2017年11月にエイベックス・マネジメントからGEMの公演中止のアナウンスが出る。(※1)
以前にも書いたが、きっかけは一部のメンバーによる軽はずみな行動だった。ファンにしてみれば愉快な話ではないだろうけれど、本来であれば当人に自覚を促して、ことによっては個別に責任をとらせればいいだけの話だ。そんなに大袈裟にさわぐ事でもない。(※2)
しかし、そうはならなかった。それは「グループの諸般の事情」となり、決まっていたライブの予定がキャンセルされる。なんの関係もないメンバーの生誕祭までが中止になり、何事かと不信感がつのる。
これに先立つ、9月には10人組のメンバーを『ルナ』と『ソル』という5人組の二つのグループに分け、新コンセプトで活動していくという発表があったばかりだった。(※3)
おそらく人数をコンパクトにすることで機動力を増し、可愛いグループの『ルナ』とカッコいいグループの『ソル』とで、コンセプトも明確にし、新展開を図ったのだろう。
単純に人数が半分になれば、移動や宿泊の経費も半分になる。地方のイベンターも呼びやすくなるし、主催する公演も小回りがきく。悪くないアイデアだと思った。現場の運営スタッフは、懸命に道を切り開こうとしていた。
しかし、押しよせる波には抗えなかった。
年が明けて2018年1月15日の発表により、同年3月31日をもってGEMのグループ活動を終了し、解散することが伝えられた。(※4)
このタイミングで、「GEM今春解散『スパガ』ら4組とメンバー入れ替え」(日刊スポーツ1月15日付)という記事が出る。(※5)
朝刊の紙面で、「14日、分かった」という文面だから、おそらく公式発表前のリーク記事だ。内容的には、GEMの解散により、アイスト内の姉妹グループ、スパガ、チキパ、わーすたとのプロジェクト全体の見直しが行われ、メンバーの入れ替えなども検討されているというものだ。
これは、にわかには受け入れがたい情報だった。ただでさえGEMの解散で打ちひしがれているときに、ほかのファンまで巻き込んで、さらに大きな動揺を生みだすことになる。
この報道に反応して、樋口プロデューサーがツイートする。
「わーしっぷの皆さんへ
一部報道にわーすたの記載がありますが、
わーすたのメンバーが代わる事はありませんので安心してください。
よろしくお願いします。(8:35 - 2018年1月15日)」(※6)
このツイートにたいする人々の反応は容易に想像がつくだろう。要約すれば「あなたは『わーすた』だけ良ければそれでいいのか?」という憤りだった。
うかつだとは思うが、彼にも事情があった。
このとき、樋口プロデューサーが担当しているのは『わーすた』のみで、ほかのグループのスケジュールすら彼は知らなかった。大きな流れは彼の耳にも入っていただろうけれど、それについてどうすることも彼にはできなかった。ただ、多くの人はアイストの責任者はいまだ樋口プロデューサーだと思っていただろうし、それぞれのグループを立ち上げた責任者としては、あまりに心ない反応に見えてしまった。
彼のそういった立場を多くの人が知ることになったのは、もう少しあとになってからだ。3月26日の配信番組で彼はこんなふうに言っている。(※7)
「アイストというくくりで全体を見ている人がいなくなった」
「採算をファミリーとして見ることがなくなった。そのため昨年(2017)8月にストリート生は終わった。くいとめたかったけれど、新人育成についてエイベックス全体で考え直すことになった」
「個別の採算になったときに、GEMはむずかしいという話は4月からあった。武田が帰るまでがんばらなきゃ、と思い、テコ入れのために2チームに分けた──」
ここで話に出ている武田舞彩とは、2016年の6月からアメリカに留学していたGEMのメンバーだ。
「個のパフォーマンス力を強化し、ワールドワイドに活躍できるアイドルになる」ためにエイベックスが資金を用意し、現役のアイストのメンバーに希望者を募って実現した。チキパからも山本真凛と鈴木真梨耶が選ばれ、それぞれのグループのエース級3人が2年間のLA留学に旅立ち、2018年の夏にはもどる予定だった。(※8)
大胆で野心的な企画だった。と同時に、エース級が2年もいなくなって大丈夫なのか? と誰もが思った。個人的にはリスクをとってチャレンジすることに好感をもっていた。
しかし、思った以上に環境の変化は大きかった。エイベックスという企業の体制が変わり、アイドルの世界も移ろっていく。
旅人が2年の修業を終えようとしたとき、GEMという戻るべき家が失われてしまった……
GEMの公式ブログはリーダー金澤有希の記述で終わっている。これまでのことに感謝し、前向きになろうとする意志と、それでもやっぱり、やりきれない思いで最後までゆれつづけている。(※9)
『GEM』の名前の由来は「Girls Entertainment Mixture=少女たちのエンターテイメントの集合体」そして同時に「宝石・美しく貴重なもの」を表す。
2012年11月にストリート生からピックアップされたプレ・メンバーによって結成され、2018年3月に解散した。活動期間は5年4ヶ月だった。
この悲劇はもう一度、Cheeky Paradeでくり返されることになる。
──「撤退戦Ⅱ『Cheeky Parade』」につづく
(※1)NEWS | GEM オフィシャルウェブサイト(2017.11.26)
「公演中止のお知らせ」
*2019年12月12日現在、確認したところ、上記GEMの公式サイトが消失していた。おそらくこの半年ぐらいでの措置だと思う。公式ブログ「GEMILYへ。メンバーより! | GEM (iDOL Street)オフィシャルブログ (2017年11月26日)」はまだ残っている。日刊スポーツの記事も添付する。「GEM公演中止を追加発表「沢山の愛を胸に頑張る」 - 音楽 : 日刊スポーツ」
デジタルの記録って、ほんとにいつ消えるかわからないなあ、とまた感じた…
(※2)本ブログ:2018年「アイドル界の乱気流」 まえぶれとしての遠藤舞とGEM | (2019-11-23)
(※3)GEMから2つの新グループが誕生 | BARKS(2017.9.19)
「GEMが9月18日、ワンマンライブを開催した。(…)グループ名の由来である「Girls Entertainment Mixture=少女たちのエンターテイメントの集合体」の言葉通り、まるで演劇ショーのようなライブとなった」
(※4)NEWS | GEM オフィシャルウェブサイト(2018.01.15)
「弊社所属アーティスト「GEM」の解散のご報告」(*GEM公式サイトは失われている)
オリコンの記事を添付する。「GEM、3月末で解散を発表 金澤有希「とても悲しく、悔しい」 | ORICON NEWS」
リーダー金澤有希のコメントも掲載されている。
(※5)GEM今春解散「スパガ」ら4組とメンバー入れ替え - 音楽 : 日刊スポーツ
(※6)樋口P🌟さんのツイート: "わーしっぷの皆さんへ 一部報道にわーすたの記載がありますが…(2018年1月15日)
(日刊スポーツweb版の記載時間が朝の7時40分、朝刊の紙面にも載っている。樋口氏のツイートは8時35分なので、彼もかなり慌てていたのだろう)
(※7)@JAM アフタートーク 緊急討論会 2018.03.26 - YouTube
(※8)チキパ山本真凜と鈴木真梨耶、GEM武田舞彩がLA長期留学へ。「ペラペラ人になって帰ってくる!」 | BARKS
(※9)GEM (iDOL Street)オフィシャルブログ Powered by Ameba「departure 金澤有希!」(2018年03月31日)
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