私が戻って来た時にもり立てておくよ…と言って、新しいポジションのオファーを断ったKさんですが、その後も次々といろんな所からオファーが入ってくる様になりました。
「Kさんが冷や飯を食っている」と言う情報が周りに知られる様になっていったからです。
一方、Kさん自身が留まって仕事をしようとしている方にも限界が見えて来ていました。Kさんが所属している所の上司はLさんの上司にべったりとくっついていれば生き延びられると言う信念で動いている人だったのです。信念とは言えないかもしれません。単なるコバンザメですから。Lさんの上司ににらまれたKさんを快く思う筈もなく、Kさんが建設的な提案をしても、その提案の内容すら吟味出来ず塩漬けにしたのでした。
そして、ある時他のビジネスの海外推進部の話がKさんの所にやってきたのです。Kさんは私と一緒に仕事をする中で日本だけに小さく縮こまっているより、外と繋がることを覚えました。ゆくゆくはそういう仕事をしてみたい…と思っていたのです。
そういうことから、この話はパスするには惜しいものでした。
私はKさんから、その仕事の打診があった時、Kさんはそちらに移るべきだと思いました。そして、「他にも候補がいるんだけどね」とKさんは言いましたが、私は彼が最終候補になると直感しました。
「最終候補になってオファーもらうと思うよ。その時は承諾しなよ」
私はそうKさんに言ったのでした。
Kさんは、その海外推進部の仕事が5年も10年もやって行く様なポジションではない…と言いました。
「だから、戻って来た時にきちんとした経験を積むことが出来ていて、それで一緒に仕事をする時もっと出来る奴になっていられると思うんだ」
Kさんは自分のグループを作ってしまうとそれを捨てて行くのは心苦しいと思っているのです。この海外推進部の仕事はどちらかと言うと一匹狼的な動きをする仕事です。それもKさんの考えの中にありました。
こうしてKさんは私の予想通り海外推進部の仕事を得て、一緒に働いた部門を去っていきました。私は本当に良かったと思っています。

