40皿目 一摘みの芯― つくしの話 ― | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


煮汁がすっかり飛ぶころ、
つくしは艶やかな飴色になっていた。

炊き立ての飯をよそう。

その上に、
つくしを一摘みだけ乗せる。




泥にまみれ、冬を越したあの苦味が、

舌の上で、静かに残る。


こういう味は、急いでも作れない。

鍋を火にかけて、
ただ黙って見ている時間がいる。

派手な音も、
大きな炎もいらない。

弱くてもいい。
……消えなければ、それでいい。


ロクは湯気の立つ飯を見て、
小さくつぶやいた。

「……それでも、火は落とさない」

さあ、
冷めないうちに食え。

―この味が、俺の『仕込み』の始まりだ。





今日の注意書き

※ 火傷に注意。炊き立ての飯は見た目より熱い。
※ 食べ残し厳禁。春の苦味は、一粒まで味わうこと。