吊るした紅月 今宵で幾つ

明確に【痛み】をテーマとし、Dir en greyにとっての転機となった4thアルバム『VULGAR』をレビュー!


Dir en grey - VULGAR

ディル・アン・グレイ - ヴァルガ

2003年9月10日リリース

オリコン6位


トラックリスト

  1. audience KILLER LOOP
  2. THE ⅢD EMPIRE
  3. INCREASE BLUE
  4. 蝕紅
  5. 砂上の唄
  6. RED…[em]
  7. 明日無き幸福、呼笑亡き明日
  8. MARMALADE CHAINSAW
  9. かすみ
  10. Я TO THE CORE
  11. DRAIN AWAY
  12. NEW AGE CULTURE
  13. OBSCURE
  14. CHILD PREY
  15. AMBER
赤字表記はシングル曲(全てアルバムVer.)

本作から京は歌い手ではなく表現者であるという意識に目覚め、クレジットをVocalからProphetに変更し、ベースのToshiyaはアルバム完成までの長い道のりの中で、バンドサウンドの中に如何にしてベースラインを存在させるかについて悩み、Shinyaのドラムに関してはこれまでと比べると100倍くらい難しいと語るなど、相当に気合の入った、メンバー達にとっても凡ゆる意味で思い入れのあるアルバムとなっている。
また本作から作曲・編曲のクレジットもDir en greyに統一されている。ということで…

『VULGAR』の曲毎のレビュー/解説

1.audience KILLER LOOP

目の前は生きる意味がない?

………

目の前は深いお前らの

渦と嘘の箱庭


アルバム一曲目からして既にこれまでと比較して明らかに様子がおかしい…激しさの中に痛みと闇、そして悲しみがある。

歌詞は京自身のトラウマを綴ってあるものらしい。

タイトルからして既に狂っている。楽曲自体は痛みを伴うアルバムとして十分に相応しい。


2.THE ⅢD EMPIRE

花火綺麗な夜空

子供は笑い喜ぶ


タイトルはそのまんま第三帝国という意味でありナイス・ドイツを意味するものであり、歌詞も戦争をテーマとしている。ドラムの手数の多さもさることながら、物凄い速いパッセージに言葉遊びをぶち込んだ京のラップ調のボーカルスタイルもなんか凄い。


3.INCREASE BLUE

歌詞はホラー映画をモチーフにしたようなエログロである。メロに関しては至って普通かなと思うけど、ノリやすい楽曲ではある。


4.蝕紅

印象的なサビのメロディがあり、その歌詞は童謡のかごめかごめをモチーフとしている和のテイストが強い楽曲。かごめかごめはなんだか怖い歌だけれど、こちらは非常に辛い歌詞となっている。小さな身体を売る少女…


5.砂上の砂

凄くシンプルなメロディの繰り返しなんだけれど、儚く、そして何故だかオレはこの曲を聴く度に、TRFのmasqueradeが頭の中で流れる。


6.RED…[em]

冒頭のDieによるギターのカッティングからギターソロに至るまで、Dieが主役みたいな曲かな。


7.明日無き幸福、呼笑亡き明日

あふなきこうふく、こえなきあすと読む。

なんか踊りやすいな。なんでかな?とか思ったら、(思ってないけど)Dir初のシャッフルビートを導入した楽曲だった。兎に角タンタターンタンタターンというドラムのリズムが印象的なのと、なんせ踊りやすい。(まぁ踊るというかノリながらお料理するくらいの感じなんだけど。)


8.MARMALADE CHAINSAW

京がLIVE中の自分自身を歌った曲だけれど、歌詞にオレンジ仕掛けだの時計仕掛けだのと出てくることからも解る通り、映画『時計仕掛けのオレンジ』の主人公アレックスと自分自身を重ねている。こちらも非常にノリやすいロックな楽曲。


9.かすみ

そよとの風もない真昼の十三時

彼女は無口に今も

畳の下


儚く美しい、和テイスト…というか、和ホラーテイスト溢れるミドルテンポのバラード。15thシングル。

歌詞中に祇園坂が出てくるなど、京の出身地である京都が舞台であろう。

メロディもさることながら、それに被さるコーラス、特に低音でのコーラスが印象的。そして、最後の一節、彼女は無口に今も畳の下…は更に印象的。そして彼女とは歌詞から察するに、母親のことであろう。


10. Я TO THE CORE

なんか短いメロコアな楽曲。あ、はい。このアルバムには要らない子だと思います。


11.DRAIN AWAY

美しいサビから始まるまで14thシングル


こちらも歌詞が和テイストに溢れた美しいロックナンバー。原曲持ってきてるのがDieだけれど、実にDieらしい曲だと思う。


12.NEW AGE CULTURE

インダストリアル混じりのハードコアな楽曲。掛け合いのコーラスでLIVEでは大盛り上がりであろう。LIVEでやってんだかどうかは知らないけれど。


13.OBSCURE

吊るした紅月 今宵で幾つ…


閲覧注意!


本作『VULGAR』の核となる楽曲であり、この曲も和テイスト…というか和ホラー的耽美さに満ちている。(耽美とは美醜入り混じるという意味で。つまり直接的表現をするならエログロ)


Bloody baby & Sacrifice


Sacrificeとは生贄のことです。ということで、お察しください。


14.CHILD PREY

ポップでハードな13thシングル


全英詞(と言っても凄く簡単な英詞)で、何やらやばいことを、猛々しいコーラス混じりに捲し立てているようだけれど、特に深い意味はないです。(多分)


15.AMBER

アルバムラストを飾る妖艶なハードロックナンバーで、京曰くアルバムで一番攻撃的な歌詞らしいんどけれど、普通に見るなり聴くなりすれば何が?という話ではある。京的には表現がストレートすぎる故に攻撃的ということなのかなと思ったりする。

AMBER(アンバー/琥珀)ということで、石の中で生物が死に混入し時が止まっているかのようであることや、石言葉から攻撃的と言うことなのかもしれない。尚、歌詞自体はまぁましな恋愛的(だと思われる)執着を見せている。


総評

『鬼葬』の試行錯誤期からは完全に抜け出している印象で、Dirのメンバー的にも「自分にとっての一作目」と語るほどの転機となったアルバムで、内容も充実しているし、今後のDirを追っていく上では避けることのできない一枚である。

だがしかし、これは序章にしか過ぎないのであった。


アルバムのオススメ曲

1.audience KILLER LOOP、2.THE ⅢD EMPIRE、9.かすみ、10.OBSCURE