているのかもしれない。
だけど、昨年みた映画「フジコ・ヘミングの時間」の中で、フジコさんはマネージャーも誰もつけず海外への移動もすべてひとり、仕事のオファーの交渉も自分でやっていると彼女自身が仰っていたと思う。現在もそのときと同じだとするなら、彼女のご年齢や動き具合を考えると、もう危なっかしくてしょうがない。 スリ側からしたら足元がおぼつかない、目立つ格好したおばあちゃんは恰好のターゲットになると思います・・・ 盗難ですんでまたよかったけど、もし身の危険があったらと思うととても怖い。せめてどなたかマネージャーを付けた方がいいのでは
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この日はフジコさんの女性ファンと思われる人がいーっぱい。休憩のときもトイレは長蛇の列だった。みんなフジコさんの音色が大好きなんだなぁ
ふ~じこちゃ~~ん(ルパン三世風に)、ほんとにくれぐれも気をつけてくださいよ~!
そしてまたどうかお元気でそのお姿を見せてください!!