#338 本レビュー『新版 平家物語(四)』訳 杉本圭三郎 ~とにかく読了 日本の古典~ | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

歴史をもっと知りたい!
本を読めば広がる光と闇を楽しんでいます。
歴史と読書記録。積読などをアップしながら、日本史や世界史を問わず歴史の考察などを発信します。

2023年の読書活動テーマ ”とにかく読了 日本の古典『新版 平家物語(四) 全訳注 (講談社学術文庫)』を読み終えました。

確かに平家一門は消えたが、源氏方も消えてゆく
"盛者必衰の理"

「驕れるものは久しからず 盛者必衰の理」が平氏にしろ、源氏にしろ関係なく適用されていく”法則”のような存在として首尾一貫して表され続ける物語

 

巻4は、ついに最終巻です。

  本書について

●『平家物語』に登場する清盛一門を中心とした家系図

(各種資料から作成)

巻4では、平清盛により繁栄の頂点を極めた平氏が、清盛の驕り高ぶりによる悪行から、ついには、清盛の一門に連なるものたちのほとんどが討ち死、自死、処刑などで消えてしまいます。
 
平家の清盛一門のほぼ滅亡により、”盛者必衰”を長大な物語で表現されています。
しかし、この”盛者必衰”は平家だけに当てはまるものではありません。これは法則だからです。この物語では平家打倒で活躍した源義経や源行家だけでなく、源範頼も・・・
源範頼は、本来なら義経を死に追いやった奥州藤原氏の征伐にも参戦し、曽我兄弟の仇討の混乱の中での振舞から頼朝に疑いをかけられ伊豆に幽閉されて死去ですが、『平家物語』では、頼朝のキャラ設定の効果と、法則としての”盛者必衰”の証明のために、京にいて後白河法皇に取り込まれたと思われる源義経を討伐しようとする頼朝の命令を辞退し続けた結果、頼朝に疑われて死ぬことになります。
 
先に、源氏のことを書きましたが、屋島の戦いから壇ノ浦の戦いと、源義経によって平家一門は次々に死んでいくことになります。
主だったものたちの最期は、それぞれしっかりと章立てされて、その最期っぷりが劇的に描かれています。

 

小ネタ 頼朝と父、義朝の頭蓋骨

2022年のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』でも、頼朝の挙兵を求めるものとして荒法師文覚が頼朝に届けた亡き父、義朝の頭蓋骨について、この最終巻でも登場します。最初に文覚が見せたものは偽物で、実際には本物が別の所にあり、それを知っているものと文覚が再度、本物として見せるエピソードが描かれていました。

 

『平家物語』の頼朝は、正直かなり印象に残らない方です。義経や範頼などの一族に冷淡で、そして自分は平家に命を助けられたものを、平家嫡流の根絶やしについては徹底的に行おうとします。それくらいのことしかなくて、この物語だけで判断すれば、ちっとも魅力的ではなく、あまり人間味も感じない方のようなキャラ設定になっています。

 

  灌頂巻の存在について

『平家物語』については、様々な形態の本が存在するそうで、物語の最後の締めを平家の清盛一門の嫡流の維盛の息子六代(平家隆盛の基礎を築く清盛の祖父の正盛から数えて六代目)が処刑されて終わるものと、この本のようにその後の「灌頂巻」で終わるものとに分かれるそうです。

 

「灌頂巻」は、壇ノ浦の戦いで一門の大半が亡くなり、自らも壇ノ浦に身投げするも源氏のものによって救われてしまった建礼門院徳子(清盛の娘、高倉天皇の后、安徳天皇の生母)が、尼となり往生を遂げるためにひっそりと大原に籠っているところに、後白河法皇が訪ねてきてその法皇に自らも味わった平家一門の繁栄から滅亡の流れを仏道の六道(天道・人間道・畜生道・餓鬼道・地獄道)になぞらえて語るものです。

 

平家一門の滅亡だけが主題の物語なら、平家一門直系の六代が処刑されて終わりでいいと思いますが、法則としての”盛者必衰”を表すためという点や、悲劇重なる平家のその鎮魂の効果からもこの巻の存在は私は重要だと思いました。

 

この巻の往生を願い、六道に例えながら達観したように語る建礼門院徳子の存在、そしてついに往生を遂げる徳子、悲劇だけで終わらない鎮魂の締めを味わうことができ、単なる軍記物ではない物語の完成を見た気がします。
 

 

 

 

『平家物語』を読むときの辞典的な1冊

 

『平家物語』を絵巻物で雅なビジュアルで楽しむ1冊

 

<書籍データ>

『平家物語(四)

訳 者:杉本 圭三郎

発 行:株式会社講談社

価 格:1,850円(税別)

 2017年7月9日 第10刷発行   

 講談社学術文庫2423

 

 
 
 
 
 

 

 

 

 

 

にほんブログ村 にほんブログ村へ
にほんブログ村