クリストファー・ノーラン監督、マシュー・マコノヒーアン・ハサウェイマッケンジー・フォイケイシー・アフレックジョン・リスゴージェシカ・チャステインマイケル・ケイン出演の『インターステラー』。

第87回アカデミー賞視覚効果賞受賞。



近未来。大地は砂嵐に晒され食料は枯渇し、地球は終焉を迎えようとしていた。元宇宙飛行士のクーパー(マシュー・マコノヒー)は生活のために農夫になっていたが、娘のマーフィー(マッケンジー・フォイ)とともに謎の施設を訪れ拘束される。そこで彼がかつてともに仕事をしていたブランド教授(マイケル・ケイン)から託されたのは、土星の近くにあるというワームホールを通って遥か彼方の別の銀河で人類が生きられる星を探し出す任務だった。


IMAX2Dで鑑賞。

クリストファー・ノーラン監督の作品は『メメント』以降、すべて劇場で観ています。

といっても熱狂的なファンというわけではなく、みんな大好き『ダークナイト』も劇場公開時にわりと淡々と観ていた記憶が。いや、面白かったけどね。ヒース・レジャーのジョーカーもカッコよかったし。

なんというか、けっこうツッコミどころ満載の映画を撮る人なので、手放しで絶賛するよりもどうしても観終わって「あーだこーだ」と屁理屈こねてしまう。

それが楽しくもあるのですが。

たとえストーリーが破綻していても、映像に見るべきところがあるから新作には足を運んでしまうのです。

今回も、あたかも本当に宇宙に行ったように錯覚させられる映像を堪能しました。

 
前作『ダークナイト ライジング』からアン・ハサウェイが続投。ショートヘアも似合ってますね


僕は理数系の血が一滴も入っていなくて(父は数学の教師だったんだが^_^;)科学的な考証についてはまったくわからないので、ちょうど『ゼロ・グラビティ』の時と同様に、なんかそれっぽいからリアル、と勝手に感じてるだけなんですが。

ただ、宇宙空間では完全に無音、という『2001年宇宙の旅』を踏襲した表現なので、VFXの迫力に息を呑むというより息苦しくて堪らなかった(ちょっと気分が悪くなったほど)。

だから、もう一度観たいかというと「う~ん」ってなる。

やっぱり毎度のように3時間近くあるし。

マシュー・マコノヒー演じるクーパーとともに遥かな距離と時間を旅したという満足感はあったから、IMAXで観てよかったですけどね。

ちょっと音がデカ過ぎる気がしたんだけど(僕が観ていたのはF席の中央)、監督によれば意図的なものなんだそうで。

もう劇場が音圧でビリビリしていた。そういう臨場感は確かにありました。


この映画の見どころの一つがロボットたち。

まるでジェンガかキットカットみたいな形のロボット“TARS”がなんともユニーク。歩く姿が実にラヴリー。

 


彼と同型機の“CASE”とともにどちらも最後まで人間に忠実で頼りがいがあり、つねにタメ口でブラック・ジョークもカマす。

ノーラン作品では珍しくお茶目なキャラでした。

またノーラン監督の作品で僕が好きなのは、CG合成に頼りきりじゃなくてここぞという場面ではちゃんと撮影現場で現物を使って撮影するところ。

『ダークナイト ライジング』のバットマンの戦闘機“ザ・バット”がそうだったように、今回も飛行艇の実物大のプロップを使っている。

 


海に着水したあとの映像は、ちょっと1968年のオリジナル版『猿の惑星』の冒頭を思いださせたり。

宇宙空間の映像はいわゆるスターウォーズ的なド派手なワープとかバトルというんではなくて、『2001年』や『ゼログラ』系のリアリズム描写(あくまでも素人目に見て、ということです)で、しばしば宇宙船の機体の先端が画面に映ってるような、やってること自体は意外と地味目だったりする。

 


バットマンを撮ってはいるけれど、おそらくノーラン監督は最近のアメコミヒーロー映画のようないかにもなVFX映像にさほど興味がないんじゃないだろうか。ノーランがプロデューサーを務めた『マン・オブ・スティール』も、彼よりも監督のザック・スナイダーの趣味が全開だったし。

ブラックホール、というと僕は真っ先に日本の特撮映画『さよならジュピター』を思いだすんですが、この『インターステラー』では従来のような“穴”ではなくて、最新の研究結果に基づいてブラックホールは“球体”として表現されている(追記:最初に宇宙船が飛び込む“球体”はブラックホールではなくてワームホールでした)。

 


観ててももう何がどーなってんだかよくわからなかったけど^_^;『2001年』のスターゲイトのシーンを今やったらこうなる、みたいな感じでIMAXならではの迫力があって気持ちよかった。

3Dではないけど、ハッキリと体感映画として作られていました。

ちょっとジョディ・フォスター主演の『コンタクト』を思わせるところもあったけど、そーいえばマシュー・マコノヒーは『コンタクト』にも出てたっけ。

ちょうどつい先日、小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上げられたばかりだし、銀河に想いを馳せるにはもってこいの映画なんじゃないでしょうか。

以下、ストーリーのネタバレがありますので、未見のかたはご注意ください。



はやぶさ2が(無人とはいえ)何年もかけて途方もない距離を旅するように、この映画では新天地を求めて宇宙飛行士たちが数十年かけて何億光年も先の天体を目指す。

ブラックホールの近くを通過したため“ウラシマ効果”で時間の流れが遅くなり、彼らにとってのわずかな時間が地球では数年、数十年に匹敵する。

仮に地球が滅亡しなくても、選択を誤れば故郷の愛する人たちはその間に寿命が尽きて死んでしまう。

「時間」は不可逆的で、未来から過去に戻ることはできない(だから過去にさかのぼるタイムマシンは実現不可能といわれる)。死んだ人には二度と会えない。

地球はあまりに遠く、リアルタイムで連絡もとりあえない。

クーパーが地球においてきた娘マーフィーは成長し、やがて父と同い年になる。

長男は結婚して子どもが生まれるが、クーパーの初孫は亡くなってしまう。クーパーの亡き妻の父親(ジョン・リスゴー)もまた義理の息子が不在の間に還らぬ人となる。

この想像を絶する距離感。

エイリアン2』で、主人公リプリーは人工冬眠で宇宙を漂流していたために、目覚めた時には彼女が地球に残してきた娘は亡くなってすでに何百年も経っていることが判明する。

『インターステラー』ではその感覚をリアルに実感させてくれる。

しかし、それは僕たちの身近でも起こりうることだ。

しばらく会わないうちに気づいたらみんな自分よりも遥かに成長している。結婚して子どもが生まれて、親や親戚、知人が亡くなっていたりする。

僕はふと我に返って愕然とすることがよくある。


正直なところ、僕の頭が悪過ぎるせいで途中から主人公たちが何をやってるのか、何が問題なのかもよくわかんなくなってきて、台詞の字幕読みながら必死についていこうとしたんだけど、それでもストーリーをちゃんと理解できたとは言い難い。

もう一度観る気になれないのはそういう理由もある。逆にもっかい観たらもうちょっとわかりやすいのかもしれないけど。

クーパーの娘マーフィーが本棚の本の不思議な現象から妙なことを口走りはじめてからは、何やらスピリチュアルな要素がストーリーに加わってくる。


子ども時代のマーフィーを演じるマッケンジー・フォイがなかなか良い


当然ながらそれは伏線になっていて、ラスト近くのオチに繋がるのだが。

『2001年宇宙の旅』だと思って観てたら途中からM・ナイト・シャマランの映画やニコラス・ケイジが地球滅亡の予言を“受信”する『ノウイング』みたいな展開になっていくという(『インターステラー』の場合は、人類を救う方法が心霊現象と結びつく)、よーするにトンデモ系といってもいいお話で、物語については好みが分かれるだろうと思います。

こういう畳の部屋と遠い星が繋がっちゃう藤子・F・不二雄漫画みたいな話って、僕はわりと好きなんですが。

ただ、これってつまり「世にも奇妙な物語」の1エピソードを3時間かけてやってるようなもんだし、最終的に「愛が人類を救う」というところに落ち着くのも、ありがち、っちゃありがちではある。

僕がこの映画がシンドかったのはストーリーの整合性がどうとかいうことよりも、さっきも述べたように“ウラシマ効果”をめぐる後半の展開がちょっとよくわかんなかったから。

映画の中盤以降、宇宙で移住先を探すクーパーたちと、地球で本棚の現象の謎から人類の危機を救う方法を見つけだすマーフィーの場面がクロスカッティングされて、怒涛のようなスピードでまるでワープするみたいに描かれるんで、もうジェットコースターに乗ってるみたいに身体がもってかれそうになりながら観てたもんだから、観終わっても「で、どういうことだったんだろ…」と途方に暮れちゃって。

ケイシー・アフレック演じるクーパーの息子が、なんでジェシカ・チャステイン演じる大人になったマーフィーに執拗に反対するのかも不可解で。

 


これって『インセプション』の時もそうだったんだよな。なんとなく流れに乗って観てただけで、ちゃんと理解はできてない、っていう。

もう一回観たら理解できるんでしょうかね。

そんなわけで、圧倒されながらも「すげぇ好き!」というところまではいかなかったんですよね。


後半になって、いくつかある移住候補の星の一つに先に行ってた博士役でマット・デイモンが登場するんだけど、この人、映画の予告篇にもポスターにも一切顔や名前が出てないんでサプライズだったんでしょうか。

マット・デイモンが出てきて「をっ」となる観客がどれだけいるのかわかりませんが。

でもこの映画でデイモンが演じてるキャラは、彼がこれまでさまざまな作品で演じてきた役柄のイメージを裏切るものなので、意表を突かれたところは確かにあった。

『インターステラー』でマット・デイモンが体現するのは、任務には忠実だが大切なものを失った者の姿だ。

その“大切なもの”が何なのかは、彼とクーパーを比べてみればわかる。


この映画を一言で表現すると「“愛”は時を越える」ということか。

クーパーは家族への“愛”によって、戻れるはずがない過去へ、娘と別れたあの部屋に戻る。

彼がたどり着いたのは、あの本棚の裏側だった。

あの時、マーフィーが見た不思議な現象は、未来からやってきた父が彼女に送ったメッセージだった。

少女時代のマーフィーは、兄に自分の名前をからかわれて怒っていた。

マーフィーの法則」のマーフィーなんて、と。

でも、「必ず帰ってくる」と約束した父は本当に帰ってきた。

悲観的な例が多い「マーフィーの法則」の逆を行くように、最後まで諦めなかったクーパーはその任務を全うし愛する娘と再会する。

これは実際に娘さんがいるというノーラン監督の強い意志表明でもある。

人類の未来のために家族を犠牲にするか、それとも家族とともに生きて人類を見捨てるか。

この究極の選択で、クーパーはそのどちらも選び取るのだ。

それは“可能”なんだと。

宇宙と家族、といえば昨年の『ゼロ・グラビティ』でも主人公は死別した娘のことを想い、極限的な世界である宇宙空間からの帰還が生命の誕生や悲しみからの回復と重ねられていた。

『インターステラー』の地球はもはや帰るべき場所ではなくなっているが、たとえ故郷を離れても愛する家族への愛は普遍なんだとこの映画は主張している。

愛は時空を超える、か。

う~ん、これはもう一回ぐらい観た方がよさそうですかね^_^;



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