煮汁がすっかり飛ぶころ、
つくしは艶やかな飴色になっていた。
炊き立ての飯をよそう。
その上に、
つくしを一摘みだけ乗せる。
泥にまみれ、冬を越したあの苦味が、
舌の上で、静かに残る。
こういう味は、急いでも作れない。
鍋を火にかけて、
ただ黙って見ている時間がいる。
派手な音も、
大きな炎もいらない。
弱くてもいい。
……消えなければ、それでいい。
ロクは湯気の立つ飯を見て、
小さくつぶやいた。
「……それでも、火は落とさない」
さあ、
冷めないうちに食え。
―この味が、俺の『仕込み』の始まりだ。
今日の注意書き
※ 火傷に注意。炊き立ての飯は見た目より熱い。
※ 食べ残し厳禁。春の苦味は、一粒まで味わうこと。
