債権管理に関する特別措置法(サービサー法)という法律があります。




今ではサービサーというのもすっかり珍しくなくなりましたが,不良債権回収を進めるために1998年(平成10年)に特別に制定された法律です。




サービサーの主な業務は,金融機関などの不良債権を安く買い取って(又は回収の委託を受けて),回収していくという業務ですが,このような業務というのは本来弁護士でなければ行えないものであり,サービサー法は弁護士法に対する特別法という位置づけになっています。




判例時報2145号で紹介された最高裁平成24年2月6日の判決は刑事事件ですが,これは,債権回収業務を営むためには法務大臣の許可が必要とされているところ,無許可で,消費者金融会社から消滅時効にかかっていたり,過払いが発生しているような不良債権を大量に購入し,合計142万円を回収したというサービサー法違反の事件でした。




この件で,被告人側からの上告理由として,本件の債権は「事件性がない」からサービサー法に反しないということが主張されました。





事件性必要説と事件性不要説というのは,知っている人は知っている,弁護士法72条に反するかどうか(非弁になるかどうか)という弁護士と他士業との境界を画するための見解の違いです。

弁護士法72条は次のような規定です→「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。」




要は紛争性があるかどうかというところの違いで,日弁連などは事件性不要説,すなわち紛争性が合ってもなくても,法律問題に関する限り弁護士でなければ取り扱えないとい主張をしています。





もっとも,本件において,どちらの説に与するかは関係なく,消滅時効にかかっていたり,過払いになっているような債権を譲り受けて,これを請求していたのですから,債務者側との見解の違い,対立,紛争が生じることが明らかの案件であり,最高裁も,事件性必要説,不要説のいずれについても明確には触れることなく,サービサー法違反が成立すると判断しています。




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