●Windowsマシンを高速起動

 DELL Precision 3630 TowerというデスクトップPCを導入して2年5か月ほどになります。これは私が仕事で使用しているもっとも重要なPCです。インテルコアi5-8500でメモリーは20GB、HDDが1TB、今ではすこし古くなりましたが、そこそこに高速で、私のDTPを中心とする仕事では十分な性能のwindows PCです。

 今回は、このDELL PrecisionのHDD(1TB)を、M.2 SSD(1TB)への換装を試み、何とか成功しましたので、そのプロセスを書き記します。HDDをSSDに換装する方法は、ウェブやYouTubeにたくさいあります。それを参考に私も数台のPCで行ってきました。なぜそんな面倒なことをするのかというと、起動やデータアクセスの速度が数倍ほど高速になるからです。古くて遅くて実用にならないマシンも、SSDに換装すると、目が覚めるほど圧倒的な高速になって、買い換える必要がなくなるほどのメリットがあります。PCの起動が遅くていらいらしている方は、ぜひSSDに換装してみてください。Windowsがバリバリに高速で起動するようになります。

●HDDをSSDに換装する定番のプロセス

 1) 準備する必要があるのは、SATA USB変換アダプター(2.5インチSSD用で、1000円くらい)です。
 2) ドライブのクローンを作成できるソフト(定番はEaseUS Todo Backup)です。この定番ソフトは2021年夏ごろまでのバージョン13までは、クローン化がフリー版でできましたが、以降の新バージョンから有料になってしまいました。2500円くらいらしいです(クルーシャルのSSDを購入した場合は、メーカーのサイトからAcronicという無料のクローン化ソフトをだウンロードできます)。
 3) SSDを購入します。HDDと接続方法が同じsata接続方式が無難です(M.2というタイプもありより高速ですが、マザーボードにコネクターがないと使えませんので、確認が必要です)。
 ※SSDの容量は、原則はHDDと同じものを選択します。HDDが500GBならSSDも同じが480GBくらいにします。
 5) PCのOSがあるHDDのタイプ(MBRかGTB)を「ディスクの管理」で確認します。
 6) sata USB変換アダプターにSSD本体をとりつけて、PCのUSBポートに接続し、ディスクの管理で認識を確認し、HDDと同じ(MBRかGTB)タイプを選択しフォーマット(NTFS)します。
 7) EaseUS Todo BackupまたはAcronicを起動させ、クローン機能で、元ドライブを今動いているHDDに設定し、ターゲット(クローン先)ドライブを、SSDに設定し、オプションで「SSDに最適化」を選び、クローン化を実行します。完了まで、早くても1~2時間、場合によっては数時間ほどかかります。
 8) 完了したら、PCは再起動させないで停止し、PCの箱を開けてHDDを取り外し、代わりにクローン化が完了したSSDと入れ換えてから、PCの電源を投入します。
 9) 成功すれば、前に使っていた状態とまったく同じ状態で、Windowsが起動します。ただし一つ大きな違いがあり、起動スピードが大幅にアップしています。早ければ20秒、遅くても40秒くらいの起動スピードとなります。もちろん、ソフトの呼込みや、終了等がそれぞれ高速になります。

 以上が、安全なHDDからSSDに換装する方法で、あちこちにもっと優れた具体的な解説があります。SSD本体は、数千円から1万円代程度なので、その程度の予算で、大幅なPCのグレードアップができますので、自己責任ですが、古いPCをお持ちの場合はチャレンジされることをおすすめします。

 さて,これから記すのは、SSDへの換装ではあっても、sata(サタ)ケーブル接続ではなく、マザーボード直付けのM.2スロットを利用した、SSDへの換装の記録です。
 M.2(エムドットツー)とは、コンピュータの拡張カードにおいて接続端子となる規格の一つで、M.2 SSDは、マザーボードに直に差し込む方式となっています。そのため、初めてM.2 SSDでの換装を行う私には、クローム化のあと、どのようにSSDからWindowsを起動させたらいいのか、大きな不安がありました。
 案の定、結果として成功はしましたが、プロセスではBios(UEFI)の設定方法がわからないなど、大きな壁がありましたが、その顛末は別に記すとして、成功するためのプロセスのみ記述します。

●DELL Precision 3630 TowerのマザーボードにM.2 SSD(1TB)を取り付け

 Windowsマシンは、2019年製のDELL Precision 3630 Towerです。第8世代のコアi5CPUのワークステーションで、20GBのメモリを積んでいるので、起動時間を除けば、ゲーム向きではありませんが、重たい処理も十分にこなすことができる性能があります。


 今回準備したM.2 SSDは、クルーシャル製(Crucial P1 1TB 3D NAND NVMe PCIe M.2 SSD CT1000P1SSD8、1万円前後)です。


 PCの箱を開き、取り付けの前に、高熱が出るというM.2 SSDの裏と表に別途準備したサーマルシート(冷却用、数百円)を張りました。M.2は端をネジ止めするのですが、ネジ自体は基盤にすでにあったため、これを取り外して利用しました。後で知ったことですが、SSDを取り付けるネジを止める場合は、「非磁性のドライバーで行うこと」という注書きがありました。M.2 SSDはメモリに似ているためか、磁石などには弱いようです。そのことを取り付け時には気づきませんでした。



●事前に知っておくべきGTPかMBRかフォーマット選択とBiosでのドライブ制御

 Windows10を立ち上げ、ディスクの管理で、M.2 SSDをGTPタイプ(HDDと同じ)、NTSFでフォーマットが完了すると、HDDと同じドライブとして使用できるようになります。これでクローン化の準備が整いました。
 EaseUS Todo Backup(又は、CrucialのAcronic)を起動させ、ドライブのクローンアプリで、元をHDDに設定し、ターゲット(クローン先)をM.2 SSDに設定して、クローン化を実行します。
 クローン化ドライブは1TBでした。クローン化の時間は、ほぼ1時間45分程度で完了しました。
 さて、ここから先の所作が、成敗のポイントになります。
 もっとも大事なことは、PCのBios(UEFI)の、ドライブの制御方法を把握しておくことでした。

●Precision 3630 TowerのM.2 SSD換装成功プロセス

 1) クローンが完了した直後、再起動が始まったらすぐに、F2連打でBiosを起こす。
 2) Biosが開いたら、――System Configuration>Drivesを開く。
 3) 右画面に、「sata-0、sata-1、sata-2、sata-3、sata-4、M.2 PCIe SSD-0」6つのドライブ接続を制御するチェックボックがあり、全部がチェックがしてあるので、すべてがアクティブになっています。そこで、元のOSが格納されていたHDDが接続されているドライブを確認します。通常は、「sata-0」なので、その左にあるチェックボックスのマークを外し、元のHDDへの接続を遮断します。そして「M.2 PCIe SSD-0」にチェックがあることと、これにSSDが認識されていることを確認します。確認は、下にそれぞれのドライブの状況が表示されているので判断できます。
 4) 右下の真ん中の「Apply」(変更申請)をクリックすると、変更を保存するかどうか聞いてくるので、チェックを入れて変更を実施(OK)します。
 5) 次、System Configuration>SATAOperationを選択します。
 6) 右の「RAID ON」が選択されていたら、チェックを「AHCI」に変更し、「Apply」で保存し、Biosを終了させます(この変更は、デルの担当者から教えてもらったものですが、SSDからの起動が成功後に、これを元の「RAID ON」に戻しても、問題ありませんでした。ひょっとしたら、この変更は不要かもしれません)。
 ※Biosでブートドライブの順番や無効化を設定できる場合は、起動させたくないドライブを無効化(Disable)します。換装後は、元HDDを無効化し、換装先として完了したM.2 SSDのブートを第1順位に設定します(M.2 SSD以外のドライブすべてを無効化したほうが良いかもしれません)。
 ――以上で、HDDからSSDへのクローン化完了直後に行う、Biosの設定が完了しました。

 再起動し、SSDからWindowsがあがってきたなら、換装は完了、大成功となります。これは、デルのPrecision 3630 Towerという何となくふつうではないWindowsワークスターションのケースでした。デルのずっと古いVOSTRO200というマシンでもHDDからSSD換装を行いましたが、その古い低レベルのビジネスモデルのBiosは、古いだけにUEFIにはなっていましたが、昔のBiosのインターフェースで、ドライブの制御がちょっとわかりずらいところはありましたが、とても自由にできました。しかも、クローンOSをかかえたまま、どちからで立ち上がってくれましたので、処理が簡単でした。それからすると、Precision 3630 TowerのBiosは、分かりづらいものでした。デルのテクニカルサポート担当者も分かっておらず、取説もみつかりません。大本の電源を抜くと、電源を再投入してから数分間は画面が真っ暗……。この無音の闇の中でマシンがあがるかどうか、Biosのやっているのが長すぎて、とっても不安で怖いマシンなのでした。せめて、ブートについてのBiosの取説だけでも事前に見ておけば、一発で成功したはずなのです。そこのところ、デルのサポートは不備でした。素人にいじらせたくないというメーカーの方針があるのかもしれません。が、もしそうだとしたら、それは良いことではありませんね。

●やはり進化していたPCのUEFI-Bios

 



 最近のBiosは、正式にはUEFIと表示するのが正しいようです。起動では「Windows Boot Maneger」が出てきて起動ドライブの順位を選択する設定ができません。「UEFI」の他に「レガシーBios」とか「CSM」とか「セキュアブート」とか、ディスク形式の「MBR」や「GTP」と関係がある理解がむずかしいIT用語を何となくでも分からないと、設定の仕方が分からない時代になったことに、自分の知識不足と能力不足を思い知らされました。が、やっとM.2 SSDからWindowsが起動でき、ほっとしました。
 これで当分は、PCの性能を気にすることなく、仕事ができます。HDDは、機械的な動作をするために、どうしても数年のうちに必ず壊れます。データが資産の私のような仕事では、これはたいへんなリスクです。SSDは、機械的な動作はありませんが、電磁的な動作をする媒体なので、HDDよりはリスクが少ないように思います。動作が、HDDよりも圧倒的に高速なので、HDDのPCをご使用の方は、ぜひ、遊びの一つとして、SSDへの換装をやってみることをおすすめします。
 成功したら、登頂困難な山の頂を究めたほどの快感がありますよ。