判例タイムズ1508号で紹介された裁判例です(東京地裁令和4年1月24判決)。
本件は,NHKの受信契約,収納業務につきNHKから委託を受けていた法人に所属していた原告らがNHKを訴えたというものですが,その主張の一つが,再開業務(NHKからの請求書が送付されているにもかかわらず、年単位で受信料を滞納している長期未収者に対して受信料の支払を求めるという業務)は,法的紛議の発生が不可避であるから、弁護士法72条のいう「その他一般の法律事件」に関する業務であって,このような違法な業務に従事させたことについて責任があるというものでした。
この点に関し,判決は次のとおり説示して再開業務は、法的紛議の発生が不可避であるとはいえず、弁護士法72条の「その他一般の法律事件」に関する業務には当たらないというべきであると判示しています。
・再開業務に関し、NHKが作成して本件受託法人らに遵守を求めるマニュアルには、①訪問員は、長期未収者のうち、NHKが受信料の支払請求書を送付したにもかかわらず支払のない者を対象として、対面訪問を行うこと、②同一世帯に対する当日中の訪問は1回までとし、対面訪問は月間3回までとすること、③訪問員は、対面訪問の際には、長期未収者に対し、未払時期及び未払の受信料の総額を伝え、これを支払うように求めること、④対象者が契約や支払に応じない場合には、支払拒否、生活苦、日延べ等の反応に対して重ねて説得をしないこと、クレームやトラブル防止のため返送・手続依頼等の簡潔な案内に留め辞去すること、明確な拒否反応があった場合には当期中の再訪問はしないことが記載されていたと認められる。
・このようなマニュアルの記載に照らすと、再開業務は、訪問員が長期未収者に対し、未払受信料を支払うように求めるとともに、支払に応じる意思があるか否かを確認し、必要な手続を教示するものにすぎず、支払に関する意向の対立があるときに、その調整を行うことは予定されていないものと認めるのが相当である。
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