院内恋愛
入院仲間に若いのがいるんだが、
どうも愛を育んでいるっぽいのだ。
消灯前、
デイルーム(リビング的なとこ)で
嬉しそうに語り合うふたり。
消灯直後、
洗面台でバッタリ出会っちゃって、
「また会っちゃったね的」に、
一緒に歯磨きをするふたり。
でも、ごはんの時とかは、
目を合わせたり、話したりしないふたり。
おまいら、もういいから、
早くつきあっちゃえよ!
完全に「吊り橋理論」で
育まれている愛だな、と思うんだが、
愛を育んでいるふたりの現場を見てしまうと、
モヤモヤというか、イライラというか、
ニヤニヤというか、ピリピリというか、
なんともこう、胸を掻きむしりたくなるような、
もどかしい思いになる。
こういうのを感じたの、何年ぶりだろう。
楽しそうだから、
私も混ぜろー!
絶不評メニュー
朝)
・ロールパン
・ジャム&マーガリン
・チャウダー
・オムレツ
・フルーツ缶
・牛乳180ml
女子患者でテーブルに集まって
食べるなかで、なぜか私だけ、
ロールパンがいつも3個ついてきて、
みんなに笑われている。
なので、いつも1個で足らない人に
ひとつプレゼントしている。
この日は誰かにあげてから
写真撮影した模様。
昼)
・ごはん
・みそ汁(大根)
・豚しょうが焼き
・ツナじゃが
・ゆかり和え(青菜)
初めて食べたけれど、悪くない、
温かければ。
しょうが焼きはソースが付いてきたけど、
私的にはしょうゆなんだよなぁ。
夜)
・ごはん
・いちごゼリー
・魚の中華蒸し
・きくらげと卵の炒め物
・五目豆
笑っちゃうくらい、
絶不評でしたよ、このメニュー。
メニュー表も、魚名が書いていないどころか、
「白身魚」といった漠然よりも漠とした
「魚の中華蒸し」。
自信のなさが見てとれます。
いちごゼリーは、
手づくり感たっぷりの
薬の味。
発見としては、
美味しくないものを食べる時、
人は鼻の穴を縮める、ということ。
ねむさん
ねむさんは、いつも「寝ないで」と
看護師に言われている。
ねむさんは、車椅子にじっと座って、
穏やかな顔で、ずっと目を閉じている。
ねむさんの夫は朝からやってきて、
いつもねむさんに、食事を食べさせている。
ねむさんは、目を閉じたまま、
口を開けてごはんを受け入れている。
調子のいい時なのだろうか、
ねむさんは薄目を開けたり閉めたりして、
自分でスプーンを持って食べることもある。
今晩、ねむさんの夫はいなかった。
食事が終わって談笑している時、
私の隣の席のおばあちゃんが、
「あれま、食べさせてるよ」と私に言った。
その視線の先を見ると、
透析を受けているおばあちゃんが、
微笑みながら、ねむさんの口に食事を運んでいた。
ねむさんは目を閉じながら、
それを受け入れていた。
私は、その光景の美しさに、
呆けたように見入ってしまった。
用事を済ませて戻ってきた看護師が、
ねむさんがごはんを食べる様子を見て、
透析のおばあちゃんに、お礼を言った。
それを合図に、ねむさんはもうおしまい、
という仕草をして、
じゃあ、と透析のおばあちゃんは
自分の病室に戻ろうとした。
その時、ねむさんがぱっと手を出して、
透析のおばあちゃんの手に触れた。
目を開けて、笑顔になって、何か言って、
またいつのように目をつむった。
「ありがとう」だと見て取れた。
私の向かいの席の若い女性が、
「あのおばあちゃんが笑うとこ、
私、初めて見た」と言った。
そこにいるみんな、同感だった。
私は大きなあくびをひとつして、
伸びをした後、涙をぬぐった。

