性加害報道をめぐる言説についての意見の続きを述べます。

今回の報道には、公共性、公益目的、真実相当性がある可能性が高いと思っています。その根拠を述べます。

小項目を先に提示いたします。

1 報道に公共性、公益目的、真実相当性がある

2 松本氏本人や周囲の芸人の長年にわたる性加害の発言内容やエピソードがある

3 被害者の証言が多く、女性を斡旋した芸人の証言がある

4 本人自筆の指示書や写真、領収書、LINEのメッセージなどが存在する

5 組織的に真の同意を得ずに性行為を行うシステムが存在する可能性が高い

6 本人の認識上でも性加害と認識していた可能性が高い


松本人志氏が性加害を行っている疑いが強いという報道がなされるずっと前から、松本氏や周囲の芸人は、性犯罪のエピソードを笑い話として話し、性加害を助長し、性犯罪の被害者を貶め、性犯罪を矮小化するような発言を繰り返してきました。

わたしは、このことをずっと、大変な問題であると感じ、被害者の方の苦しみを考え、胸がしめつけられるような思いを抱いてきました。

この報道を契機に、性犯罪により苦しめられる女性及び男性が1人でも減ること、今苦しい思いをしている被害者の方が救われることを望みます。


1 報道に公共性、公益目的、真実相当性がある

松本人志氏が性加害を行っている疑いが強いという報道に関する公共性、公益目的、真実相当性について述べます。

(1)公共性

公共の電波を使用するテレビ番組に出演し、社会的影響力をもつ人物が、不同意性交等罪及び不同意わいせつ罪にあたる犯罪を行っている可能性があるという内容ですので、報道される対象人物・内容共に公共性があると思われます。

(2)公益目的

性加害は、魂の殺人といわれる、深刻な人権侵害です。

性加害が常習的に行われてきた状況が、この報道を契機に改善するのであれば、公益性があるといえると思われます。

(3)真実相当性

後述しますが、以下の点から、真実相当性もあるのではないかと思います。

①松本氏本人や周囲の芸人の長年にわたる発言内容やエピソード

②被害者の証言の多さ

③女性を斡旋した芸人の証言

④本人自筆の指示書や写真、領収書、LINEのメッセージなどの存在

⑤組織的に真の同意を得ずに性行為を行うシステムの存在


2 松本氏本人や周囲の芸人の長年にわたる性加害の発言内容やエピソードがある

この発言は、「松本氏本人や周囲の人物が性加害を行ってきたことが推測される発言」と「性加害を助長し、性犯罪の被害者を貶め、被害を矮小化する、社会的に悪影響のある発言」があります。

(1)松本氏本人が性加害を行ってきたことが推測される発言

①自著『遺書』の「自分に娘ができて、そいつが色んな男に輪姦されようが、それはもうしゃあない、と思う。それは自分もやってきたことやから」という記述

②15歳くらいがストライクゾーン、女子小学生でも乳がぷっくり出始めたらそれはご賞味あれっていう合図なんですよ、などの本人の発言

③松本氏が成人のときに14歳の子と付き合っていたという相方の発言、16歳のときに松本氏からナンパされたという歌手の証言

④自分たちの合コンでは、泣きながら別室に連れていかれる女の子がいる、という本人の発言


②③に関する捕捉です。

権力上の上下関係などの要件がなくても、相手が13歳未満の子どもである場合、又は、相手が13歳以上16歳未満の子どもで、行為者が5歳以上年長である場合は、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪が成立します。


(2)周囲の芸人が性加害を行ってきたことが推測される発言

①ナンパをして複数人で自宅に招いた女性から性行為を断られたことに逆上し、冷凍した鶏肉を投げつけた吉本興業所属の芸人のエピソード

②週刊誌の、17歳の高校生を含む女性に性行為を拒否されたにも関わらず強要した吉本興業所属の芸人の報道

③意識のない女性に対して胸を揉むといったわいせつ行為を行なう、初潮のきていない子どもと性行為を行っているという吉本興業所属の芸人のエピソード

④性犯罪で書類送検や逮捕されたにも関わらず、復帰している吉本興業所属の芸人が複数人存在する

⑤引退した吉本興業所属だった芸人は、権力を悪用して執拗に性的関係をもつことを女性のタレントなどに迫り、断ると干すという証言があった


(3)性加害を助長し、性被害を矮小化する、社会的に悪影響のある松本氏の発言

①ワイドナショーなどで、性犯罪が取り上げられると、必ず「ハニートラップ」であると発言していた

②未成年への性犯罪に関しては、未成年にも罰則をかすべきと発言した。

③性行為の同意について、同意があると冷めると発言した。


3 被害者の証言が多く、女性を斡旋した芸人の証言がある

週刊文春にも複数の被害者の発言が掲載されていますが、「松本氏から性加害を過去に受けた」「松本氏の複数の芸人から断りにくい空気を作られ、松本氏との性行為を迫られたが、断ったら罵倒された」といった証言が、証言者の名前と顔写真の掲載されたX(旧ツイッター)などで複数明かされています。

また、過去にも、松本氏に執拗に電話で性行為を迫られ、断ったことを番組で言ったら、楽屋で暴行を受けたという証言がなされた書籍が出版されています。

さらに、被害者だけでなく、斡旋を行った後輩芸人の証言があります。

年齢や所属事務所、立場などが異なる複数人の証言があることで、真実性が増しています。


4 本人自筆の指示書や写真、領収書、LINEのメッセージなどが存在する

週刊文春には、本人の自筆の指示書や写真、領収書、LINEのメッセージなどが掲載されています。


5 組織的に真の同意を得ずに性行為を行うシステムが存在する可能性が高い

「ただの飲み会」「遊び」などとコメントされているタレントがいらっしゃいましたが、決して、「ただの飲み会」「遊び」ではありません。

真の同意を得ずに松本氏が性加害を行うためのシステムが存在し、組織ぐるみの犯行である可能性が高いです。

複数の証言に共通する手口を記載します。

(1)松本氏が参加することが女性に明かされない、あるいは、知らないフリをしてほしいと頼まれている

(2)ドタキャン厳禁であると伝えられている

(3)飲み会の直前に場所をホテルに変更する

(4)最初は複数人で飲むが、途中で松本氏と女性が寝室で2人になるよう、周囲の芸人や放送作家が複数人で圧力をかける

(5)吉本興業の幹部もこのことを把握していた

相手を知らない、場所も直前でホテルに変更、複数人での飲み会だと思っていたのに、途中で、自分より筋力のある複数人の男性から松本氏と2人きりになるよう圧力をかけられ、性行為に及ぶ、ということに、同意があったとは考えられません。

権力上の上下関係がある、複数人で圧力をかける、考える時間を与えないなど、同意のないまま性行為が行われる、大変悪質なシステムです。


6 本人の認識上でも性加害と認識していた可能性が高い

斡旋者が松本氏には同意があると伝えていたが、実際には女性に説明していなかった、といった可能性はあるだろうか、と考えてみましたが、その可能性はないだろう、という結論に至りました。

女性を斡旋した黒瀬氏は、「松本氏が来ると知らないふりをしてくれ」と女性に頼み、さらに、松本氏がいることに驚くリアクションをとるリハーサルまでさせています。

また、小沢氏は、「松本氏は、プロの女性やファンではなく、素人の女性でないといけない」と女性に説明しています。

つまり、松本氏は、自分が来るとは知らない、ファンでもプロでもない素人の女性を集めることを指示しており、指示通りに実行したのが小沢氏、さすがにそれではトラブルになると思い、女性に芝居をうってもらったのが黒瀬氏なのではないでしょうか。

つまり、松本氏本人も、事前の同意がないことを認識した上で、性行為等の強要を行っていたことが推測できます。