判例時報2385号で紹介された事例です(東京地裁平成30年1月29日判決)。

 

 

本件は,学校法人である使用者と教職員組合との団体交渉に係る事案ですが,従前,7名以下であった組合側の団体交渉への出席参加人数が9名であったことから,使用者が7名以内にするように求めたが組合側が拒否し,人数を制限する質問をしたのに対し,使用者は質問に対して回答することなく,組合側出席者が7名以下でなければ交渉に応じられないとして交渉を拒否して退席したという事案において,都労委,裁判所とも,不当労働行為であると判断したというものです。

 

 

判決では,団体交渉の出席人数を何名とするかということについては第一次的には各当事者の自主的な判断に委ねられるべきものであるとし,使用者が参加人数を制限するように求めたりすること自体は許されるものの,組合側がこれに応じなかったからといってそれを理由に団体交渉の議題に入らないとの態度をとることは,人数制限についての客観的な必要性合理性ほ勘案して,相当であると認められる特段の事情がない限りは許されないと判示しています。

そして,本件で,そのような必要性合理性が認められるのかという点について,まず,本件使用者側では,組合側参加者は7名までという「慣行」が成立していたと主張しましたが,それまでの組合側の参加者が7名以内であったとしても慣行として成立していたとまでは認められないとされています。

また,組合側の参加人数が多くなると語気が強くなったり暴言が増えるといったことをあげましたが,そのような因果関係は認められないとして退けられています。なお,使用者側が人数制限を求めたことからその過程で適切とはいえない発言(「ふざけんなよ」とか「ほんとばかやろう」など)があったとしても,人数が7名を超えたからこのような発言がされたとはいえないとされています。

また,7名を超えると使用者側が取り囲まれるような状態となるという主張もされましたが,使用されていた部屋の状況からすると10名程度までならそのような状況にはならないといえるし,そもそも,その部屋を使わなければならないということでもないとされています。

 

 

団体交渉においては,本題の議論をする以前に,本件のような参加人数のほかにも,開催場所や時間といったルール自体をめぐって争いとなることも多く,一つの事例として参考になりそうです。

 

 

 

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