是即ち地獄也
Dir en greyの2ndアルバム、是即ち『MACABRE』のレビューをする也
Dir en grey - MACABRE
ディル・アン・グレイ - マカブラ
2000年9月20日リリース
オリコン4位
トラックリスト
- Deity
- 脈
- 理由(わけ)
- egnirys cimredopyh +) an injection
- Hydra
- 蛍火
- 【KR】cube
- Berry
- MACABRE -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-
- audrey
- 羅刹国
- ザクロ
- 太陽の碧
MACABREとは、死を連想させるような不気味な、気味の悪い、ゾっとするような、といったような意味也。
そして本作は、『脈』『【KR】cube』のシングル2曲以外はセルフプロデュースとなっており、徹底してこの時期のDir en greyの世界観を表現した作りとなっているということで…
『MACABRE』の曲毎の解説/レビュー
1曲目、Deity。
一曲目からして何やら宗教的、呪詛的な世界観の音声が流れてきて、『MACABRE』の不気味な世界観に引き込んでくる。ギターリフが入ってからは非常にヘヴィであり、ブラームスのハンガリー舞曲第五番を引用した歌メロの歌詞に至ってはロシア語である。意味がわからない。何でロシア語なんかもわからなければ、ロシア語の意味もわからない。
2曲目、脈。
メジャー6thシングル曲。
変拍子を多用した変態的でメタル要素の強いパートと、サビのメロディアスパートとのコントラストが非常に美しい楽曲であるが、歌詞のテーマ自体はカニバリズムをテーマとしているものである。
1999年11月5日 午後6時30分27秒
B型で潔癖症の私は A型で不眠症の貴男から
少しだけ嘘を教えてもらい
嬉しさのあまり閉所恐怖症の私は貴男に
貞操帯をプレゼントしました
完璧主義の私は 爛れた夜に 動脈を ピクピクさせながら
貴男の静脈に 春死音を注入し ありったけの血液を取り出して
シンプルなこの部屋に 一つだけ 吊るして飾りました
それを見ながら私は
感度暴走のベチョベチョなアレを眼球剥き出しの貴男に
見せながら 3分天国 イイ感じ 錯乱状態 TYPE-A
意味がわからい。
ほんでカラオケでここ歌ってたら舌とれた。(とれた。(とれてない))
3曲目、理由。Die作曲。
理由と書いてワケ。本気と書いてマジ。
ミドルテンポの歌メロを重視した楽曲であり、【KR】cubeと共にシングル候補となった曲。
歌詞のテーマを飛び降り自殺をした男のフラッシュバックによる記憶である。歌のメロディも儚く悲しい。
“これ以上 これ以上は 傷つきたくない
でも君だけを 力強く抱きしめられない”
そしてアナタは誰かを傷つけた。傷つけると分かっていながら…
4曲目、ednirys cimredopyh +) an injection。Toshiya作曲。
いや。何て読むねん。って感じですけれど、+)より前を反転させてみましょう。
egnirys cimredopyh +) an injection
hypodermic syringe an injection。つまり皮下注射する的な意味となります。なりますらしいです。厳密には皮下に注射器で注入するです。故に、これはトリップしてる曲ですね。歌詞もそんな感じだし、曲もベースがウネウネしてギターがヒラヒラフワフワして、ボーカルがなんか捲し立てて、展開も急転直下してみたりラップしてみたり、いきなり爽やかになってみたり、兎に角ぶっ飛んでます。
5曲目、Hydra。薫作曲。
打ち込みを多用しており、インダストリアルな雰囲気が漂い、京のシャウトが炸裂する楽曲である。
中盤、急転直下、いきなり呪詛的ヤベー雰囲気を醸し出してくるあたり、やはりこのバンド、単なるV系の枠には収まらないバンドである。
6曲目、蛍火。Shinya作曲。
こちらもアレンジとして打ち込みを多様し、ヴァイオリンの導入もあったりするが、非常に儚く美しいバラードである。
私の解釈としては、子を持つ母親が、特攻隊(神風)として散った夫を思い、自らも散ったないし散ろうとする情景を歌ったとても悲しい曲なのではなかろうかと思う。Shinyaはとても美しい曲を書くし、それに応える京の詩も凄い。
7曲目、【KR】cube。メジャー7thシングル。
本作中2番目くらいにキャッチーな楽曲。KRとは、歌詞中のくるりというオノマトペのことである、それを3回繰り返すからcube(3乗)とのこと。
8曲目、Berry。薫作曲。
【KR】cubeが2番目くらいにキャッチーと書いたけれど、こっちにもキャッチーな曲あったわっていう。サビがもはやキャッチー超えて爽やかで、楽曲自体はパンクといった感じ。
でも歌詞は幼児虐待がテーマであり、更には虐待していたパパとママを○し、そして○うといった、親○し、カニバリズムを扱っているヤベー曲。
9曲目、MACABRE -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-。薫作曲。
揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹は漢文となっているため、正しい読み方は蛹ノ夢ハ揚羽ノ羽です。
個人的には中盤以降非常にプログレッシブかつ、妖しくダークであり、本作中、蛍火に並んで大好きな楽曲。演奏時間が11分近くあることもあり、聴く人は確実に選ぶだろうけれど、Dir en grey、そして本作『MACABRE』のタイトルトラックなだけあってアルバムの世界観を象徴していて、非常に素晴らしい。
歌詞の世界観は美しくもあり醜くもあり不気味でありダークである。つまり和に於ける耽美である。
10曲目、audrey。die作曲。
die作曲らしいカッティングが印象的なダンサブルな楽曲。アルバムの中では相当に聴きやすい部類。私としては逆に聴きにくい部類。
11曲目、羅刹国。
是即ち地獄也
『残-ZAN-』などに変わるライブの定番としてのスピードメタルチューン。歌詞も凄惨さを極めており、LIVEでは盛り上がること間違いなし。コーラスの凶悪さもまたいい。
礼・性・乖離・邪鬼!
己遠忘れ修羅と成り
心持つ者 全て無と成り
此れ既に時遅く
全て崩れたり
なんだかね、宮沢賢治の『春と修羅』だなって、今なんとなく思った。
12曲目、ザクロ。薫作曲。
リストカットの跡をザクロに見立てた悲しいバラード。京がかなり感情的に歌っている。上手いとか下手とかいう次元じゃないんですよね。ここまでくると。
13曲目、アルバムラストを飾るのは、8thシングル太陽の碧。薫作曲。
この曲はDirとしては非常にポップな楽曲なんだけれど、アルバムの最後に持ってこられると、聴こえ方が全然違ってくる。
ネガティブなだけじゃなくて、結局ポジティブに終わっていいんじゃないのかなと。
個人的にこの曲単体で聴いても一つも好きじゃないんですけどね。
総評
まぁしかし、1stアルバム『GAUZE』とはガラッと雰囲気の変わったアルバムである。決して一筋縄ではいかない深いアルバム。名盤だと思うけど、解りやすい内容ではないので、聴き込む必要があるかもしらん。
その分楽しめていいじゃかいか!
アルバム中のオススメ曲
2.脈、3.理由、6.蛍火、9.MACABRE -揚羽ノ羽ノ夢ハ蛹-、11.羅刹国