金、銀が再び上昇始まる
NY市場で貴金属の価格が上昇している。
12月6日のNY市場では、金現物価格は1427ドルで史上最高値を更新し、銀も30年ぶりの高値水準30.28ドルを
付けた。米国の追加金融緩和で投機マネーが流れ込んでいるほか、欧州の財政問題による「通貨不安」の影響
もあった。将来のインフレ警戒感から実物資産の裏付けのある貴金属への資金流入は当面続くとの見方が出て
いる。そのほか、実需の回復期待も相場を押し上げている。特に足元の新年相場で、中国、インドなどの宝飾品
需要からの金買いが一層強まる。
金価格は11月中旬以降に調整に入って、一時1320ドル台まで下落した、中国の利上げ懸念とユーロ圏の財政
問題が再燃したことで、経済の先行き不透明感が強まり、利益確定の動きが優勢となった。ただ、ユーロ圏の財
政問題は信用リスクのない「代替通貨」として金の重要を増やす面もある。通貨不安を背景に、いったん売られ
ても再び買いが入りやすい、貴金属はしばらく高値を試す展開と予想される。
Robin
米国金融業界の変遷
前回のNYダウのコラムはいかがでしたでしょうか?本日はゴールドマンサックスや80年代から現在までの米国の金融について書いてみたいと思いますので、お付き合い頂ければと思います。
サブプライムが起きる前までは、ウォールストリート(米国証券業界)は5大投資銀行が大きなウェートを占めていました。この5社とはゴールドマンサックス(以下GS)、モルガンスタンレー(以下MS)、メリルリンチ、リーマンブラザーズ、ベアスターンズを指します。この5社に商業銀行で米国大手のシティグループ、JPモルガンチェース、バンクオブアメリカ(以下バンカメ)を加えた8社は別名バルジブランケットと呼ばれていました。
まず、この8社をグループ分けしてみたいと思います。最初の5社は日本でいうところの証券会社のカテゴリーに属し、後半の3社は銀行セクターに分類できます。ここで最初の5社を、もう少し細かく分類してみたいと思います。もともとGSとMSの2社は投資銀行業務がメインの会社であるのに対して、メリルリンチ、リーマンブラザーズ、ベアスターンズは株式のブローカレッジが母体の会社であることです。
投資銀行は仲介手数料業務で、企業の財務全般のアドバイスを担当したり、ファイナンスのために引受先となる投資家を確保したりするなど、伝統的な良質な顧客とのリレーションシップ関係に基づいた業務です。一方で、株式ブローカレッジは自身のキャピタルをかけて相場を張り、そのポジションを様々な投資家に販売していく業務です。このように5大投資銀行でも、二つの系統がありました。
投資銀行業務は顧客とのリレーションシップ関係に基づいて行われる業務であるがゆえに、ある意味で非常に閉鎖的な世界ともいえます。GE(ゼネラルエレクトリック)やGM(ゼネラルモーター)などは重要なファイナンスではGSかMSの2社にしか案件を下さなかったそうです。つまり一旦食い込んでしまえば、長期にわたって安定的な収益の見込める事業ともいえます。
ところが80年代に、この世界に風穴を開けた会社がありました。それはソロモンブラザーズという会社です。この会社は今では当たり前の2ウェイプライスというシステムを初めて債券の流通市場に導入した会社であり、また社債引受業務において、自社で発行企業の社債を一旦引き受け、その後、さまざまな投資家に販売していく手法を導入しました。
伝統的な手法では、社債引き受けは販売先を100%決めてから引き受けるのに対して、ソロモンの手法では、自社で一旦抱え込んでから、販売していきます。どちらの手法がリスクが高いかは明白ですが、発行体企業サイドからすると、迅速に資金調達が可能なソロモンの手法は大変魅力的な手法に映り、これまでGSやMSだけが指名されていた社債発行の案件を次々とソロモンが奪っていくことになります。
これに対して、GSやMSは同様の手法を引受業務で展開し、逆にソロモンの得意とするトレーディング業務に本格的に参入していくことになります。ソロモンはそれに対抗しようとしますが、うまく成果を残すことができず、最終的には米国債の相場操縦疑惑で訴えられ、今では会社そのものがシティに吸収されてしまい、現在では名前さえ残っていません。
同様の事は他の株式ブローカー出身の会社でも当てはまり、80年代半ばから90年代初頭にかけて、スミス・バーニー、ファーストボストン、バンカース・トラストなど中堅の金融機関は、ことごとく消えました。スミスバーニーはソロモンと合併するもシティに、バンカーストラストはドイツ銀行に、ファーストボストンはクレディスイスに吸収されました。この時代、欧州系の金融機関や日本勢が米国市場で躍進しました。不況期の米国でグラススティーガル法の下で商業銀行と投資銀行の兼業が禁止されていて、それが可能だった欧州系が次々と米系の金融機関を飲み込んでいました。ちなみに当時の日本勢は三菱地所のロックフェラーセンター買収に代表されるように、米国の不動産投資に精を出していました。
この欧州勢の進出に対して、クリントン政権で財務長官に就任したロバート・ルービンは同法を有名無実化させ、商業銀行による投資銀行の兼業を認めました。その結果、シティバンクやJPモルガンなどの商業銀行が積極的に投資銀行業務に参入しました。しかし、米欧の商業銀行は投資銀行に参入したものの、思いのほか収益を上げることができず、次第にハイイールドなジャンクボンドの引き受けや証券化商品、特にCDO(債務担保証券)の組成・引き受け・販売に傾注していきました。その結果は直近のサブプライム危機から始まった一連の米国株式市場の混乱が如実に物語っています。GSやMSが株価をほぼ健全な水準にまで回復させている一方で、シティやバンカメがいまだに低空飛行を続けているのは、ある意味で当然の帰結と言える気がします。
先程、商業銀行の投資銀行への参入について書きましたが、そのような環境を投資銀行サイドは傍観していたわけではありません。GSはヘンリー・ポールソン(前米国財務長官)がCEOの時代、
同氏はGSを引受業務やアドバイザリー業務を中心とした伝統的な投資銀行(証券会社)から、自らのバランスシートを用いてリスク投資を行う「投資会社」へと変貌させました。JPモルガンやシティバンクと言った銀行系が投資銀行業務に本格的に乗り込んできた時代の変化に見事に対応してゴールドマンの黄金期を築いた功績が称えられることが多いようです。
ポールソンがGSのトップになった99年以降、同社はトレーディング業務やプライベートエクイティ投資などを拡大して来て、その為の資金源として自己資本やさらにはレバレッジも積極的に活用してきたと言われます。その積極ぶりは90年代後半の日本での不良債権投資や三井住友銀行などへの出資などでも知られていると思いますが、同氏は「投資銀行が案件をアドバイスする際には積極的に自己資本をコミットすべきである」と強く主張して来たと言われています。
元来はアドバイザーや引受業者として、いわば仲介役に徹してきた投資銀行業界では、そのようなGSのスタンス(ここでは特にプライベートエクイティへの積極的な投資スタンス)を、他の投資銀行の経営陣は「リスキー過ぎる」、「自分たちのやるべき範囲を逸脱している」などと批判するケースもよく見受けましたが、それでもポールソンは、そのようなリスクを取ることで会社が傾くことのないよう徹底したリスク管理を行って来たと評されています。
そしてリーマン破産から始まった一連の金融危機を通して、現在、GSやMSは銀行持ち株会社として、体制を変更しています。ウォールストリートジャーナル紙をはじめ多くの経済紙は、銀行持ち株会社へ転換したことでFRBの監督下に入り、それまでのようなリスキーな業務の縮小を余儀なくされGSやMSの時代は終わる、という論調が金融危機以降は盛んに言われていましたが、よく考えると、GSやMSは元来リスクを取らないビジネスが本業で、リスキーなビジネスを始めたのは比較的に最近の事です。両社は上場したことで、株主からの圧力でリスクをとって収益を極大化させる事業を始めましたが、銀行持ち株会社化で、そういった株主の圧力を暗に抑え込める環境ができているのが、現在の状況ともいえます。世界の金融当局は基本的にはリスクを取らない、もしくはそれに応じた自己資本を積むことを求めており、それが金融機関の経営を圧迫される懸念がありますが、この2社はリスクを取らないビジネスにおいて一日の長があり、GSとMSにとって有利な経営環境が作られている、ともいえます。
現在のウォールストリートは、まだまだ完全復活と言える状況ではありませんが、少なくとも、この2社が金融機関の次の時代のあるべき姿を作り出し、米国をはじめ世界各地の金融市場で引き続き大きなプレゼンスを発揮するのではないか、と私は考えています。
Ken
「美しい上海」が直面する試練
昨日(11月21日)、中国上海で多くの市民たちが今月15日に日本人男性一人を含む58名の死者、負傷者は70
人以上を出した都心の高層マンション火災発生現場で犠牲者に哀悼を捧げた。この1949年建国以来上海で発
生した最も酷い火事の背景複雑そうだ。
まず出火の原因は違法な電気溶接工事だという、発生から鎮火まで5時間以上もかかり、救出作業が難航し
たことについては、消防局の設備不足を指摘する声もある。火災発生直後、約70台の消防車が駆け付けたが、
水が高層に届かない消防車もあった。世界で最も先進、100メートルの高層ビル用の消防車は現場の周りの道
路が狭いすぎるため、使えなかった。次に、当時工事を施工していた上海地元の会社が、現地政府と「ただなら
ぬ関係」にあったとの声もあった。
火災が発生した際、消防局すぐ出動し、消防士が住民を救出のためにビルに乗り込んだが、防盗門(玄関ドア
の前に窃盗を防ぐために設置するセキュリティドア)が牢固すぎて、なかなか開けられない、平均的は一つの防
盗門を開けるのは15~20分もかかったと消防士が語った。今回災害となったビルは中古マンション市場では1平
方メートルは3万人民元(約37.6万円)、火災による損失の合計は5億人民元(約62.8億円)を上る可能性もあると
いう。
閉幕から2週間しか経ってない上海万博のスローガンは「都市が生活をより美しくする」(城市,譲生活更美好)
だった。しかし都市の高度発展に伴い、防災や安全管理面の不備と建築物の高層化に追い付かない消防体制
などもあるようだ。また、上海が「美しい都市」になるためには大火災について検討して対策を練るだけに留まっ
てはならず、今回の悲しい出来事をきっかけに高騰する物価や労働者の低賃金、医療保険などの福利厚生に
存在する種々の困難を克服していかなければならないとし、「今回の火災は、スローガンは1度の万博で終わる
物ではなく、この先も非常に遠い道のりが待っていることを教えてくれた」と結んだ。
Robin
NYダウの2つの特徴
ブログをご覧頂いている皆様へ、今回から参加させていただく東岳証券のKenと申します。読者様へ投資に関する有益な情報提供ができるよう全力で取り組ませていただきますので、お付き合い頂けたら幸いです。
第一回目のテーマは、直近のFRBによる金融緩和策の影響で相場に追い風が吹いている「ダウ・ジョーンズ工業株30種平均」について取り上げてみたいと思います。これは通称「NYダウ」や「ニューヨーク平均株価」と呼ばれているものです。30という数字が示しているように30銘柄で構成されています。「工業株」と名前が付いていますが、金融や小売、エネルギー、ヘルスケアなど各種セクターの銘柄も含まれています。
この指数には大きな特徴があります。まず、個々の銘柄の時価総額が大きいことです。NYダウの時価総額は約420兆円程度あり、一銘柄あたり、14兆円程度あることになります。
もちろんエクソンモービルやシェブロンテキサコ等のエネルギーセクター銘柄の大きさを考慮すると単純な平均値で言いきることはできませんが、それでも日本では時価総額一位のトヨタ自動車で約10兆円、2位のNTTで約6兆円といった状況です。そのような巨大企業を数多く有していることを考えると、それだけ世界経済に対して大きな影響力を有していると考えることができます。
第2の特徴は、この30銘柄の全売上高に占めるアメリカ以外での売上高が4割近くあることです。そのうち10社は5割を超えている状況です。10社の中には我々が日常でも聞く名前として、P&GやIBM、マクドナルド、コカコーラ、インテルなどがあります。こうした企業は、アメリカ以外の地域で自社の収益の半分以上を稼いでいることになります。こう考えると、こうした企業はアメリカ企業であって、ある意味アメリカ企業ではないと言えるかもしれません。NYダウ構成銘柄の3割以上がアメリカ本国以外に収益の主軸を移していることを意味します。つまりNYダウの指数売買において、アメリカ以外の経済指標等の重要性を改めて認識させられると思います。
ちなみに現在、こういった企業の戦略は日本やアメリカや欧州の安い金利で資金調達を図り、新興国の安価な人材や資源を使い、さらには同地域での新規の販売マーケットを開拓していく戦略をとっております。また仮に本国で資金調達に支障をきたすことがあっても、こうした企業ならばアジア地域、例えば日本や香港やシンガポールなどで有利にファイナンスをすることができると思います。この点の強みは忘れられがちですが、大切な要素の一つと言える気がします。
新興国投資は現在我が国でブームですが、新興国に投資をする際、現地企業に投資する以外に、こうした企業に投資することで、間接的に恩恵を受けることができます。
昨今の金融危機の下での相場環境では、全体の流れに引きずられがちですが、大底を打ってからの戻りの局面で、こうした企業のマーケットに与えるインパクトは軽視できないと思います。インデックスの売買をするうえでテクニカル分析は大きな要素ですが、投資対象の現在の姿を分析してみることは、投資を考える上で一つの有効な方法と言えます。
余談ですが、近年、いい意味でも悪い意味でも有名になった、アメリカの大手金融機関であるゴールドマンサックスは、この30銘柄には組み込まれておりません。歴史と伝統を有するゴールドマンですが、株式公開したのは意外にも最近の出来事です。ゴールドマンサックスの歴史の中で金融危機は過去にも経験していますが、なぜ最近まで株式公開を行わなかったか、また当時のアメリカ金融界の環境などは、次回のコラムでお伝えしていきます。
Ken
金、再び史上最高値更新
先週、金また史上最高値を更新している。一時1300ドル/トロイオンスを超えた場面もあった。NY市場の金先物価格は米景気の二番底懸念が高まった7月下旬に1156ドル/トロイオンスあたりから反発局面に入った。
世界範囲の経済不調と通貨への不信の追い風で、金の価格はますます伸びている。その背景はアメリカの
金融緩和観測だと市場の認識が広がっている。9月21日FOMC(米連邦公開市場委員会)は物価の下落に警戒
を強めた。11月の次回会合で”米国債の買い取り拡大など、追加緩和に踏み切る”との見方が市場で増えてい
る。追加緩和でドル安が進めば、市場に出回っている余剰資金は、行き場を失い、ドルの代替資産として、円や
貴金属先物などが結果的に買われることとなった。また、将来インフレが進めば、実物資産である金が買われ
やすいという思惑が働いていることも、金人気の背景だ。
金価格は、今年に入って19%上昇している(2009年12月終値1094ドル台)。それでも市場関係者からは、
「金はまだまだ上昇余地がある。金融緩和観測が強く、金利の上昇を心配する必要はなく、ドルは再び守りに回
っているからだ」といった意見が相次いでいる。でも金価格はここまで来ると、参考できる歴史的なチャートもな
いので、短期的に先行きは不明だ、1300ドルの大台を達成感から一旦積み上げてきたポジションの解消も考え
られる。中長期的金のトレンドは上向きを前題として、これから金へ投資しようと検討する人も慎重すべきだ。
Robin