夕方の厨房。
フライパンが温まり始める頃、常連がカウンターに肘をついた。
「ロクさん、今日はナポリタンある?」
「ある」
短く答えると、ロクは冷蔵庫を開ける。
すると客が、思い出したように言った。
「赤いウインナー、入れてくれよ」
ロクの手が止まる。
「……子供か」
そう言いながらも、赤いウインナーを取り出す。
斜めに包丁を入れると、
やけに鮮やかな断面が現れた。
フライパンに油を引き、
玉ねぎとピーマンを落とす。
ジュッと音がして、
甘い匂いが立つ。
麺を入れて炒める。
クゥーが横から覗き込んだ。
「ロクさん、これ焼きナポリタンじゃないの?」
ロクはフライパンを振りながら言う。
「……あれは鉄板だ。」
「今日は、ナポリタンだ。」
そう言って、ケチャップを入れる。
フライパンの底で、
ケチャップが少しだけ焦げた。
どこか懐かしい匂いが、厨房に広がる。
昔の食堂は、だいたいこの匂いだ。
その香りが立ち上った瞬間——
クゥーが赤ウインナーを一本つまんだ。
「あっ、これ絶対うまいやつ!」
ロクが振り向く。
「……おい。それ客のだ」
クゥーは慌てて口を押さえ、
何事もなかった顔で皿を並べる。
ロクは何も言わず、
もう一本ウインナーを切った。
皿に盛ったナポリタンの上で、
赤いウインナーが少しだけ照っている。
「ほらよ」
常連がフォークを取る。
ケチャップの甘い匂いが、
静かな厨房にまだ残る。
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本日のおすすめは、
懐かしい匂い。
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今日の注意書き
・赤ウインナーは大人でも注文できます。
・クゥーのつまみ食いは仕様です。
・ケチャップは焼くと、少しだけ香ばしくなります。
