コバケン&ハンガリー・ブタペスト響、フジコ・ヘミング:モーツァルト、ドヴォルザーク 他 | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

2019. 5. 29 (水)  19 : 00 ~    福岡サンパレスホテル&ホールにて

 

ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番

              ハンガリー舞曲 第4番

 

モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 ハ長調 K.467

 

ショパン:夜想曲 第1番 変ロ長調 Op.9-1

 

リスト:ラ・カンパネラ (パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 S.141-3)

 

ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 Op.95 「新世界より」

 

(アンコール)

ブラームス:ハンガリー舞曲 第5番

 

 

ピアノ:フジコ・ヘミング

指揮:小林研一郎

ハンガリー・ブタペスト交響楽団

 

 

約1週間前のコンサートです・・・

コバケンこと小林研一郎氏率いるハンガリー・ブタペスト交響楽団の日本ツアーは5月20日(月)の東京芸劇を皮切りに全9公演、この日の福岡公演が千秋楽だった。その間お休みが1日のみだったので、皆さんもさぞお疲れのことだっただろうと思うが、熱演を聴かせてくださった。

 

ご存知の方も多いと思うが、コバケンさんはハンガリーとは強いつながりがある。

1974年に第1回ブタペスト国際指揮者コンクール第1位を獲得。このときは”第1回”ということで国を挙げての力の入れようで、第1次予選から最終の第4次審査まですべてが毎晩ゴールデンアワーに国営テレビテレビで放映されたそうだ。そしてなんと遠い国からやってきたアジア人であるコバケンさんが第1次から最終審査まですべてトップ1ビックリマークで通過する(審査の点数が電光掲示板で表示されるという視聴者にも一目瞭然の審査法だったらしい)という快挙を成し遂げたのだ。 その時のコバケンフィーバーはアイドル並みでほんとにすごかったらしい。ちょっとラジオ局に行くと大勢のファンが押しかけてもみくちゃにされるくらい。

1987年から10年間ハンガリー国立響(現在のハンガリー国立フィル)の音楽総監督を務めたが、このときもオケのメンバーがコバケン就任要請の嘆願書をハンガリー政府につきつけた上での就任だったそうだ。そして彼は同オケにおけるグスタフ・マーラー以来二人目ビックリマークの外国人の就任だった。

テレビで観たのか本で読んだのか忘れましたが、今でもコバケンさんはタクシーのドライバーさんも知っているくらいハンガリーでは国民的英雄で、コバケンさんの名前をつけた通りもあるとか?聞いたような気がします。

コバケンさんも終演後に『(指揮者コンクールで優勝して以来)50年近くハンガリーに育ててもらいました。』と仰っていた。

 

 

今回はハンガリー国立フィルではないが、コバケンさんはこのハンガリー・ブタペスト響の名誉指揮者でもあるので、楽団員の方々も全幅の信頼をおいているといった感じだった。

 

オケはしょっぱなのハンガリー舞曲第1番こそ若干のアンサンブルの乱れや弦がぴりっとしない印象があったが、その後の第4番以降は尻上がりによくなった気がした。

 

 

次のモーツァルトの「ピアノ協奏曲第21番」のソリストはフジコ・ヘミングさん。初聴き!音譜

昨年彼女の映画「フジコ・ヘミングの時間」を観て彼女のことを詳しく知って以来、一度その演奏を聴く機会があればいいなと思っていた。

 

 

フジコ・ヘミングさんの波乱万丈の人生や色んなこだわりなどについてはその時の記事に書いてますので興味あるかたはコチラからどうぞ。

映画を観た後に本も2冊読んだ。

 

 

くよくよしない力 くよくよしない力
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映画を観て、”達観”とも違う、もちろん”諦観”とも違う、いい意味での肩の力の抜けた”なるようになるんだから”というフジコさんの考えにすごく共感をおぼえた。

 

「昨年12月に足を怪我した」とのアナウンスがあり、フジコさんは手押し車のようなものを押しながらステージに登場した。紫の着物生地のような上着に黒いズボン、白っぽいスカーフを巻いていた。「映画で観たのとおんなじ人だぁ~(当たり前ですけど)」とワクワクしたわーい

 

どちらの足を怪我したかはわからないが、右足はペダルをきちんと踏めていたようだが、左足はペダルをほとんど踏むことはなく、時々弾いている途中で痙攣しているかのように細かく震えていた。癖なのか、怪我の影響なのかはわからないが、大丈夫なのだろうか・・・

自分の出番がないときは、握った右手を右足の上でぽんぽんと叩きながら調子をとっていた。

 

見ていると、強い打鍵はきびしそうだった。お年のせいもあるかもしれないし、映画の中で「もう長年手首が痛い」と仰っていたのでそのせいもあるかもしれない。ただ細やかな繊細な音色だった。第1楽章のカデンツァはとても短くまとめられていた(初めて聴いたものだった)。第2楽章はゆったりめだがピアノが入ると一段とぐっとテンポが落ちた。変わって第3楽章は軽快で小気味よかった。

演奏が終わったら私の前の席のロングヘアのおばちゃんが即座に勢いよく立ち上がって拍手し始めたので私はビクっ!ハッとなった(この方のちにまた登場するので”貞子”野口さん(仮名)と名付けますw)

 

フジコさんは舞台から去らずにマイクを持ってそのままご挨拶された。

『たくさんの拍手をありがとうございま~す』(語尾の"ま~す"ってとこが大坂なおみみたいやったsei) 『足を怪我して全然治んないからもうやんなっちゃってます』とサラリと仰った。そして次に弾く2曲の曲紹介をしたあと、『今日がツアーの千秋楽なので、後半もオケの皆さんに大きな拍手をお願いします。私も楽屋で観ます。』とお話された。

 

この2曲、とてもよかった。特にラ・カンパネラ!! フジコさんの代名詞ともいえるこの曲だが、弾き始めた途端に私は何か胸にぐっと詰まるものがあって、聴いているうちに涙が止まらなくなってしまった泣き1 この曲で涙が出たのなんて初めて。 映画の中でフジコさんが『私のラ・カンパネラは他の人とはちょっと違うのよ』とニヤリ笑うとしながら言ってたのをふと思い出した。

なぜなんだろう、わかりませんが、波乱万丈の人生が投影された、フジコさんじゃないと出来ない演奏、音色だったと思う。とにかく物凄くよかった!! 本当に感動しました泣く泣く

 

「手首がもうずう~っと痛い」といいつつ、10年前くらいの使い古しの湿布を貼ってたフジコさん・・・ 怪我したという足はちゃんと病院に診せているんだろうか。

年齢は非公開とのことだが、私の計算上はたぶん今年87歳のはず。どうかくれぐれもお身体を大事にしてほしい。 そしてできればまたあのラ・カンパネラを聴きたい。

 

 

後半はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。

演奏前にコバケンさんがマイクを持ってお話をされた。本日の公演で千秋楽であること、常日頃音楽は演奏家とお客さんが一体となって造り出すものであると思っているので、皆さんからの熱いオーラ、熱い拍手をもってオケの力を引き出してください みたいなことを仰っていた。

 

このお話があったからなのか分からないが、なんと楽章ごとに拍手が起こってしまった・・・ガーンダウン

前回トヨタ・マスタープレイヤーズの公演のときも思ったが、このサンパレスホール、アクロスの客層と明らかに違う気がする・・・汗 特に私の前の席の前述の”貞子”野口さん(仮名)が楽章が終わるごとに「わぁ~っ!きゃー」と嬉しそうに大声で叫びながら勢いよく拍手するもんだから、貞子をきっかけにみんなが拍手し始めるのだショック! おまけに貞子をはじめとして私の前3列くらいの人、皆公演中ずっとものっそい前傾姿勢前のめり前のめり前のめりで聴いていた。熱心なのはいいけど、「お前ら殿様に平伏する家来なのか!?hate」という感じ。段差がある程度あったからまだ耐えられたが、段差があまりないアクロスなら後ろから張り倒したかもぷっ

第2楽章が終わったあとはさすがに拍手はなかった(でもしそうになってた)が、第3楽章のあとなんてコバケンさんが指揮棒降ろさずそのまま中腰でいまにも始めそうなのに、(貞子が)「わぁ~っ!きゃー」と叫びながら大きく拍手していた涙トホホ

 

 

でも演奏自体はとてもよかった。

ヴァイオリンの透明な音色がとても美しい。そして低弦がとても効いている(コントラバスは舞台上手後方に8本が一列に並んでいた)。第2楽章の最後の方の小休止しながらの各弦首席ソロなどが演奏するところはグッときた。

昨年九響でコバケンさんのこの曲を聴いたときも思ったが、コバケンさんはこういう聴き飽きたような曲でも新しい一面を見せてくれる。今日もヴィオラなど「こういう旋律を弾いていたのか」と思わせるようなところが時々あって面白かった。

 

コバケンさんの指揮はいつものように中腰でうなったり(この日はうなりが多かった)、左手で燕尾服のおしりをちょいっとめくったり(”秘技ちょっとだけよハート”)、左手で口を押さえながら恍惚の表情をうかべたり(”秘技あぁ、そこだめ~キスマーク”)、オッケーサインを作ったり(”秘技オッケー牧場OK”)、左手で客席を指さしたり(”秘技トイレはこちらです右差し男女”)、指揮棒で客席の方を指したり(”秘技痛いの痛いのとんでけ~飛行機”)といつもながらの熱い指揮だった。

 

 

演奏が終わると”貞子野口さん”(仮名)が再び勢いよく立ち上がったのを皮切りに、大勢の人がスタオベとなった。 コバケンさんが各奏者を立たせるたびにブラボーの嵐(指笛まで)がすごかった。

 

コバケンさんが再びマイクを持ってお話された。

『皆さんの熱い想いがこちらまでひしひしと伝わってきました。楽章間の拍手は・・・(苦笑しながらも)むしろ嬉しかったです。』と仰った。やさし~泣く

 

そして、ハンガリーでは日本と同じく名前は姓・名の順だったり、単語も日本語ととてもよく似ているものがあるという話から、以下コバケン(「コ」)さんの話。

 

コ 『例えば白鳥、はくちょうのことはハンガリーでは何というんでしょうね~。』

(マイクをコンマスの方に向けると) 『はちゅ~』 一同笑わははは

コ 『では今度は水、みずのことは何ていうんでしょう?』

(今度は女性奏者が) 『びーず』 一同笑わははは

コ 『じゃあ、塩(しお)のことは何といいますか?』

(別の女性奏者が) 『しょ~』 一同笑わははは

コ 『じゃあね、これ!皆さんハイライトですよ~。腹を抱えて笑いますよ~プププ 塩が足らないときは何といいますかね?』

(再びコンマスの方が) 『しょ~たらん』 一同爆笑うれしいうれしい

 

(後で調べたら、白鳥はhattyú(ハッチュー)、水はvíz(ヴィーズ)、塩はsó(ショー)、塩が足りないことはsótalan(ショータラン)というらしいですぷ

 

そしてコバケンさん、「時間押してませんかね?あせる」と気にしつつアンコール曲を紹介。

ハンガリー舞曲第5番の冒頭を演奏したところ、お客が喜んで手拍子を始めた。”おいおい、手拍子やめてけろ~”と思ったら、コバケンさんが演奏を中止して、『通常はこうだけども、私の第5番は手拍子ができないと思います。それは、楽団員の皆さんが私のことをaccept (アクセプト)してくれているからこういう演奏ができるのです。』と言って、演奏を始めた。

コバケンさんのうなりとともに緩急を自在につけたうねるような第5番だった。

 

貞子野口さん(あくまで仮名)なんか大喜びで、途中から右手を頭の高さまで上げて指揮してたよ~。しかもその指揮がなぜか三角形を描いた3拍子だった・・・バレエワルツ?

もうここまでくると腹立つというより大笑いえへ♪でした。貞子さん、きっとこの日は幸福度100%で帰宅しただろうな~。

 

終演後はやんやの大喝采、1階席あたりはほとんどスタオベだった。団員の方々もこの盛り上がりで嬉しかったらいいな。 自席の通路をはさんだ斜め前の外人さんがカーテンコールの様子を動画に撮影していて、「むむむ?」と思っていたら、この方オケの総裁のレンドヴァイ・ジェルジュさんだった。

 

コバケンさんは何度も振り返りながら名残惜しそうに舞台を後にしたが、最後(まるで甲子園球児がベンチ裏に下がるときフィールドに向かって一礼するように)舞台袖でこちらに深くお辞儀どーもっをして去っていった。

 

フジコ・ヘミング(私の計算上は)87歳!コバケン79歳!

先日のデュトワ、アルゲリッチ、マイスキーを加えて、恐るべきじじばばクインテット!!グゥ~キラハート

 

コバケンばんざい!ばんざいめろ

 

だらだら長くってすみません!