41皿目:赤いウインナーのナポリタン ……子供の頃のやつか。 | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。

夕方の厨房。  
フライパンが温まり始める頃、常連がカウンターに肘をついた。

「ロクさん、今日はナポリタンある?」

「ある」

短く答えると、ロクは冷蔵庫を開ける。

すると客が、思い出したように言った。

「赤いウインナー、入れてくれよ」

ロクの手が止まる。

「……子供か」

そう言いながらも、赤いウインナーを取り出す。

斜めに包丁を入れると、  
やけに鮮やかな断面が現れた。

フライパンに油を引き、  
玉ねぎとピーマンを落とす。

ジュッと音がして、  
甘い匂いが立つ。

麺を入れて炒める。

クゥーが横から覗き込んだ。

「ロクさん、これ焼きナポリタンじゃないの?」

ロクはフライパンを振りながら言う。

「……あれは鉄板だ。」

「今日は、ナポリタンだ。」

そう言って、ケチャップを入れる。

フライパンの底で、  
ケチャップが少しだけ焦げた。

どこか懐かしい匂いが、厨房に広がる。

昔の食堂は、だいたいこの匂いだ。

その香りが立ち上った瞬間——




クゥーが赤ウインナーを一本つまんだ。

「あっ、これ絶対うまいやつ!」

ロクが振り向く。

「……おい。それ客のだ」

クゥーは慌てて口を押さえ、  
何事もなかった顔で皿を並べる。

ロクは何も言わず、  
もう一本ウインナーを切った。

皿に盛ったナポリタンの上で、  
赤いウインナーが少しだけ照っている。

「ほらよ」

常連がフォークを取る。

ケチャップの甘い匂いが、  
静かな厨房にまだ残る。


本日のおすすめは、  
懐かしい匂い。


今日の注意書き

・赤ウインナーは大人でも注文できます。  
・クゥーのつまみ食いは仕様です。  
・ケチャップは焼くと、少しだけ香ばしくなります。