インドネシア大統領選挙結果 もはや世界共通の話題 | 知りたがりな日本人のブログ@インドネシア

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日本語では検索できないインドネシア国内の話題を、雑談に使えるレベルで解説。

”人間だから間違いがある。申し訳ない。責任をもってやり遂げる”と謝るだけで、決して解任されない選挙管理委員長。”ここまでセッティングされていれば、後は恥を我慢することさえできれば勝てる” これは投票日直前に公開された暴露映画の教授の言葉だが、2月14日の投票日以降、実際その通りに進行している。

 

当日のクイックカウントは、投票日前のリサーチ結果を貼り付けしたようなものだった。(リサーチ機関は全てプラボウォ組のコンサルタントも兼ねている)今回初めて採用されたというリアルカウントのためのSilekapというアプリは当日からサーバーダウンで使用できず、回復した翌日みてみれば、やはりクイックカウントとほぼ同じ比率。カーブもなければ接戦も追い上げもない不自然な進捗。

 

このアプリ、承認したのは情報通信大臣だけ、テンダーなし、検証なし、投票日前日のテストでは特定の候補者に票数が自動的に移動するエラーが報告されたが、何の改善も図られずそのまま使用が強硬された。そしてそのIPアドレス番号から、シンガポールのアリババのサーバーに接続していることがIT専門家らによって指摘される。(その後フランスと中国にも接続していることも判明)


また、投票者数以上の票数が入力されてもエラーにならないという致命的な弱点があり、特定の候補者だけに、桁違いな数値が入力されていることが次々と発覚して大混乱。選挙管理委員長は、これを入力ミスと説明している。集投票用紙自体に署名がないのですり替えられてもチェックすることは難しく、どれだけ予備が印刷されていたかも不明。現場の倫理観に大きく依存する方式だ。

 

一回戦で勝利するための50%を目指して、候補者の地元も地盤も支持層も全く無視してブルドーザーの勢いで全勝している。接戦になるリスクを避けるためなのか、差が開きすぎて不自然であること極まりない。集会がガラガラでも、討論会でブーイングされても、票には影響のないことを証明したなどと、この時点で勝因敗因分析など聞いてもまったく意味がない。

 

選挙管理委員会前と選挙監視委員会の建物の前でデモが始まっている。リアルカウントの中止と独立機関によるシステムの監査、選挙管理委員長と監視委員長の解任、再選挙が求められている。鉄柵の前でタイヤを焼いたりしてそれでも、2019年の大統領選でプラボウォ氏が負けたときのデモよりはずっと穏やかだ。

 

当時の訴訟では、コンテナー車何台分もの証拠が運び込まれたが結局不正を証明することができなかった。アニス組、ガンジャル組も、訴訟を起こす準備をしているとのこと、一方で国会での質問権も請求している。ガンジャル候補の支持政党党首メガワティ元大統領の娘プアン氏が国会議長ということは有利に働くはずだが、果たしてどうだろうか。

 

リアルカウントは3月に結果が出ることになっている。前例的にはいくらクイックカウントで勝っているからといっても、早々に勝利宣言などせず”正式な結果を待ちます”と答えるのが礼儀というものであるが、プラボウォ組は、投票日の翌日、スナヤン競技場で勝利大集会を開催(勝利することが分かっていた?)し、亡き父(スカルノ大統領時代に汚職を追及され海外逃亡、スハルト政権で大臣に返り咲いた)への墓参り、両陣営に対する連立の交渉の伺い(ジョコウィ大統領を使って)

 

各国首脳からのお祝いが次々届いているというプラボウォ氏の満面の笑顔の写真、見たくもないが、ロシアのプーチン大統領からは祝福の連絡を受け、米国バイデン大統領からは批判を受けているというのは興味深い。米国が支持していたのはアニス組だからそれも当然だろう。プラボウォ組の支持者らがこぞってこれまでどこの国と蜜月で鉱山開発をすすめてきたかを考えると、その背景は、あまりにもわかりやすい。

 

”アニス組の支持者の言うことなんか信じない” 投票日の直前で公開された暴露映画”Dirty vote”は、出演者の教授が三人ともアニス組の支持者だということで、ジョコウィ信者の感情が逆なでされ、プラボウォ組に有利に働いたというきらいも確かにあった。

 

特にジャカルタ市民にとって、ジョコウィ・アホック州知事時代に始められた改革が、2017年、アニス氏が州知事になった途端に次々と変えられ、身内優先、汚職蔓延の不透明な政治に逆戻りしてしまった苦い経験は忘れられない傷がある。

 

ジョコウィ信者は、メガワティ党首がジョコウィ大統領を一介の党員扱いして尊敬しないから仲が悪くなったのだという論調に誘導されて、ジョコウィ政権の負の部分だけを継承する羊の皮を被った狼にドアを開け放していることに気付こうとしない。

 

2020年の米国大統領選挙での不正とその後の言論統制や政権による法的復讐を思うと不安で仕方ない。こういうやり方で勝ったひとが権限を握った後にどんなことをするのか、もはや世界共通の話題。それであっても”無駄な努力はない”というガンジャル氏も言っているとおり、スハルト政権時代に拉致されて未だに行方不明のご家族の方々の身の安全のため、自慢の土地を取り上げられて命がけの工場労働を強いられている人々の権利のため、こんないい加減な選挙の集計のために突然死(死因が謎、現在三千人が入院中。疲労が原因というのは本当か?)した何十人もの集計スタッフのため、改善のため働く意志のある人が権限を握れるよう、奇跡が起こることを祈り続けたいと思う。

 

アニス組支持者の作った映画なんてジョコウィ大統領を貶めるための誹謗中傷にすぎないから本気にするべきじゃない、と言われても、わたしは、あの暴露映画が真実であると信じる。その理由、腑に落ちると思う点を書いておく。

  • 州・市・村の選挙を、わざわざ同日開催にする本当の目的が、経費節約のためだというのは何かおかしいなと思っていた。(大統領選挙の時点で大統領直接の配下にある人材を配置するためというのは非常に腑に落ちる)
  • ジョコウィ政権で現職大臣が何人も汚職で逮捕されたが、重大な疑惑あっても全く追及されていない大臣勢がいること。(汚職撲滅委員会の捜査を止めさせる大統領の権限を密かに法律化していたこと)
  • 2023年貧困者救援物資560兆ルピア(新首都移転予算は446兆ルピア)が選挙期間に集中して配られている事実。貧困者支援と直接何の関係ない大臣や大統領自らの言い訳も意味不明(選挙のために集められている影響で、一般向け米の価格が上昇しているのも腹立たしい)
  • 大臣は日常的に地方政府とコミュニケーションをとる立場にあり、予算の配分などをたてにとって選挙での支持を強制することが可能であることから、選挙運動に関わるなら休職しなければならない約束になっているが、ジョコウィ大統領によってそのルールが破られたこと。
  • この時期の村長の任期延長を求めるデモの横暴な要求が、あっさりと認められたこと。集計スタッフのリクルートは村長の仕事であること。
  • 憲法裁判所が大統領の息子が出馬できるように年齢制限を変更したプロセスは明らかにおかしいこと。
  • 選挙管理委員会・監視委員会の度重なる違反が放置されていること。大統領直々の発表による直前のあらゆるインセンティブアップがあったこと。

これだけの暴露は、相当なリスクを伴うものだから個人では決して出来ないことだと思う。ましてやただの純粋な善意に基づくものだけなら、逮捕されて終わってしまう。この暴露をやりたくてアニス側についているということだってありえるかもしれない。

 

最後にもう一つ、プラボウォ組とガンジャル組の政策は似たようなものと伝えられているが、5回の公開討論会を全て視聴した一人として、これを否定しておきたい。プラボウォ組のいう国民向けの政策はガンジャル組からコピー貼り付けしたもので、本気でやるつもりがあるかどうかは定かでない。看板政策の”昼食無料配布プログラム”でさえ、今になってはじめて低所得者向け補助金付燃料・ガスの補助金をカットして資金に充てる言いだしたくらいだ。

 

公開討論会の結果からはっきりしていることは、さらなるヒリリサシ(森林破壊・鉱山開発と大規模農園の利権拡大)そしてヌサンタラ新首都移転。当初は外資をよんで国家予算は注入しないということになっていたが、実は外資は全く集まっていない。そこで、仲良しグループが地元住民から二束三文で取り上げて地上げ済みの土地を、国家予算が買い上げることの方は実現するに違いない。お金の力は恐ろしい。

 

ちょっとおしゃべりが過ぎたかな。
選挙の話はこれで一旦終わりにします。


 

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