大河ドラマ『光る君へ』でも描かれた道長と伊周の競射を『大鏡』より
不遇の道長、憂さを晴らすかのように伊周を競射で圧倒⁉
(NHK大河ドラマ『光る君へ』で、競射する道長と伊周(C)NHK)
不遇時の道長、競射で政敵伊周を圧倒する
大河ドラマ『光る君へ』の第15回「おごれる者たち」で描かれている道長と伊周の競射の『大鏡』の記述についてです。
『大鏡』の著者によると、世の中の光明のようである道長公も、一年ばかり逆境のときがあり、伊周の下位にあって悶々の思いであったそうです。大河の出世欲や政権欲のない道長という描かれ方とは異なる道長像です。
ただ、そんな逆境の悶々とした中でも、朝廷の政務や儀式だけは、伊周の下位にある者として身分に応じた振舞をし、時刻を間違えることもなくちゃんとお勤めを果たされたそうです。
弓の競射については、伊周が父で関白の道隆の二条の邸で人々を集めて行っていたところ、突然その場に道長が現れたそうです(大河では、道隆が道長を連れてきた感じだったような)。
道隆は、「これは思いもかけないこと、いぶかしいことだ」と思われたそうです。
(NHK大河ドラマ『光る君へ』で、競射する道長と伊周(C)NHK)
先に下位の道長が、次に伊周の順で競射が行われ、勝負は道長が勝ったので、道隆らが延長戦をさせることにします。それに不愉快になった道長が
「この道長の家門から天皇・后がお立ちになる運勢があるなら、この矢は的中せよ」と仰って矢を放たれましたところ、真ん中に的中します。次に伊周ですが、大変気後れして手も震えて、的どころか見当違いの所を射てしまいます。伊周の父道隆も顔色が真っ青になってしまいます。
つづいて、道長が
「この自分が摂政・関白の職につく運命にあるならば、この矢を的中させよ」と仰って矢を放つと、先ほどと同じように的中します。
道隆公は、伊周に矢を射させるのをお止めになり、すっかり座が白けてしまいます。
というエピソードが記録されています。
大河では、伊周の挑発的態度に大人げなく、競射に応じて、宣言しながら矢を放った道長という描かれ方ですが、大鏡では自ら伊周の下に乗り込んで競射を行い、周りは伊周父の道隆の取り巻きだらけの中で道隆にもその剛毅なところを見せつけたという描かれ方になっているのが違うところです。
大河ドラマ『光る君へ』での道長と伊周の競射の回はこちら