もやし日記 -5ページ目

鳥女 第13羽

「この前は悪かったな!スロット行っててね」

とけいすけはへらへら笑いながら言う。

「ほんまや。死にかけたで」

山口は大学の学食でけいすけに、たけいの日記を見せていた。

「日記はここで終わってるんや。なんや、鳥女て」

「知らねーよ!幻覚じゃね」

「それに、この桜井親分って…うちのサークルの先輩の桜井さんのことやないか?」

「偶然でしょ、それに刑事が言うには望月の失踪とたけいは関係なかったって言ってんでしよ」

「警察はこの日記を見てないで。たけいは桜井さんにそそのかされて、詐欺をはたらこうとした。そこで鳥女ちゅう幻覚を見た。それで頭おかしくなって、なんやかんやでこうすけと増田を誘拐したんや」

「ずいぶん強引だな。しかしたけいが頭おかしくて話しもできない状況なんだろ。」

たけいはクスリをやっていたわけではないが、相変わらずの状態らしい。

「わい、なんとかして桜井さんから聞こうと思う。あの人はなんか知ってるで!」

「でも、どうやんだよ。」

「あの人の好きなもん使うんや」

そう言って山口は自分の胸をもんで言った。

「一女や」

つづく。

鳥女 第12羽

6月10日

今日は親分から久しぶりに電話があり、横浜で二人で飲みにいった。

いつもはおれを馬鹿にしてくる親分だが、今日は違った。
真面目だった。

それはおれに頼みがあったからだ。

詐欺の誘い。

犯罪に手を染める相談だった。

親分の頼みとはいえ、さすがに返事は待ってもらうことにした。

どうするか……


6月15日

あの日以来、毎日のように親分から電話がかかってくる。

その詐欺で手に入る金の30パーセントをもらうということで、おれは合意した。

しかたない、親分の頼みだ。

詳しい内容は明日するとのこと。

6月16日

親分から詐欺の内容を聞いた。
さすが親分だ、頭いい。
必ず成功しそうだ。

日時は夏。

場所は山中湖。

相手は山田みつやという男。
テニスのコーチらしい。

必ず上手くいく。
親分の言う通りにすれば。

8月22日

決行日。
準備はできている。
ぬかりはない。

おれと親分は怪しまれないよう、時間をずらして、ある宿舎にとまった。

山田もそこにいる。

必ず上手くいく。


しかし、今回の詐欺とは関係ないのだが、目の錯覚か、変なものを見た。

羽のはえたすっぱだかの女。

顔は鳥ぽい。

宿舎の外からちらりと見えただけだからきっと見間違いだろう。

緊張か。

親分にはだまっておこう。

8月23日

山田と実際会って話したが全く疑っていない。

上手くいく。

しかし今日また女……
鳥女を見た。

さすがに親分に話したが、相手にされなかった。

8月24日

鳥女に

また。

頭がわれる

ように痛い。

山田のことはもういい。

頭が……

親……分

桜井…親分…


つづく。

鳥女 第11羽

少しずつ山口は冷静さを取り戻して来て、まわりを見る余裕がでてきた。

こうじろうが、「このでくのぼう野郎」と押さえ付けている男はパンツ一丁で大柄な坊主だ。

相変わらず、「おやぶーん」と意味が分からないことを発している。

部屋は足の踏み場もない程ちらかりまくっている。ちらほら鳥の羽も落ちている。

そんな中山口はある違和感を感じた。

こんなちらかっている部屋の中に、きれいに机の上に一冊の大学ノートがおいてある。

なぜか山口にはその時そのノートが気になった。

二人の刑事は男になにやらいろいろ聞いている。
しかし男は相変わらず奇声を出しているだけだ。

山口は刑事の目を盗み、さっとそのノートを腹に隠した。

その後、山口にも、なぜここにいたかなど、いろいろ聞かれ、結局解放されたのは深夜0時を越えていた。

パトカーで家まで送ってもらい、一人になり、腹に隠していた大学ノートを見た。


それはたけいの日記だった。


つづく。