下の絵は、ある書籍からの抜粋です。
(a)、(b)の飛行機と人から落としたボールは、静止している人から見るとどちらに落ちていくように見えるか?という質問がありました。
(市川伸一著「考えることの科学」より抜粋)
この質問に対しての答えは、「進んでいる方向に放射線を描いて落ちる」ですが、垂直に落ちると答える方がかなり多いそうです。
また下記も同著からの抜粋ですが、曲がったホースから飛び出した物体は(a)、(b)のどちらの軌跡を描いて飛び出すか?という問題です。
(市川伸一著「考えることの科学」より抜粋)
ちなみに答えは(a)ですが、市川氏が「就学前」、「小学生」、「大学生」と質問をしたところ、面白いことに就学前の正答率が60%超でもっとも高くなりました。
その後小学3・4年生に向けて正答率が25%程度と低くなり、大学生になると60%程度に再び高くなります。
観察すればすぐに正解がわかる問題であっても、それまでの経験や知識に照らし合わせて回答すると、なかなか正解するのが難しいことが分かります。
ここに“仮説のワナ”が存在します。
仕事をする上で仮説を作り、それから検証をして進めていくという考え方はビジネス書の一般化に伴い、徐々に組織にも普及しているようにこのところ感じます。
(以前仮説について書いた記事はこちら
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ですが、仮説を作りながらも、最も重要となる検証のプロセスがないままに、仮説がそのまま戦略や方針になっているケースも散見するようになりました。
上で見たように意外と仮説は当てになりませんし、こうした仮説をそのまま利用した場合、組織にとって大きな損失となる可能性もあります。
大きく外れた仮説をそのまま使うぐらいなら、リサーチをした結果をもとに、断片的でも正しい情報を利用して方向性を決めた方がリスクは少ないのではないでしょうか。
組織での経験が長い人ほど、自分の仮説の精度に対して過信しがちです。
ですが、実はアンテナを立ててものごとを見ていない限り、仮説を進化させるような蓄積は進みません。
(アンテナを立てる重要性は以前も書きました。こちら
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仮説には大きなワナがあることを意識して利用するようになると、さらに仮説⇒検証のプロセスが意味のあるものになるのではないでしょうか。