NYダウの2つの特徴
ブログをご覧頂いている皆様へ、今回から参加させていただく東岳証券のKenと申します。読者様へ投資に関する有益な情報提供ができるよう全力で取り組ませていただきますので、お付き合い頂けたら幸いです。
第一回目のテーマは、直近のFRBによる金融緩和策の影響で相場に追い風が吹いている「ダウ・ジョーンズ工業株30種平均」について取り上げてみたいと思います。これは通称「NYダウ」や「ニューヨーク平均株価」と呼ばれているものです。30という数字が示しているように30銘柄で構成されています。「工業株」と名前が付いていますが、金融や小売、エネルギー、ヘルスケアなど各種セクターの銘柄も含まれています。
この指数には大きな特徴があります。まず、個々の銘柄の時価総額が大きいことです。NYダウの時価総額は約420兆円程度あり、一銘柄あたり、14兆円程度あることになります。
もちろんエクソンモービルやシェブロンテキサコ等のエネルギーセクター銘柄の大きさを考慮すると単純な平均値で言いきることはできませんが、それでも日本では時価総額一位のトヨタ自動車で約10兆円、2位のNTTで約6兆円といった状況です。そのような巨大企業を数多く有していることを考えると、それだけ世界経済に対して大きな影響力を有していると考えることができます。
第2の特徴は、この30銘柄の全売上高に占めるアメリカ以外での売上高が4割近くあることです。そのうち10社は5割を超えている状況です。10社の中には我々が日常でも聞く名前として、P&GやIBM、マクドナルド、コカコーラ、インテルなどがあります。こうした企業は、アメリカ以外の地域で自社の収益の半分以上を稼いでいることになります。こう考えると、こうした企業はアメリカ企業であって、ある意味アメリカ企業ではないと言えるかもしれません。NYダウ構成銘柄の3割以上がアメリカ本国以外に収益の主軸を移していることを意味します。つまりNYダウの指数売買において、アメリカ以外の経済指標等の重要性を改めて認識させられると思います。
ちなみに現在、こういった企業の戦略は日本やアメリカや欧州の安い金利で資金調達を図り、新興国の安価な人材や資源を使い、さらには同地域での新規の販売マーケットを開拓していく戦略をとっております。また仮に本国で資金調達に支障をきたすことがあっても、こうした企業ならばアジア地域、例えば日本や香港やシンガポールなどで有利にファイナンスをすることができると思います。この点の強みは忘れられがちですが、大切な要素の一つと言える気がします。
新興国投資は現在我が国でブームですが、新興国に投資をする際、現地企業に投資する以外に、こうした企業に投資することで、間接的に恩恵を受けることができます。
昨今の金融危機の下での相場環境では、全体の流れに引きずられがちですが、大底を打ってからの戻りの局面で、こうした企業のマーケットに与えるインパクトは軽視できないと思います。インデックスの売買をするうえでテクニカル分析は大きな要素ですが、投資対象の現在の姿を分析してみることは、投資を考える上で一つの有効な方法と言えます。
余談ですが、近年、いい意味でも悪い意味でも有名になった、アメリカの大手金融機関であるゴールドマンサックスは、この30銘柄には組み込まれておりません。歴史と伝統を有するゴールドマンですが、株式公開したのは意外にも最近の出来事です。ゴールドマンサックスの歴史の中で金融危機は過去にも経験していますが、なぜ最近まで株式公開を行わなかったか、また当時のアメリカ金融界の環境などは、次回のコラムでお伝えしていきます。
Ken