つくしのハカマを剥いていると、
指先がだんだん黒く染まってくる。
泥を落として、
節をそろえて、
鍋に入れる。
醤油と酒を少し。
弱い火で、
ゆっくり佃煮にしていく。
厨房に甘辛い匂いが広がる。
だが主役は、
あの野原の苦味だ。
鍋をかき混ぜながら、
ふと思う。
この店でも、
いろんな皿を出してきた。
火の話も、
油の話も、
湯気の話もした。
だがな。
料理ってのは、
最後まで残るもんがある。
それが何かは
まだ、煮えない。
鍋の底で、
黒いつくしが静かに艶を出していく。
その匂いが、
もう少し立つまでは。
今日の注意書き
※ 焦げ付きに注意。火を急ぐと苦味はただの雑味になります。
※ 指の汚れに注意。つくしの灰汁はなかなか落ちません。でも、その匂いが春です。


