
雇用市場への金利効果の低下、9月FOMCとマーケット
前言を覆す、というわけではないが雇用はご存じの通り下げたというか下げ過ぎ。下方修正は驚かないが特に6月分の改訂値が酷いでしょう?
速報値が14万7千人の増加(前月比)だったのが先月には1万4千人増まで減少し(この時点でトランプが労働統計局長を解任)、今回の2次改定ではマイナスにまで落ち込んだ。(すべて6月分)
これは繰り返しお伝えしているように事業所からの調査票回収率から問題が起こっていて、基本的にBLSは1次推計値(速報値)の回収率を60%基準にしているものの(拙著為替2版p154)、現在ではそれには遠く及ばない回収率となっており、現況みる限り改定されるたびに下方修正が繰り返されることになる。
今年に入って、第2次トランプ政権が国際経済の強固なグローバリゼーションに逆行するような保護政策を通していけば一部の産業を除き、米国全体の雇用はさらに失われていく、ともお伝えしてきたが雇用は現状、低空飛行のままになる。(マーケット全般的にまだこれが反映されていない)
結果、米国内企業の国際競争力は落ちていき消費者負担は増大する。AI導入の加速とともに労働者の解雇、労働時間も減少していき賃金上昇率もジリ下げ。今回の統計で明らかになったのは就業者数のみならず、とくにこの週間平均労働時間で、34.2時間レベルが続いている。これは全体的な購買力につながっているんですよね。
34.2時間というのはコロナのときのレベルで、就業者数の減少と(2020年から)同じ軌道を描いている。
で、11日に8月CPIが公表されるがCPIコアは前年比で3.0%‐3.1%という結果が濃厚。 引き下げ幅が25bp、若しくは50bpという予想が大きくなってきたが、昨年はこの状況で50bp引き下げ、そこから米株高につながった。
(昨年)金利引き下げとともに就業者数は上昇したが、それはごく一時的で年明けにはストンと落ちた。(トランプ政権誕生と関係している) 先述の労働環境の変化と保守的な経済政策によって、労働市場への金利効果が薄まる流れは否めない。
利下げ無し、を伝えてきたが雇用の数値の大きすぎる修正幅に利下げせざるを得ない展開に。結局のところ、この状況で中央銀行にできる事は金利を動かす事のみ。
11日、CPIコア3.1%を受けて17日は25なのか50なのか。マーケットは3.1だと判断できないと思われ。 昨年のコピーとなる可能性も出てきたが、パウエルとトランプの関係も大幅に悪化しており今回のFOMCでは、パウエルが主導権を握って決めきることができず投票権のあるメンバーの意見を大きく取り入れるような気が、しないでもない。意地をみせれば25。
10月まで実質無風イベントが続くマーケット
カレンダー的には、本日のエヌビディア決算に明日の米7月PCEコアデフレーター、その後の8月雇用情勢に8月CPI。そして9月FOMCに9月日銀金融政策決定会合、これらがマーケットを左右するイベントと看做されている。 つまりこれら結果が大きなサプライズとなるか否か、といったところだが結論的には、特段そうにはならないように思える。
今回のエヌビディア決算に対する反応も過敏かつ微妙だし、明日の7月PCEコアは2.9%(軸)、政策金利にしても仮に0.25動いたところで既に動揺するようなことでもない。
雇用情勢も前回お伝えしたように事業所からの調査票の回収率は年々低くなっているわけで、翌月の改定率が高くなってもまぁそうなのかな、くらい。事情を知っている人間からすると尚更そのような反応だといえそうだ。
注意深く見ていくとマーケットの背景というかマクロ経済のファンダメンタルズは現在の流れに沿ったものに思える。とくに上記の期間では。
さほど意味のないものを意味のあるように印象付け、視聴率やらクリック数を多くし、マーケットを混乱させているのは誰なのか明白である。 よって実質的に10月まで無風といっても過言ではないように、思えなくもない。(これらイベント以外でイレギュラーな事が起こってしまえばそれがサプライズだといえそうだ)
(クック)理事だって解任できるわけない。解任しても大きな利下げが実現することはない。 トランプ政権の意向どおり、仮に大きな利下げが実現したとすれば、今度は高インフレが加速し結局のところ誰が理事になっても連続利上げがまっていて、そこで大きなブレーキが掛かるだろう。
ジャクソンホール会合前夜 ‐労働環境の転換期について‐
ジャクソンホール会合(21‐23日)は金利を決定する会合ではないので、据え置きか引き下げか以前の問題として金利政策に触れない可能性は普通にある。 通常であればニュアンスを掴むイベントといった解釈。
しかし昨年の講演では、今年のように直前になって雇用の大幅下方修正が公表されたことも関係してか、7月会合から大幅な方針転換が公表された。(年次改定、拙著FRB p62) それを考えれば今年も昨年のコピーのような結果になる可能性は残される。
さらに今年のテーマは「労働市場の転換期」となっているので、講演内容としてはインフレ以上に労働市場に言及せざるを得ず、「堅調」とはいえないことは予想が付く。7月会合においても労働市場に関しては下方リスクが存在する、としていた。
ただし今回の就業者数の大幅下方修正についてはデータの収集方法がさらに問題視されており、とくに事業所調査の回答率が年々減少傾向にあることが精度を低くしているという見方が大きい。
それに加え関税政策の影響の見極めから企業が求人に慎重になっている事、それが回答率の低さに影響しており、AI発展も雇用を押し下げている事など複数の雇用環境の変化が考えられ、パウエルがそこまで言及するか否か、またそのような論拠が正しいとするのであれば、金利を引き下げたとしても雇用増加につながるのか否か「労働環境の変化」といった意味で不透明な部分が残される。
パウエル講演はそういう意味でも関心深く、金利政策に直接的な言及がない限り、金融市場に正しく意図が伝わらないかもしれない。

