ActiveHybrid 3 試乗記 | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
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ディーラーで、BMW3シリーズのハイパフォーマンスモデル、アクティブハイブリッド3に試乗する機会がありましたので、インプレを書いてみようと思います。


ActiveHybid 3(4ドアセダン)は、BMW最多販売台数を誇る3シリーズの実質的なフラッグシップモデル。なぜなら、トップグレードの335i(現行型ではセダンには設定がなく、ツーリング&グランツーリスモのみ)が搭載する306PSの3,000cc直6ターボエンジンに、さらに54PS相当のモーターを搭載し、システムトータル出力は340PS(×360PS)と、愛車M3とほぼ変わりないパワーを誇っているから。


カタログ燃費は、JC08モードで16.5km/l。実燃費でもおそらく11~12kmは確実にいくだろうから、340馬力でこの燃費は大いに魅力的。M3で毎週のように遠出すると、多い時には月5万円近くガソリン代がかかったことも。


ただし、モーターやバッテリーを搭載しているせいで、車重は1,740kgとかなり重い。エンジンが違うから単純比較はできないけれど、セダンのF30_328iの1,560kgと比較すると180kgも重いことになる。この重量が、車の挙動にどのように現れるのか、以前から興味を持っていました。


試乗した個体は、Mスポーツの右ハンドル仕様。トランスミッションは8速AT一択しかない。足回り(タイヤ)はMスポーツ標準の18インチ40サイズ(コンチネンタル)。オプションでは19インチも選べる。


乗り込んでプッシュスタートでエンジンをかける。違った。システムを起動。ハイブリッドだから、エンジンは始動しないんだった。


ギアをドライブに入れて発進すると、モーターのパワーのみでほぼ無音でスルスルと動き出す。

そのままアクセルを踏み続けると、自動的にエンジンが始動して加速を続けるが、タコメーターを見ていない限り途中でエンジンがかかったという感覚はない。


室内への遮音はかなり優秀で、エンジンの回転数が3,000rpmを超えてからやっと耳に届く程度。市街地での常用域では、エンジン音はほとんど聞こえないと言ってもいい。


一定速度以上の巡航では、自動的にエンジンが止まってモーターのみで走行するそうだけど、試乗は車の多い市街地だったからその体験はできなかった。


加速感は、街乗りレベルではわりとマイルドに設定されていて、電子制御のスロットルは、アクセルペダルを普通に踏んでもあまりリニアな反応はしてくれない。


しかし、見通しの良い直線でぐっと踏み込んでみると、エンジン+モーターによる340PSの力強いフル加速を体感できる。


その一方で、曲がる感覚は極めて普通。不満もないかわりに、切れ味の良さも感じられない。おそらくその原因は、1,740kgもの重さと、40扁平のコンチのタイヤ、それにサスペンションの設定がMスポーツであってもかなり柔らかく設定されていることに起因していると思う。


ブレーキについてはちょっと不満が。踏み始めの遊びが少なく、いきなり大きな制動力が立ち上がってしまう。慣れればもう少しスムーズに踏めるようになるのかもしれないけど、M3の、踏んだ力に比例したイメージどおりの制動力を出してくれる優秀なブレーキと比較すると、もう少しがんばってほしい感じ。


さて、総評を書く前に、なぜActiveHybrid 3の試乗をしてみたのか。それは、3シリーズで選べる唯一の左ハンドル仕様だから。


現在の愛車であるE46_M3が何らかの原因で乗り続けられなくなったとき、次のクルマの選択は極めて難しい。


できれば今と同じ左マニュアルに乗りたいけれど、BMWでその設定があるのは、現実的に考えるとE46の次の世代のE92_M3の一択しかない(日本正規導入モデル)。


旧型になったとはいえE92_M3はまだまだ高価。現行F80系M3・M4が直6に回帰したとはいえ過給器(ターボ)が搭載されたので、BMWの真骨頂である「駆け抜ける歓び」に直結するエンジンレスポンスの良さと、トップエンドまで気持ちよく吹け切るNA(自然吸気)の特徴は、もはや旧型でしか味わえなくなってしまった。


そう考えると、おそらくMモデル最後の自然吸気エンジンとなるE92_M3の中古車相場が今後極端に下がることはあまり考えにくい。


そこで、①左で②マニュアルという二つの要素のどちらかを妥協する(右MTか、左ATか)という選択を考えた場合に、3シリーズで唯一左ハンドルの設定があるActiveHybid 3は次の候補として一応可能性があると考えた次第でした。


やっと結論。


完パス(完全にPASS)します。


理由。このクルマでは、「駆け抜ける歓び」を感じることができないから。


試乗している間に思い出していたのは、以前代車でしばらく乗った日産フーガのハイブリッド(3,500cc+モーター)のこと。(「愛車遍歴(その17)BMW_M3(2)」参照)

ブログでフーガのことを「あれはもはやクルマではない」と酷評してしまったけれど、そこまでひどくはないにしても、同じ感覚を持ってしまったのは確か。


乗り手に路面の凹凸をできるだけ感じさせず、滑らかに走らせようとすればするほど、ドライバーはタイヤと地面の接地状況やクルマの挙動の感覚を正確に掴むことが難しくなる。


運転する楽しみは、路面とタイヤとのコンタクトをリニアに感じながら、全身の感覚を集中させてクルマと対話しながら挙動をコントロールすることにこそある、と信じている僕には、その仕事の大半を車(サスペンションやDSCをはじめとする各種電子デバイス)のほうで勝手にやってしまわれると、自分がやることがなくなってしまうのです。でも、「そのほうが楽で安全だ!」というヒトも、たくさんいるんだろうなー。


道なりにアクセルを踏み、ステアリングを切り、ブレーキをかけて止まるだけの操作なら、自分にとっては退屈なただの作業にしか過ぎず、もちろん運転する歓びを感じることなんてできない。


ハイブリッド車という、ある意味特殊な車種であっても、BMWならきっと「Freude am Fahren(駆け抜ける歓び)」を感じさせてくれるはずと思っていたけれど、ちょっと落胆してしまった試乗になりました。