判例タイムズ1451号などで紹介された事例です(東京地裁平成29年2月20日判決)。
本件は,顧客から,ネットでのネガティブ情報の削除を請け負っていた株式会社について,当該業務が弁護士法72条に反するもので,不当利得に当たり,受け取った代金約50万円の返還が認められたという事例です。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)弁護士法第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
弁護士法72条の各要件について裁判所の判断としては次のようなものです。
・「法律事件」・・・ウェブサイトの運営者側の表現の自由と対立しながらこれにより本件各記事が削除され,顧客の人格権の侵害状態が除去されるという効果を発生させるものであるから,単純画一的に行われるものとはいえず,新たな権利義務関係を発生させるものといえる(肯定)
・「法律事務」・・・会社側は単に通報用のフォームを利用して情報提供し削除を依頼しただけであると反論しましたが,削除を求めるための情報を提供する行為は顧客の人格権に基づく削除請求権の行使によりウェ不在との運営者に対し削除義務の発生という法律上の効果を発生させ,顧客の人格権を保全,明確化させる行為であるといえる(肯定)。
そして,本件会社は,報酬を得る目的で業として行っていたものといえるとし,弁護士法72条違反を認めたものです。
ところで,不法な原因(本件では弁護士法違反)に基づき給付をした者はその返還を求めることができないという民法708条の規定があり,本件でも問題となりました。
(不法原因給付)民法第708条 不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。
この点について,給付者に多少の不法があったとしても受益者にも不法があり,前者の不法性が後者のそれに比して極めて微弱にすぎない場合には,給付者は受益者に対して給付した物の返還を求めることができるとされており(判例),本件では,業として弁護士法違反を行ない広告によって顧客を誘引していた会社の側にもっぱらの不法原因があるとし,顧客からの返還請求を認めています。
なお,本件では,顧客側は弁護士法違反に加担させられたことによる慰謝料の請求も行っていましたが,これについては退けられています。
我が国において,平たく言えば「他者との紛争に首をっ込める」のは原則として弁護士だけということになっており,一見争いがなさそうな事務作業だけに見えても,潜在的に他者との間で権利義務関係を生じさせるものについて非弁護士に依頼することのないように気を付けましょう。