警視庁によりますと、漁業監督官らは平成26年から去年にかけて、航行中の漁業取締船内で春と夏の全国高校野球大会の優勝校を当てる賭博を1口500円で行っていた疑いが持たれています。

取締船は民間から借り上げた船で、船長や船員と水産庁の漁業監督官が同乗していたということです。

警視庁の調べに対し「長い航海で親睦を深めるため娯楽感覚で軽い気持ちでやっていた」などといずれも容疑を認めているということです。
(2月4日NHKニュースウェブから一部引用)
 
率直に言って,この程度のことでという思いをもつ人もいると思いますが,古今東西,多くの地域においてかけ事は厳禁(タブー)とされ,我が国においても古くから賭博は犯罪とされてきた経緯からすると,賭博がもたらす悪影響というものは古くから認識されていたということなのでしょう。
 
 
賭博罪は刑法に規定があり,単純賭博罪と常習賭博罪が設けられています。
司法試験でもあまり突っ込んで勉強しない分野ですし,実務でも弁護士にとっては取り扱うことの少ないなじみのない犯罪です。
 
(賭博)
刑法第185条  賭博をした者は、五十万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

 

(常習賭博及び賭博場開張等図利)
刑法第186条  常習として賭博をした者は、三年以下の懲役に処する。
 賭博場を開張し、又は博徒を結合して利益を図った者は、三月以上五年以下の懲役に処する。
 
よく「一時の娯楽に供する物」とは何ぞやと質問されることはありますが,「一時」なので,その場で費消される飲食物,たばこがこれに当たると説明されることがありますが,量が多い場合には(一人ではその場で使い切れないほどの量というところでしょうか),「一時の娯楽」とはいえないと評価されるかと思います。
また,この観点からすると,金銭については後から使うことができるものですのでどんなに少額でも「一時の娯楽に供する物」とはいえないこととされています。本件では500円と少額ですが,賭けたものが金銭であったことから摘発の対象とされたものと思われます(もっとも,起訴されるかどうかは別の問題ですので,金額や経緯からして不起訴とされるものと考えられます)。
この点は,金銭であってもそれが飲食物などの「一時の娯楽を供する物」を買うためのものであれば同視すべきという説もあります。
 
 
なお,賭博罪は国外犯を処罰しないことになっているので,日本国民が海外に出かけて行って現地で行う賭博ツアーは罰せられないということになります。
この点で問題となりそうなのは,いわゆる海外にサーバーなどが設けられているオンラインカジノに日本から参加した(賭けた)場合はどうなるのかということですが,海外ではそのような賭博は合法とされていることもありそのような場合,どうなるのかなとも思います。
この点,オンラインカジノを運営するフィリピンの会社であるからオンラインゲームの配信を受け,同店舗内に設置したパソコン12台を使用して,来店する客にそのゲームを行わせていたという事案で賭博罪が成立するとした裁判例はありますが,この事例ではあくまでも国内に設置されたパソコンに配信を受けたうえでで賭けていたので賭博罪の成立を認めても特に問題ないと思いますが,現地では合法な海外のサーバーまで出かけていって賭けたという場合,賭博ツアーと違うのか,国内で行為の一部が行われている以上犯罪となると考えるのかなど,いろいろ論点はありそうです(思いついただけですのですでに答えの出ている論点かもしれません。海外サーバーにあげられた児童ポルノについても同じような問題があったように思います)。
 
 
話が脱線しましたが賭博罪のお話でした。