米不足と価格高騰 不正追及の動き | 知りたがりな日本人のブログ@インドネシア

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日本語では検索できないインドネシア国内の話題を、雑談に使えるレベルで解説。

コンテナから直接、安い米を買うために、押し合い圧し合い道路いっぱいの人々、長時間人ごみの中で耐えきれずに気絶して運ばれる人も出ている。安いといっても5kgで5万ルピア、値上がりする前の値段。コメの価格は8月ごろから上がり始め、5~8割も上昇している。

#Warga lera anteri demi beli beras

 

このタイミングで、3月からは、電気代の値上がりも発表された。スリムルヤニ財務大臣が、コメ価格の高騰に続いてインフレが懸念されることについて語っていたが、このことか。もうすぐ国民の大多数を占めるイスラム教徒が断食期間、米だけでなく、食用油、肉や卵香味料などの値段がもっとも上昇する時期でもあるが、一体どうなるのか。

 

(電気代だけなのかと思ったら、燃料費も高速料金も3月から値上げするという。前々から決まっていたのに投票日を過ぎて、直前ぎりぎりで告知するところが、腹立たしい。)

 

”エルニーニョ現象の影響、我が国だけでなく世界中どこでも米が不足している”今更のようなジョコウィ大統領のこのような説明は全く説得力がない。不足することが分かっていたのならなおさら、貧困者支援物資と称して、特定の候補者を選挙で勝たせるために、お米をじゃんじゃんバリバリ放出し続けてきたのか、辻褄が合わない。

#Pemerintah Import beras dari thailand
 

食料調達庁の倉庫によると、在庫は十分にあるそうだ。市場では品切れになっている。疑われているのは、国有企業Bulogがわざと出し惜しみして、政府が配る米のありがたみを演出しようとしているのではないか、又は政府が、国内農業保護のために制限されている米輸入の枠を広げて企業家が利益を得るため意図的に騒動を演出しているのではないかという専門家の推測もある。

 

米がないないと言いつつ、輸入米は既に到着しているが、市場に出回らずに政治的目的のために備蓄されているという話もある。投票日はもう過ぎている。二回目の投票があるかもしれないことを予測しているのか、それとも別の目的があるのか、政府と政党はこぞって米をため込んでいる。

 

今回の選挙のために放出された、貧困者支援予算がいかにえげつないものだったかということは投票日3日前に公開された暴露動画Dirty voteの中でも数字が言及されている。2023年は476兆ルピア、2024年には496 兆ルピア、そして2023年分は11月12月に、2024年分は1月2月の投票日前を狙って、一斉に集中して放出された。

 

前回2019年の選挙の時点では300兆ルピア、パンデミックのあった2020年に400兆ルピア台に増加した後もずっと維持され続け、500兆ルピア台に近づこうとしている。” 実は、2023年11月の時点で社会福祉省の貧困者支援予算は既に終了していたが、大統領の指示のもと各省庁の未使用の予算から5%ずつ強制的に集めて、貧困者支援予算が追加されたという。

 

大統領が独断で予算を変更することは重大な違反。勿論、貧困者向け支援物資を選挙のために使うことも明らかな違反。さらに失業者・貧困者支援のための社会福祉プログラムの実施は、不正防止のためのSOPに従って社会福祉省の責任で実施することになっているが、この時期の配給は社会福祉省を通さずに実施された。これも違反。

 

元スラバヤ市長時代から汚職に厳しいことで有名な社会福祉大臣リスマ氏と、もう一人の忠実な女性大臣、(法律違反の予算の捻出を強要された)スリムルヤニ財務大臣、この二人が辞任したがっていると噂されている背景がこれ。スリムルヤ二大臣は、ジョコウィ政権の財政管理の大黒柱であり、彼女が辞任することになれば多大な影響があるだろうと言われている。

 

”勝敗は国会でなく、憲法裁判所に訴えるべき” プラボウォ組の議員らは国会質疑権の行使を断固拒否することを表明している。しかし、質疑権の行使は、選挙の結果を覆す目的ではなく、行政組織や警察、裁判所、選挙運営組織が、選挙に関与する組織的な違反がなかったかどうかどうかを追及するためのもの。

 

”違反していなら別に恐れる必要がないはず” アニス組・ガンジャル組(不正追及派)の支持政党を合わせれば、現国会の過半数の議席を占めており、国会議長は闘争民主党の党首であるメガワティ大統領の娘プアン氏なのだから、優利な条件はそろっている。

 

問題なのは彼らが、所属政党の党首よりも、実際の強い影響力を持つ親分、ジョコウィ大統領を退陣に追い込むまで、一致団結することが出来るかどうかというところ。メガワティ元大統領、スルヤパロー氏、ムハイミン氏、ユスフカラ氏、各党の党首・大御所らは、現在までのところ共同で不正を追及することで一致しているが、質疑権の行使を阻止するための議員個人への働きかけや利害関係の駆け引きは苛烈さを増すだろう。また、政党内部の分裂が扇動される危険もある。

 

一方で、ジョコウィ大統領は、大臣の入れ替えを行い、1月末で辞任したマフッド調整大臣の後任として国土計画農業大臣を就任させ、その空席になった国土計画農業大臣の席を、ユドヨノ元大統領の長男AHY氏に与えた。2017年までエリート軍人、行政経験はまだゼロ。45歳。元大統領の息子というだけの民主党の党首。

 

AHY氏の民主党は、9年間も野党側で政権批判をしてきた。(父親のユドヨノ元大統領も2023年にジョコウィ大統領が次政権・2024年大統領選に関与しようとしていることを批判した本を出版している)特に政府主導の大農場政策(フードエステート)について批判してきたが、就任演説では早速これまでの発言を覆している。

 

農業大臣という地位は土地所有承認がなされないままになっている零細農主に土地所有証明書を発行して、自ら手渡すという見せ場がある美味しい地位。残りたった8ヶ月あまりの任期とはいえ、やっと得ることができた政治的経歴にAHY氏は、ホクホクで喜んでいるが、これも質疑権を行使された場合の対策として体制を固めるためのずる賢い駒の一つに過ぎない。

 

投票日翌日にクイックカウントに基づいて、早々に勝利宣言しているプラボウォ・ギブラン(大統領の息子)組は、組閣の話だの、敵対候補を連立に誘う話だの、昼食無料配布のための新しい省を新設するだのと、当選確定を前提に相変わらずのやりたい放題。メディアもそれをただ垂れ流しし、誰も信用していないリアルカウントの数値を表示して、当選確実のムードを盛り上げようとしている。

 

国会議員よりも、このような事態を深刻に受け止めているのは、学識者や退役軍人らのフォーラム。ジョコウィ大統領の辞任と、倫理違反のギブラン候補を失格とすること、選挙運営者を入れ替えた上での再選挙を求める署名を提出した。

 

また、汚職監視非政府組織(ICW)は、問題の集計システム購入の予算と明細についての情報公開及び、全国各地の開票集計スタッフが作業中に病気で倒れ、数千人が病気療養中、うち数十名以上の死者がでていること(前回の選挙時からの改善が図られていない)についての責任について追及する要請を汚職撲滅委員会に提出した。

 

そして国家人権委員会(Komnas ham)からも、特定の候補者に投票するよう国家機関や地方行政機関からの組織的な働きかけや、村長らを通した賄賂の贈与があったこと、多くの病院や刑務所などに投票所が設けられず投票の権利が奪われたことについての報告が行われている。

 

国会質疑が実現されれば、間違いなく否定しようのない証拠が揃っている。あとは馬を馬と呼ぶか鹿と呼ぶのかを観察するばかり。議員のだれとだれが食事をしたとか党首が大統領に呼ばれたとか、そういった報道にあまり一喜一憂することなく、次の経過を待ちたいと思う。