2日14時半を回ったころだった。事務所の電話が鳴った。
「こちら、~~図書館です。調べていただきたいことがあります」
「はい。何でしょうか?」
「マイケル・ローズ著『真理を生きる』という本のカバー袖に、『まもなくその続編である-Miracles Happen-が出版予定です』とありますが、この続編は、どうなっているのでしょうか」
「あ? はい。マイケルの著書ですね……」
 と、返答はしたものの、手許にその本がなかった。具体的な書名が頭に入らないまま、相手の連絡先を確認し、調べてから返答することにした。
 確かこの本は、改訂したはずだ。
 改訂版のカバー袖を見てみたが、該当する文言がみつからない。……だとすると、初版である。改訂版の奧付は、2002年……、20年以上も前だった。果たして初版は、どこに……捜した。……捜した。見つかった。やっと、正式な出版予定の著書名が把握できた。
 さっそく翻訳者に聞いてみることにした。連休の谷間である。いつもなら、メールでもするが、このタイミングでは、電話だ。
 すぐに通じた。
 聞けば、この当時の予定著作物は、マイケルご本人が納得せずに、未刊であることがわかった。
「ところで、いただいたお電話で何ですが、大事なことを、お伝えします」
 ん……? 何だろう。翻訳者の言葉は、かしこまっていた。
 4月28日、マイケル・J・ローズ氏の魂は、肉体を離れたという。
 聞けば、一年ほど前から病状が進行し、年末のクリスマスのころにはかなり回復したようだが、つい最近になって、急激に生命力が衰えたそうである。
 享年87歳。
 
 2024年1月、知玄舎から出版された、マイケル・J・ローズ 著『パン…そして私――大いなる自然のスピリットとのメタフィジカルな冒険』(大亀安美 訳、ISBN978-4-910056-63-0)が遺作となった。

 



 マイケルという存在は、目に見えない世界の解説者として活躍した、宇宙アバターであったと思う。メタフィジカルな世界を肉体を通して体験した記録を、著作物にたくさん遺している。それからいえば、3次元の肉体に閉じ込められた人間の魂は、不自由なありように耐えるしかない。
 肉体が衰えて、いよいよ使い物にならなくなると、やっと解放されて魂は自由を得る。だから、地上に残された私たちには、マイケルの旅立ちは残念で寂しく悲しいことになる。か、「ご冥福をお祈りします」という弔いの辞は、マイケルの魂には相応しくはない。なぜなら、彼は生前から、死後の世界がどうなっているかを、私たち以上に十分に知っていたからである。
 だとしたら、やっと肉体から解放された魂には「おめでとう」というメッセージが相応しいように思う。

 それにしても、マイケルの旅立ちをこんな形で知ることになったことは、不思議である。図書館から、あんな問い合わせがあるということが、奇妙だ。そもそも、あのような問い合わせというのは、滅多にない。はじめてのことかもしれない。極めて珍しいことである。宝くじで大当たりを引いたような出来事である。そのタイミングが、マイケルの旅立ちの日にリンクしていたなんて……。これは、単なる偶然ではない。メタフィジカル世界からの手引きである。
 故・マイケルが、手引きの手配をしてくれたのかどうかは、わからないが、肉体を去ったマイケルは、これからどのように3次元の地上をリードしていくのだろう? サティア・サイババは、目に見えないサトル体で10年ほど活動した。マイケルは、どうするだろうか?