「入院ジャーナル」 -24ページ目

わたしはスミちゃんのポケットモンスター


今週から担当の理学療法士さんが
もうひとり増えて、2人体制になった。


新しく付いていただいた方は、
「おばあちゃまを立たせる名人」
と言われている。


これで、人気の先生ふたりが付いた私は、
「最強カードを2枚も手に入れた」
ということなのだそうだ。


ますますプレッシャーである。




さて、


その新しい理学療法士さんを
私は密かに「王子」と呼んでいる。


おばあちゃま患者に絶大な人気があり、
患者に対して立て膝を付き、
かしずくような得意のポーズが、
まるで王子様のようだから。



そんな王子に恋をする
姫のひとりが、スミちゃんである。


スミちゃんは、推定年齢70~85歳。



いつも同じテーブルで一緒にごはんを
食べている熟ガールだ。



王子が私担当になったことをいち早く知り、
「あなた、あの先生の担当だって!?」と、
私の脇腹を肘で押しながら聞いてきた。


その表情で「恋だよ、これ!」とピンときた。


実際、王子とリハビリしているスミちゃんは、
乙女のようにいじらしく、キュートだ。



「●●先生(王子)、
いくつだろ? 独身かな?」


真顔でそう私に聞いた瞬間、
パッと顔を赤らめて
「ナニ言ってんだか、私は!」みたいな
照れた顔をしたスミちゃんを見て、
私はその日から、
スミちゃんのポケットモンスターに
なることにした。




仕事で培った経験や能力を
生かすべき時がきた!

私は、王子との初めてのリハビリ最中、
Aが本題のようなふりをしながら、
実はスミちゃんがほしいBの情報を
さりげなく聞き出すなど、
取材力をここぞと駆使した。


スミちゃんの笑顔のために。


その間、私は自分のリハビリ中だと
いうことを、すっかり忘れていた。




夕食後、そういえば!と思い出したような顔で、
スミちゃんに、王子情報を報告。


別段なんてことのない
王子プライベート情報なんだけど。



しかし、スミちゃんは片思い中であるからして、
「あなたナニ、それ本人に聞いたの?」と
驚きと照れが入ったような顔で言うので、
嫉妬に転化されず、若い人のノリはそんなもんか、
という方向にいくよう、
「それがナニか?」的な屈託のない顔で応えた。


ポケモンも、やれやれである。



「休みの日は、どっかに行くのか?」


「どこらへんに住んでいるのか?」


「研修は(王子は来週から海外研修に行く)
どれくらいの期間なのか?」



本人に直接聞きなさいよ、と思うのだが、
スミちゃんがポケモンマスターだから仕方がない、
私が王子に聞く。



そして、スミちゃんから、
王子エピソードを聞くのも
私の役目である。


「いかに、王子が優しいか事例」を中心に。


キャッ!


老いらくの恋であるよ。




そんなスミちゃんの目下最大の心配事は、
王子が研修に行っている間に、
自分が退院してしまうのではないか、
ということである。


ごめん。
それは、キミのポケモンも
力になれないよ。




王子のおかげで、どんどん体は回復していくけれど、
回復のおかげで、どんどん王子と離れる時が早まる。



スミちゃんの院内の恋は、
皮肉でせつない。



そこに、あんがある限り!

朝)
・ごはん
・みそ汁(キャベツ)
・焼薩摩揚げ
・ピーナッツ和え
・鉄之助ふりかけ
・牛乳180ml




「入院ジャーナル」-090610朝

おかず大臣からゴルフボールサイズの
新鮮トマトが出る。


冷え冷えで甘い。丸々かぶりつく。


いただいた人みんな、
食後のデザートにしていた。




昼)
・スパゲティミートソース
・コンソメスープ
・きのこサラダ
・鶏の唐揚げ




「入院ジャーナル」-090610昼


やりすぎメニューじゃない?


人気メニューをつめこんでる感じ。


この力、もう少し日々に分散させて!




新しくテーブルに加わった患者のひとりは、
油が古すぎるといって、
スパゲティも唐揚げも丸々残していた。


この人、何を食べて、
午後を乗り切るんだろう?


そんな勇気、私にはない。




それと、
フタ開ける前に写真撮っちゃったことに、
後で気づきました。


フタされている器は、スープです。




夜)
・ごはん
・果物(リンゴ)
・巣ごもり卵あんかけ
・厚揚げと里芋煮
・ゆかり和え(青菜)




「入院ジャーナル」-090610夜

「巣ごもり卵」……?
ググりましたとも~!


細切りにした野菜の中に卵を割り落とし、
加熱した様子を鳥の巣に見立てた料理、
だそうで、ご老人向けメニューとしても
推薦されてるんですね。



そこに、あんがあるから!

ぶっかけて「巣ごもり卵あんかけ丼」に
しました。




ニュータイプ、太股に走る。


タッチウェイトによって、
一部の筋肉に負担をかけてしまったのか、
昨日から不意打ち的に、ピーッ!と
電気のような痛みが太股に走る。



月曜日は、前日リハビリがないため、
どうしても体が硬くなりがちなうえに、
電気のようなこの突如の痛みで、
私が痛怖がるので、
昨日は、入念な揉み&ソフトな運動中心。


「リハビリ」というより「やわらぎ」になった。




しかし、今日になっても、
まだ痛みが走る。


筋肉痛のような痛みなら、
ガマンできるのだけど、
この痛みは突然くるから怖い。


という、タイプの痛みの感じを、
理学療法士さんに、どううまいこと
説明しようかと考えて、昨晩思いついた。



ララァやアムロ、シャアといえば、
「ニュータイプ」の代表選手。


アニメの中では、彼らが「勘働き」的な
ことをする瞬間、こめかみあたりに、
ピーッ!と光が走る、絵的な表現がある。



あんな感じの突然のピーッ!が
太股に走るイメージ、といえば、
ガンダム世代の方は、
おわかりいただけるであろうか。



担当の理学療法士さんは
同年齢なので、ガンダム世代。


ガンダムを見て知っていたら、
あのピーッ!の感じ、
わかってくれるはずだと
説明を試みたところ、やるものです。


見事伝わりました!



というわけで、

今日のリハビリでは、

ピッ!と太股にきた瞬間、
私は大声で「ニュータイプ!」。



「ニュータイプ」という言葉が、
「ギブアップ」の同義語として、
千葉のある病院の一部で使われていることを、
富野由悠季さんは、どう思うだろうか?



「ニュータイプ」=「ギブアップ」、
あながち間違いでもない気がするのだが。