「ヒデイチ」を探して
「ヒデイチ」を探して2
のつづきです。



ヒデイチさんのお宅に
泊めていただくことになり
まずは温泉へと
連れて行ってもらった私たち。

温泉のお湯の中で

目の前で起こっている
不思議な出会いと
その出会いに至るいきさつに

私は思いを馳せたのでした。



家に帰ってから
あぶが教えてくれました。

温泉に入っている時
ヒデイチさんがこう言ったって。

「俺は、金を使って
 どうやって人を
 もてなしたらいいかわからなくて
 もてなしたい時は
 背中を流すことにしてんだ。

 だからよ、あぶさん
 背中流すよ」


そう言って
あぶの背中を
きゅっきゅとこすり
流してくれたんだそうです。



ヒデイチさんのお宅で
リチャードからの手紙を見せた時

言葉なく
なんどもうなずきながら
噛みしめるように読んで
時折目をこすっていた

ヒデイチさんの姿を
思い出しました。

不器用で
とてつもなくあったかい
そんな人だなぁって。

 

 

ヒデイチさん

 


あの日、温泉を出ると
ヒデイチさんが「地下室」と
呼んでいるおうちへ。

「地下室」は本当に「地下室」。

リチャードのところに
滞在していた時
アメリカのどの家にもあった
地下室に憧れていて

自分で家を建てる時
作ったのだそうです。

夢は叶えるんだ
そうおっしゃっていました。




行ってみてびっくり!

コンクリート打ちっぱなしで
すっごく広いの。

ふたつある部屋のうちの
ひとつは壁の半分が本棚。

 

 

ヒデイチさんの地下室

 


もうひとつの部屋には
ビリヤードもあるんだよ。

実はかなりビリヤードに
ハマっていたというあぶ

うっ、うまいっ!!!

ダンナながらカッケーーーっきらきら
惚れ直しちゃうぜぇ!

 

 

ヒデイチさんの地下室

 


ちなみに
ビリヤード台左側のベッドで
私たちは寝ました。

アメリカンな配置(笑)



本棚のある部屋は
アメリカによくあるリビングのように
ソファーが壁際に並んでいて
人が集まって話ができるように
なっていました。

そこで私たちは
いろいろな話をしました。

リチャードを訪ねた時に撮った
写真も見せました。

「オヤジ、変わんねぇなぁ」

ヒデイチさんは
写真を食い入るように眺めながら
言いました。



「リチャードに手紙を書こうとしても
 伝えたいことがうまく英語にできなくて
 連絡を途絶えさせてしまって…

 それでもずっと気にかけていて
 しょっちゅう思い出していて…」


私がそう言うと

「そう!そう!
 そうなんだよ!」


ヒデイチさんも
私と同じだったんです。

「英語はさ
 こう、このへんのことが
 (胸に手を当てて)
 うまく伝えられなくてさ」


そうしているうちに
人生いろいろで
固定電話を解約し
住所が変わり

気にはかけつつも
そのままになっていたとか。



連絡を取らなくなってなお

リチャードを慕い
大切に思い
ずっと気にかけてきたこと

連絡を取らずにいることに
ずっと胸を痛めていたこと

ヒデイチさんから
ひしひしと伝わってきました。

この人も
私と同じ気持ちで
リチャードを思ってたんだって
胸がいっぱいになりました。

だからこそ
小屋で話をしている時も
何度も涙ぐみ
目をふいてたんだなぁ、って。

 

 

ヒデイチさんとあぶとエイミー

写真、ボケボケになっちゃった;

 


ヒデイチさんに言いました。

「今リチャードに電話しましょう!」

「え、あ、いや…
 いいよ、自分でするから」


この日私は押しが強かった(笑)

「いや、今かけましょう。
 時差15時間、今の朝の7時過ぎ。
 もう起きてますよ」


私がiPhoneを出すと

「え?
 携帯で国際電話かけられんの?」


と、ヒデイチさんがびっくり。

携帯しか持ってないヒデイチさん
よかったですね(笑)



こんなことでもない限り
英語もおぼつかないもんだから
なかなか勇気がなくて
電話できないけど

この日ばかりは
リチャードの番号を迷わずタップ。

アメリカならではの
1回がながーい独特の
コール音が聞こえます。

4コール目が終わる前に

「Hello」

と、リチャードの声が。

「Hello, RIchard.
 It's me, Emi」


以下日本語で(笑)

「おおお!恵美!
 元気かい!?」


「はい、すっごく元気!
 リチャードは?」


「恵美が来てくれた時と同じく
 元気だよ」


「よかった!
 あのね、今日は
 ヒデイチさんについての
 ニュースがあるの」


「ヒデイチを見つけたの!?」

「うふふ…」

私は持っていたiPhoneを
ヒデイチさんに渡しました。

ヒデイチさんは席を立ち
部屋のドアを出て言いました。

「Hello!」


リチャードと
ヒデイチさんが
ふたたびつながった
瞬間でした。



26年ぶり。

本当によかった。

私とあぶは黙ったまま
何度も顔を見合わせました。

にこにこが止まらなくて
本当にシアワセな気持ち。



私のことなのに
一緒にアメリカまで行ってくれて
ヒデイチさん探しまで
私より熱心にしてくれて

リチャードと
ヒデイチさんの再会を
心から喜んでいるあぶを見て
泣きそうになりました。

ありがとう…



ドアの外では
離れ離れだった長い時間を
埋めるように

おっさんとじいさんの
爆裂トーク(笑)


が繰り広げられていました。

ちなみに、ヒデイチさん
英語ペラペラでした。

苦手だって言ってたのに(笑)

あぶもちょっと
リチャードと話しました。



最後に電話を代わると
リチャードが言いました。

「恵美、ヒデイチを、大切な友達を
 見つけてくれて本当にありがとう!」


私はつきなみな英語

「You're welcome」

しか言えなかったけど

「I'm so happy」

と付け足しました。

ヒデイチさんが言ったように
伝えたいのはこの辺
そう、胸のあたり、ハート。

きっと伝わってる。



電話を切った後
ヒデイチさんは
リチャードの農場での
思い出話をしてくれました。

私たちを
空港に迎えに来てくれたり
バーに連れて行って
ビールをご馳走してくれた
ブルースがまだ子供だったこと

 

 

ブルースの髪を切るあぶ

ブルースに「スキンヘッドにしてくれ!」と頼まれて
バリカンでブルースの頭を刈るあぶ



私にFacebookメッセージで
ファーストコンタクトを取ってくれた
エリックのオムツを取り替えたこと

子供達にタバコを売って
リチャードに見つかって
怒られたこと

たくさん、たくさん…



時計を見ると
夜中の12時近かったので
また明日ゆっくり話をと
お互いに言いつつ

あまりに話すことがあり過ぎて

結局、私たちは
朝の4時近くまで
話していたのでした。



酪農でリチャードのところに
農業研修に行っていた
ヒデイチさんですが

実は今は
酪農をしていなかったんです。

何をしてるのかと言うと

サフランの栽培でした。

 

 

サフランの花

出典:お花の写真集

 


サフランを栽培し
いろいろな形で商品化するために
奔走していらっしゃるようでした。

感激の美味しさ
パキスタン大使館
料理人直伝
「サフランスパイス焼き鳥」の
焼き鳥屋さんも
その一環なのでした。

そして

知的障害者の方を雇用して
農場を運営する福祉農業を目指す
志鳥ファーム(志鳥牧場とも呼ばれる)に
力を注いでいたのでした。




ヒデイチさんは言いました。

「ウチで働いてるのはみんな
 知的障害者なの。
 働く場所がなくてさ。
 行くとこがあっても
 すぐに辞めちゃって。

 ウチにいるみんなは
 もう何年も働いてくれてる。

 みんなねぇ
 少なからず人に指さされてきたの。
 中には親に首絞められたヤツもいる。
 

 でね、俺、みんなに怒られんの。
 それがうれしくてさ。
 わかる?


 そんなヤツらがさぁ
 怒るんだよ、俺おかしい、ダメって」


本当にうれしそうに
顔をほころばせるヒデイチさん。

「みんな言うんだよね。
 親方(愛称)といると
 自分たちがまともで
 親方がおかしく見えるって。
 俺ね、本当にそう思う。
 そうでなきゃ」


言葉にならない衝撃が
ひたひたと押し寄せてきて
それが感動に変わっていきました。

見るべきものを
見た気がしました。

そして
ヒデイチさんという人を
見た気がしました。



少しの睡眠を取り
初めてヒデイチさんと会った
小屋まで行った翌日

なぜヒデイチさんが

「大草原の小さな家」の著者
ローラ・インガルス・ワイルダーさんの
ペピンにある生家と
まったく同じログハウスを

ウィスコンシンから
木材を輸入してまで
自分の栃木の農場に建てたのか

その理由が
知らされるのでした。


そして
何十年も前に建てられた
その「ローラの家」
今もそこにありました。

リチャードも一緒に
建てたというログハウスが。



リチャードと私が
初めて成田空港で出会った頃へと
時間が戻って行きました。

リチャード
ヒデイチさん


3つの人生が
合流しようとしていました。



最終話
「ヒデイチ」を探して4につづく。

ヒデイチさんを
探すきっかけになった
おじいちゃんとのお話は
こちらから読んでいただけます。




Special Thanks:あぶ(大関学)

 

 

 

 

 

 

 

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