戦略の原型としての“仮説” | 外資系 戦略コンサルタントの着眼点

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戦略コンサルでマネージャーを務める筆者が日々の出来事を独自の視座で書き綴る


昨日はケース・インタビューの意味合いについて書きましたが、その中で“仮説”について触れました。(昨日の記事はこちら 。)

今日はこの“仮説”について書いてみたいと思います。

仮説とはその時点で出す仮の答えのことですが、戦略コンサルの仕事の進め方でクライアントと最も異なる点が仮説の利用です。

戦略コンサルで新たなプロジェクトが始まる場合、まずマネージャー(ケース・リーダー)による仮説作りからプロジェクトは始まります。

この時点ではまだ十分な情報収集や検討はなされていませんが、マネージャーはその時点での情報やこれまでの経験を統合し、プロジェクト初期としての答えを必ず作り出します。

例えばメーカーのマーケティング戦略であれば、その時点で市場に潜在的に存在しているであろうニーズを仮定し、仮のマーケティング戦略を構築します。

この当初の仮説を“Week 0(ウィーク・ゼロ)仮説”と呼んでいますが、この仮説がプロジェクト全体の海津となるため、その出来がプロジェクトの成果を左右することになります。
(プロジェクトの始まるWeek 1よりも前に作ってしまうので、Week 0です。)

通常、戦略構築のプロジェクトは仮説を検証する形で進められ、当初の仮説を進化させることで最終的な戦略が構築されます。
Week 0仮説をバージョン1とすれば、最終的にはバージョン20ぐらいまで進化させていくことで精度の高い戦略になります。

そのためには、まず社内の知見を共有してもらう
ためのクライアント・インタビューから始まり、対象セグメントへのフォーカスグループ・インタビューやウェブ調査を実施することが一般的です。

更に競合の調査を行なうと共に、自社内の能力(ケイパビリティ)が戦略を実行するために十分かについても確認していきます。

この仮説ですが、当初の時点ではまだ分からないこともたくさんあり、仮説が外れることも日常茶飯事です。

しかし仮説が間違っていることは問題ではなく、仮説と矛盾する情報が見つかれば、その場で仮説を書き直せばいいだけのことです。
(シニアなコンサルタントになるほど筋のいい仮説を作れるようになるため、徐々に仮説の修正は少なくなっていきます。)

むしろ仮説がなくプロジェクトを進める方が問題です。

もし仮説のないままプロジェクトが進行したとすると、どこが深堀すべきポイントなのかも曖昧になり、非効率なプロジェクト運営になることは避けられません。

最悪の場合、決められた期間でプロジェクトを終了することが出来なくなります。

以上が仮説の意味合いですが、仮説の利用はコンサルタントでなくても日々の業務の遂行において有効な手法です。

こうしたアプローチは、もう少し一般の企業にも広がってもいいのではないかと感じます。