暴走止まらぬ票集計システム | 知りたがりな日本人のブログ@インドネシア

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投票が済めば即日当選者が確定する日本の選挙と違って、こちらの選挙は確定が出るまで一カ月あまりかかる。全国8万2千の各投票所の結果は、監視委員会や各政党の立会人によって署名された後、責任者のスマホから数値と署名入り集計用紙のスキャンがアップロードされる。

 

不服があれば立会人は署名を拒否することが出来、そのような問題点は、村・町、郡・区、県・市、州レベルへと更に上の段階の確認会に上げられる。各投票所の結果は選挙運営委員会のウェブサイトで公開されており、市民による監視も呼びかけられている。

 

今回の選挙では、投票日当日のサーバーダウンに始まり、特定の候補者だけに5桁も4桁も違う異常な数値が発見されていることが問題になっているが、そのような異常が発見されるのもこのような市民による監視機能のお陰。

 

しかし今回の選挙ではこれまでのこのようなフローさえも揺らいでいる。通報に基づいて数値が修正されたとしても、また新しい異常値が発見されるの繰り返し。この問題についてとある大学教授の分析 ”一つの値を修正すれば、グループ内の別の値に計算式が働いて、全体の割合が常に維持される設定になっている”という説が現状、最も支持されている。

 

その説が支持されるに伴って、掘り返された過去の映像、投票日の一カ月以上も前の1月5日、リサーチ機関インドバロメータの設立者コダリ氏(会社説明には独立調査機関と書いてある)がプラボウォ組のポスターが掲げられた何等かのセミナーで、27%、58%、17%、という数字を発表し、出席者に拍手を促し笑っていた。

#Qodari Aktor konspirasi pilpres

 

これらの比率は、奇しくも現在のリアルカウントが維持している三候補者の得票率とぴったり同じ。しかしそのあたりら、毎日のように拡散されていた異常値の通報ツイートを見かけなくなった。シンガポールにあったと大騒ぎになったサーバーも、深夜こっそり国内に運び込まれたと言われているが、これもどうなっているのか不明。選挙運営委員会はシステムは改善したと説明するが、何処が改善されたのかも不明。

 

マークアップのための票集計システムを、マークアップ価格で購入したからこんなことになったのだろうか、または最高権力者がバックについているせいで大胆になりすぎたのか。それとも欲望を盛り込み過ぎたのか。結構な予算を費やしたというがその甲斐もなく、このシステム、信頼度の面からも既にもう崩壊している。

 

折しも選挙運営委員長が、倫理委員会からまたしても制裁を受けたが、理由は投票者名簿の漏洩だった(システムのことじゃなかった)。彼は先月も重大な違反で、最終通告を受けていたので今度こそ辞任のはずだけれど、やはり今回も戒告だけ。こうやって違反が分かり切っているのに、何も対処せずに進んできたことが更に大きな問題を生んでいる。
#Lagi ketua KPU Melanggar Kode Etik

 

両陣営はこの票集計システムによる大統領選挙の結果を拒否すると表明し、フォレンジック調査を要請してはいるが、選挙管理委員会は、システムは結果を確定するためのものではないから問題ないなどと言訳して、止める気はなさそうだ。不正追及のデモが増々大きくなるのも荒れるのも無理はない。

 

粗雑でずるいやり方に対する怒り、大統領選結果の方にばかり関心が集まっている間に、この票集計システム、今度は国会議員の集票結果についても怪しげな動きを始めた。得票率最小限4%をとれない政党は国会に議席を持てないルールになっているが、数党のうちの二つが、二時間の間にそれぞれ、1.9万票、1.5万票の大幅ジャンプ。

#Partai salah input

 

1.9万票ジャンプしたのは、ジョコウィ大統領の次男まだ29歳、政界未経験のカエサン氏が昨年末に、入党と同時に党首に就任した赤い薔薇がシンボルの政党。元々はクリーンなイメージの若者世代の党だったが、今回の総選挙から方針をガラっと変えてプラボウォ支持派の急先鋒に転向した。

 

小政党の割に、カエサン氏の顔の大型看板への資金のつぎ込み方が尋常でなかった。それは、あまりにも看板が多すぎて、もうあの顔を見たくないという人が続出するほど。不正反対と大統領辞任要求を掲げたデモは、真っ先にこの大ポスター看板を破ることから始まった。

#Baliho Kaesang muak

 

加えて、その活動資金の報告も曖昧ということや、何かというとすぐ訴える女性幹部への嫌気も加わり、大統領直々の特別チームがバックアップしていたという割にはあまり票が伸びず、4%達成はまず無理だろうといわれていた矢先での大躍進。

#Polemik kenaikan Suara PSI 


弱小政党グループは一つの政党がジャンプすれば、他の政党に大きく影響する。早速、敵対陣営の調査により、各集計所の白票がそっくりそのまま移し替えられていたことが暴露された。そこで注目されているのが、システム内の数値を自由に操作できる機能がついている可能性だ。

 

そして先日、選挙運営委員会は、票集計システムのグラフでまとめられたページを非表示にしてしまった。現在、ウェブで閲覧することが出来るのは、手書きのフォームだけ。それでもシステムを使った集計は続行するという。

#Grafik di sirekap dihilangkan 

 

こうなると、国会での質疑権行使がいつ始まるのか増々気になるところ。5日に選挙後最初の国会が開始されたが、何人かの議員が質疑権を求める発言をおこなったが、各政党の態度がはっきりしない、出席率も半分程度、国会議長のプアン氏がフランスに出張中で欠席したというのももやもやする。

 

議長を務めた副議長のダスコ氏は、グリンドラ党(プラボウォ氏が党首の党)で、質疑権行使に大反対の立場だ。初日会議で、まだ発言中の議員の話が長いからと、注意するでもなくマイクを勝手にミュートにしてしまったという議長らしからぬ態度。

#Mic Aria Bima dimatikan Sufmi Dasco 

 

そんな中ガンジャル候補が、汚職撲滅委員会に訴えられたというニュース。質疑権の言い出しっぺのくせにといった論調で報道されているが、まだ訴えられたというだけの段階だ。訴えた人物というのが、薔薇マークの政党のメンバーだときけば、質疑権行使反対活動の一つか、売名行為(ボゴールの市長選挙に出馬したいらしい)のにおいもするが。

#Pengurus PSI raporkan Ganjar ke KPK

 

こういう重要人物への個人的な攻撃は、質疑権の行使を今か今かと待ってる側を動揺させるためのものでしかない。国会開催期間は四月のはじめまで。その間に選挙運営委員会による最終結果の発表もあることだし、あまり動揺しないようにウォッチしていきたい。

 

 

 

アメリカの植民地時代、豚の塩漬けを配るだけで得票率が確実に上がるとかで、

政治家がこぞって樽入りの豚の塩漬けを買いあさったという逸話があります。