吉本興業に所属するタレントである松本人志氏の性加害報道を巡る言説について、意見を述べます。

AV女優の霜月るなさんが、週刊文春の記事の内容を嘘だらけであると主張し、X(旧Twitter)で証言をされました。

霜月るなさんの証言の内容は、週刊文春の記事の内容の反証に全くなっておらず、主要な部分については、むしろ週刊文春の記事の内容の正当性を補強するものであるにも関わらず、反証をしているようなミスリードを誘発しています。このことについて、以下に説明を記載します。

1 霜月さんは参加していない、全く関係のない他の事例の内容を否定している

霜月さんが同席されたのは、週刊文春の記事のA~J、実名の大塚里香さんの11の事例のうち、Jの事例のみであるにも関わらず、Jには書かれていない、霜月さんは同席されていないA・Bの「携帯禁止・没収」D・Eの「たむけんタイム」について否定されています。

霜月さんは、Xに次のとおり記載されています。
「携帯を没収なんて言われてもないし携帯の利用を禁止。という発言なんてなかったです。」
「あと、たむけんタイムなんてありませんでした。笑笑」

携帯電話について、Jの事例で書かれている内容は、「自撮りもあかんで!」と忠告され、スマホを触りにくい雰囲気になったという内容です。「携帯電話による撮影はNG」という話があったという内容であり、「携帯電話を没収」したのは小沢一敬氏がアテンドしたAとBの2事例のみ、「携帯はバッグから出さないようにと指示があった」のは大塚さんの事例です。

また、「たむけんタイム」については、Jには
一切書かれていません。「松本氏が銀行員の一人を気に入った様子で、そこでたむらさんが『お開きにしましょうか』といったので、彼女を置いて他の人は部屋から退散した」という内容です。「たむけんタイム」があったと書かれているのは、D・Eの2事例です。

Jにしか参加されておらず、A,B,D,Eとは一切関係がないのに、なぜ、自分の参加していない事例のことを否定できるのでしょうか。

例えば、A,B,C,D,Eの計5回の会合を開いた主催者が、Cで参加者の1名を殺害したと仮定し、Cで殺害が起きたと報道されたとします。
そのとき、Eの会合の参加者が、「報道は嘘でデタラメだ、私が参加した会合では、殺人など一切なかった」と主張した場合、その証言は効力を持つでしょうか。霜月さんが行っているのは、これと同じことです。

2 記事の内容と霜月さんの証言の内容が合致しているにも関わらず、「嘘」と表現している

以下は、霜月さんのXの記載です。
「部屋飲みと知っていたら絶対に付いていかなかった。と書いてありましたが。それも嘘です。なぜなら、 私は事前にJ子さんにリッツカールトンで飲み会やけど大丈夫かな?っと事前に聞いてます。それもJ子さんからOKもらってましたし。」

この証言に該当する、週刊文春に記載されたJ子さんの証言は以下のとおりです。
「ザ・リッツ・カールトン大阪で飲むことは、当日LINEで送られてきましたが、私はホテル内のレストランで会食するものだと思っていた。」「最初から部屋飲みと知っていたら絶対に付いていかなかった」

どちらの証言も、「ザ・リッツ・カールトン大阪での飲み会であることを伝達した・された」
という内容で合致しています。
そして、J子さんの「私はホテル内のレストランで会食するものだと思っていた」という証言のとおり、「リッツ・カールトンでの飲み会」と聞いたら、「ホテル内のレストランやバーでの会食」ととらえることが一般的な解釈です。

3 J子さんに伝達されていたか不明なことを記載している

「事前に松本さんとの飲み会とも聞いていました。」と霜月さんのXに記載されています。
このことについては、霜月さんは聞いていたという書き方で、J子さんに伝達されていたかは不明です。

4 大枠は週刊文春の内容と合致しており、週刊文春の記事の内容の正当性を補強するものである

霜月さんの証言で、週刊文春の記事の内容と異なる点は、J子さんは直接たむら氏から誘われたのではなく、霜月さんが誘ったという点だけです。
その他の点は、概ね週刊文春の記事の内容と合致しており、松本氏とたむら氏が、ギャル系のAV女優とグラビアアイドルを含む女性たちと、ザ・リッツ・カールトン大阪で部屋飲みをしたことが事実であると証明される結果となっています。
また、重要な点である、松本氏が気に入った様子の銀行員の女性を残して部屋を退散したことは否定されていません。

5 霜月さんの証言が他の事例を否定できないその他の理由「性加害に該当する事例は小沢氏がアテンドしたA・B、一般的なマッサージ店のI」「松本氏のターゲットと正反対のタイプの方である」「性的同意に関する考え方などが標準的な考え方と異なる」

霜月さんが、松本氏との飲み会に参加し、楽しい飲み会であったと感じたとしても、そのことをもって、他の事例を否定することにならない理由は他にもあります。

一連の週刊文春の記事の中で、性加害に該当する事例は、たむらけんじ氏ではなく、小沢一敬氏がアテンドしたA・Bの事例と、一般的なマッサージ店で口腔による性行為を強要したIの事例です。仲介者による違いがあります。

また、性加害には該当しなくても、松本氏が激昂し、罵倒する事例には共通点があります。
性行為を要求した女性が要求を断り続け、応じないと激昂し、相手を罵倒する、という点です。
初めから松本氏が性行為を求める対象にならない方、あるいは、性行為があると事前に仲介者から聞いており応じた場合は、激昂するようなことはありません。

松本氏の指示書や周囲の方の発言、実際にターゲットとした方のタイプから読み取れる松本氏が性行為を求める対象のタイプは、「黒髪の、教師・弁護士・広報・銀行員などの堅い職業の、あるいは芸能人の卵などの、知的で清楚な素人」です。
反対に、松本氏の指示書のNG項目や周囲の方も含む発言から読み取れる、対象外であるタイプは、「茶髪・金髪など明るい髪色の、AV女優などの、華やかな玄人」です。
霜月さんは、「金髪の、ギャル系の華やかなAV女優の玄人」であるため、松本氏がターゲットとするタイプとは異なります。
元々対象とならないタイプの方に対しては、松本氏は性行為を求めることも、断られて激昂することもありません。
飲み会の盛り上げ役として呼ばれているのであり、ターゲットとならず、最後まで残されずに退散できているのですから、不快な思いや怖い思いをせずにすんでいるのは当然のことです。

そして、霜月さんは、性的同意などに関して、一般的な考え方とは異なる考え方をされています。
以下に、霜月るなさんが投稿されたXの内容を引用します。
「松本人志さんが居ないテレビなんて面白くないし見る気しいひん。あの人程、笑いを取れる人居る? 誰でも合コン 飲み会ぐらいしたいんじゃないの?芸能人も同じ人間なんやし。飲み会行く女も、ワンチャンあるとかそんなん分かって行ってるやろ? 喜んで参加したくせに。その 時に何か嫌な事があったなら断れば良かったやん? 帰ればよかったやん? 何を今更うだうだゆーてんねん。しかも、何年も前の話を引っ張り出してきてさ、何がしたいん? そうゆうやつこそ大概ビッチやねん。」
また、実名で自分も強制わいせつ行為を受けたとXで投稿した京野美麗さんのポストのリンクを貼り、以下の内容を投稿されています。
「同じAV女優として、コイツの発言は恥ずかしいです 時効だけどって言うなら今更言わんでえーやん! どうせあんたは、喜んで飲み会参加したんやろ? あんたみたいな無名AV女優は売名したくて 必死に、乗っかってる様にしか見えない です。」
霜月さんが、このような認識をもたれているのであれば、他の参加者の方と、受け止め方や認識が異なる可能性が高いです。
まず、「飲み会にいくことに合意する」ということは、当然のことですが、「性行為を行うことに合意する」こととは全く異なります。「飲み会に参加する」ことを合意しただけです。
性行為を行うことについては、場所などに関わらず、改めて、別途合意が必要です。
「断ればよかった」と書いていますが、断っているにも関わらず口腔による性行為などを強要したり、断り続けていると激昂して相手を罵倒しているのです。
何年も前の話を引っ張り出すという部分については、性被害を受けた方は、何年も心身や生活上の困難に悩まされることが各種調査で分かっています。法務省による性被害の実態調査アンケート結果報告書では、挿入を伴う被害1274件のうち、警察への相談を行わなかった人が82.6%と高く、さらに、相談を行った場合でも、警察相談に至るまでの年数の標準偏差は7.5年、被害届が受理されるのは半数程度と、年数がかかることが分かっています。
「そうゆうやつこそ大概ビッチやねん」とのことですが、性経験の豊富さや職業などと、性的同意の有無は一切関係ありません。どのような人、どのような場合でも、相手の意思を確認せず、同意を得ずに性行為を行ってはいけません。

6 全く反証になっていないにも関わらず、霜月さんやたむら氏の「嘘」という主張をそのままコピーしてニュースにする媒体が存在する

このように、客観的な事実として、反証になっていないにも関わらず、「嘘だ」と主張する霜月さんやたむら氏の主張をそのまま流し、ミスリードを誘発するスポーツ新聞などの媒体が存在します。
霜月さんは、飲み会に参加しただけで便宜供与などは受けておらず、客観的な事実とは異なりますが、ご本人の認識の中では、本当に嘘と信じている可能性があると思います。
しかし、たむらけんじ氏は、女性を仲介することで、松本氏の番組出演につなげるといった便宜供与を受け、さらに、読解力や思考力のあまり高くない参加者を利用し、意図的にミスリードを誘発している可能性が高いです。
また、客観的事実と異なるにも関わらず、本人たちの誤った主張をそのまま拡散し、ミスリードを誘発する媒体は、言語道断です。
本人の主張をそのままコピーするのではなく、事実を併記するべきです。