用意はいいですか?

では始めましょう。

賛否はあるけれど、個人的にはV系史上に於いても名盤であるDir en greyのメジャー1stアルバム『GAUZE』をドロドロな感じで語らうとか語らわないとか。


Dir en grey - GAUZE

ディル・アン・グレイ - ガーゼ

1999年7月28日リリース

オリコン5位


トラックリスト

  1. GAUZE -mode of adam-
  2. Schweinの椅子
  3. ゆらめき
  4. raison detre
  5. 304号室、白死の桜
  6. Cage
  7. 蜜と翼(罪と罰)
  8. mazohyst of decadence
  9. 予感
  10. MASK
  11. 残-ZAN-
  12. アクロの丘
  13. GAUZE -mode of eve-
赤字表記はシングル曲(シングル曲のみ全てX JAPANのYOSHIKIプロデュース)


X JAPANのYOSHIKIプロデュースにより、『ゆらめき』、『残-ZAN-』、『アクロの丘』のシングル3枚同時リリースによって衝撃のメジャーデビューを果たし、『Cage』、『予感』の2枚を経て、デビューから凡そ半年でリリースされた、今や日本が世界に誇るカテゴライズ不能かつ不要な最重要バンドであるDir en greyのメジャー1stアルバム『GAUZE』。シングル曲以外はセルフプロデュースであり、Dir en grey史上最も売れたアルバムであると同時に、初期Dir en greyの名盤であるに違いない。そう違いない。次作の『MACABRE』も名盤だけど。


曲毎の解説/レビュー

1曲目、GAUZE -mode of adam-。

アルバムの幕開けを告げるSE。金属音を背後にしたレトロでメルヘンチックな雰囲気から一転、ノイジーでインダストリアルなバンドサウンドが急に襲いかかる。


2曲目、Schwienの椅子。シュバインの椅子と読む。Die作曲。


Geist Seele Wille Zelle!

(意味:精神 意思 魂 細胞)



摂取により抗体を生じる抗原抗体反応を起こす結果、抗原となった物質に対する生体反応が変わる現象。


ということで、実質的にはアルバムのオープニングを飾るに相応しいDir en grey流の攻撃的なスピードメタルチューンと言える。ギターリフと凶悪なコーラスが印象的な楽曲。コーラスが凶悪である理由は、ボーカル京による「極悪で」とのリクエストのもと、ダイナマイト・トミー氏の知り合いのハードコア畑の人間が、複数人レコーディングに参加しているからである。

楽曲発表から数年の間はライブでも定番ソングだったらしい。当たり前。


3曲目、ゆらめき。Shinya作曲。



YOSHIKIプロデュースによる3枚同時リリースメジャーデビューシングル曲の一曲で、3枚中最もキャッチーで普遍的であろうロックチューン。非常にメロディアスであり、ギターのカッティングもベースのラインも印象的である。何より聴きやすい。メジャー進出後であると同時にYOSHIKIプロデュースであるためか、インディーズ期に比べると同じメロディアスな楽曲でもだいぶ洗礼されている印象。

作曲者であるShinyaにとっては、憧れのアーティストであり、同じドラマーでもあるYOSHIKIにプロデュース&ピアノを担当してもらったことで、非常に思い入れのある楽曲らしい。当たり前。


4曲目、raison detre。フランス語でraison d'être。違う。読み方はレーゾンデートル。日本語で存在理由という意味。ToshiyaとShinyaのリズム隊による共作。

多分アルバム中最も踊りやすい楽曲。リズム隊作曲だから?

こちらもギターのカッティングとギターソロが印象的。


5曲目、304号室、白死の桜。Die作曲。


この部屋できっと僕は一人で命無くすのだろう

誰も見つけることの出来ない花を…君へ…



京の詩集や別プロジェクトのSukekiyoの楽曲に、304号室をテーマとしているものが複数存在している為、京にとっては非常に思い入れの深い楽曲なのだろうと思われる。

楽曲と共鳴するかのようにその歌詞が儚くとても美しい。日本的な耽美の世界観がある。

楽器の演奏面に関しては、Toshiyaのベースのスラップ、Bメロのリフ、オクターブ奏法、アコースティックギター、ドラムのタム回しや金物使い、キメのフレーズなどが印象的である。


6曲目、Cage。薫作曲の4thシングル。印象的なオルゴールの音からの幕開け。



Dirの楽曲は全曲(多分)京による作詞であるが、こちらはSMや虐待をテーマとした非常に過激な歌詞となっている。(とは言え、Dir en greyの場合、色々なテーマに於いての過激な歌詞の楽曲が多数存在しているため、この曲の歌詞が特別過激というわけでもない。そしてその過激さは必ずしもただ過激に歌っているわけではなく、人や自然、社会の痛みを歌い、問題提起し、寄り添うなどといった意味がちゃんと存在する。)

ベースソロがあったりアコギが入ってきたりストリングスが入ってきたり、非常にアレンジに凝った楽曲である。


7曲目、蜜と唾。薫作曲。本来このタイトルは反転文字となっていて、罪と罰と読む。


加害者の僕から被害者の君へ


ということで、こちらも過激な歌詞でとてもセクシャルな歌詞となっています。

楽曲の方は基本的には裏ノリのスピードチューンである。ライブでは凄く盛り上がる楽曲であろう。この辺からアルバムの内容自体コアさを増していく。


8曲目、mazohyst of decadence。薫作曲。

9分24秒に及ぶアルバム中最もヤバい楽曲。シタールによるアルペジオの旋律が流れる中、聞こえてくるのは赤子の笑い声…そして泣き声…


不完全な僕は掻き落とされた

痛みが体を突き抜ける

母の泣き叫ぶ声 耳鳴りが止まない

白衣の大人達 僕を救い上げた

冷血に満ち溢れた瞳に

血塗れの右手の無い 僕が写る

そのまま黒いビニールに包まれた


と言うことで、テーマは中絶である。楽曲の方としては、勿論ドロドロしたコテ系のダークな世界観が漂っているのだけれど、そこにはドゥームメタルの重苦しさや、ブラックメタル特有、特にプリミティブブラック的な、そこはかとないうら寂しさが漂っている。個人的にはそれこそプリミティブ(根源的)に、何故か惹かれてしまう楽曲だが、楽曲の添付は自制しておきます。


本当にこれでいいんですね?

はい…

アナタは何人目ですか?

一人目です…

僕は数えきれない子供を殺しています あなたは許せますか?

…………

もう一度聞きます。本当にこれでいいんですね?

はい…

用意はいいですか?

はい…

では始めましょう。


9曲目、予感。Die作曲による5thシングル。


アップテンポなロックチューンであり、アルバム中おそらく最もメロディアスな楽曲。ゆらめきよりもメロディアスでありキャッチー。下手すりゃポップ。

ギターのアルペジオとギターソロ、そしてToshiyaの縫うようなベースラインが印象的と言うか、Toshiyaのこのベースはもはや秀逸の域である。


君の顔を見ても何も感じないよ

そうやってずっと騙されればいいさ

僕の昔の傷に比べれば


10曲目、MASK。薫作曲。


非常に扇情的な楽曲であり、LIVEでは盛り上がること間違いなしであろう。


右目 左目 右手 左手 右足 左足 「クビ」

骨 汗 涙 血液 呼吸 神経 脳も 「ズタズタ」


11曲目、残-ZAN-。薫作曲。

メジャーデビューシングル3枚同時リリースのうちの一曲で、3曲の中で最もヤベー楽曲。黒夢の『親愛なるDEATH MASK』、Laputaの『罠』などに通ずるものがある。

この曲をエンディングテーマにしていた『人気者でいこう!』という番組があるらしい。(というかあった。)


この曲をMステでやった際には、無事テレビ局に苦情が殺到。箔がついてええんとちゃうのん。

尚、個人的にこの楽曲は、どちらかと言うとハードコアスタイルのオリジナルのミスクスチャーバンドをやっていた時、V系じゃなかったけどV系イベントに出演した際、SEも何もなしで、いきなり1曲目で二回ほどカヴァーを演奏した。このバンドの頃。↓





無事、V系バンド目的で来場していて、私たちの出番の頃にはロビーに捌けていたバンギャ共をフロアに引き戻し、そのまんま固定客として釣りまくったりましたわ。

流石のオレ様、恐るべきプロデュース力。そして演奏力。楽曲のクオリティ。さらにはV系バンドを蹴散らしてしまうルック以下略


12曲目、アクロの丘。薫作曲。

メジャーデビューシングル3枚同時リリースのうちの一曲で、長尺で壮大なバラードである。


アクロとはアクロポリスのことでありますが、この曲はこの曲で個人的には思い入れがあります。

中3の時、3年生を送る会で演奏したのがこのアクロの丘である。

出演の仕方も特殊で、私はその素行の悪さ故に(←)、三年生を送る会への出演が禁じられていたのだけれど、本来この曲で出演する予定だったバンドのギタリストが、本番二日くらい前になっても弾けないということで私の方に打診があり、教師側もみにゃおんが間に合うなら出てもいいということで、打診されたその日のうちに速攻でコピーして、その日のうちにスタジオに入って、無事3年生を送る会への出演を果たした、そして私は大勢の前での演奏は初めてだったという記念すべき楽曲。流石はオレ。天才。天才がすぎる。


じゃなくて、こんなもんを何日もあって弾けない方がどうかしているという話である。って言うたらしばかれますか?しばき返しますよ?


あの場所で君と出逢い

すべては始まる

今では何も出来ない

この街で君と出逢い

今では誰も愛せない 君と二人で

また またあの丘へ


13曲目、GAUZE -mode of eve-

mode of adamのような金属音の中で、このアルバムは呆気なく終了する。


『GAUZE』の総評

シングル曲が多いのもあるけど、良曲揃いで素晴らしいアルバムであり、所謂V系とカテゴライズされるバンドのアルバムとしては名盤であると言えると思います。ヤベー曲はヤベーし、その極端さもまたいい。

アルバムの世界観に倣ってドロドロとしたレビューをするつもりだったけれど、なんか自主規制をしようとする自分が出てしまった…


優しいから。



オススメの曲

2.Schweinの椅子、3.ゆらめき、5.304号室、白死の桜、6.Cage、8.mazohyst of decadences(色々ヤバいのでマニア向け)、9.予感、11.残-ZAN-(そこそこヤバいけど序の口)