【紹介】
長渕剛さんのアルバム「JEEP」を紹介します。
本作は長渕さんの12thアルバムで,1990年にリリースされました。
前作「昭和」と次作「JAPAN」の間の作品で,長渕さんが最も油が乗っていた時期の作品の1つです。
この頃の長渕さんは,映画にも精力的に出演し,歌手と俳優の二足のわらじで活動していました。
【収録曲】
1. 女よ、GOMEN
2. 流れもの
3. 友だちがいなくなっちゃった
4. 電信柱に引っかけた夢
5. 海
6. カラス
7. お家へ帰ろう
8. しょっぱい三日月の夜
9. 浦安の黒ちゃん
10. 西新宿の親父の唄
11. JEEP
12. Myself
【曲紹介】 ※曲名後のアルファベットは,個人的な5段階評価です。
1. 女よ、GOMEN B
アップテンポなロックポップス。
タイトルのとおり,女性に対する懺悔が主題だが,どこか開き直ったような歌詞になっている。その点は,初期作の「俺らの家まで」を彷彿とさせる。
先行シングル「JEEP」に「女よ、ごめん」と平仮名表記にした弾き語りバージョンが収録されている。こちらは曲調が大きく異なり,歌詞も一部が違っている。
一時期,ライブでは定番曲として歌われていた。
2. 流れもの B
4ビートのゆったりとしたロック。
ギターとオルガンが鳴り響く激しいサウンドに乗せて,自らの生き様を歌っている。
サビではボーカルが重なる部分があるが,ライブでは浜田良美さんが重なる部分を歌っている。
3. 友だちがいなくなっちゃった B
時間とともに旧友と距離を置くことになった心境が歌われている。
歌詞は悲壮感のあるものだが,レゲエのリズムに乗せていることで,開き直りや楽観を演出している。
1990~1991年のツアーでは,エレピを加えたカントリー調にアレンジされて歌われた。
4. 電信柱に引っかけた夢 A
本作唯一のシンプルな8ビートのフォークロック。
もともとは西田恭平さんという歌手に提供した曲で,それをセルフカバーしている。
後年のライブでの演奏頻度は高くはないが,2004年桜島ライブや2010~2011年ツアーでセットリスト入りしている。
5. 海 A
ストリングスを前面に出した壮大なバラード。
歌詞の内容はラブソングだが,親愛するギタリストの矢島賢さんに捧げた曲と言われている。この曲の間奏と後奏では,矢島さんの泣きのギターソロを聴くことができる。
2004年桜島ライブでは,原曲アレンジで歌われた。ギターソロは矢島さんの後任の角田順さんが弾いており,ソロの最中に角田さんのメンバー紹介がされている。
6. カラス A
長渕さん自身によるエレキギターの弾き語りに,ピアノ・ベース・ドラムを加えたシンプルなバラード。
群れを成さないと何もできない都会人をカラスにたとえて揶揄した内容になっている。
1990~1991年のツアーでは,中西康晴さんによるピアノ伴奏で歌われた。後奏では中西さんのアグレッシヴに踊り狂うようなピアノソロが披露された。
7. お家へ帰ろう C
長渕さんと矢島さんのアコースティックギターアンサンブルのみによる曲。
日本の現状を過激にダメ出しする内容となっている。
「ホコ天(歩行者天国)」「ミックジャガー」「敗戦直後に生まれた40代」など,時代を感じさせる歌詞が印象的。
後年のライブでもときどき歌われるが,「40代」が「50代」「60代」になっているなど,
歌詞を変えて歌われることが多い。
8. しょっぱい三日月の夜 B
主演映画「ウォータームーン」の主題歌で,先行シングルにもなっている。
アコースティックギター,エレキギター,シンセサイザーを中心としたシンプルなバラードで,力強くも丁寧に歌い上げられている。
2012年の弾き語りツアーでは,ギター1本で崇高な曲にアレンジして歌われた。
9. 浦安の黒ちゃん B
ノリのよいポップス。
「黒ちゃん」とは,「とんぼ」や「オルゴール」の脚本・監督を務めた黒土三男さんのことである。その黒土さんとの親交がストーリー仕立てで歌われている。
1990~1991年のツアーでは,こちらも中西康晴さんによるピアノが前面に出された。
10. 西新宿の親父の唄 A
西新宿で居酒屋を営む老人を敬って作られたバラードだが,これは架空の人物である。
1991年の主演ドラマ「しゃぼん玉」では,この「親父」をモチーフにした人物が登場し,岡田英次さんが好演した。
曲中では「やるなら今しかねえ」のフレーズが連呼され,インパクトの強い曲となっている。
後年のライブでは割とよく歌われている。
1992年に『北の国から』で挿入歌として使われ,田中邦衛さんが歌うシーンがある。そのため,ファン以外の人たちにとっても割と知名度の高い曲である。
11. JEEP B
先行シングル曲。
アコースティックギターのスリーフィンガー奏法による軽快なフォークで,まさにジープでドライブしているような気分になれる曲。
2000年以降はライブでよく歌われている。弾き語りがほとんどだが,2005年ツアーでは原曲よりも重厚なフルバンドバージョンで歌われた。
12. Myself A
シンセサイザーとエレキピアノに乗せたバラード。
「もっと真っ直ぐ生きてえ」と力強い歌詞が,聞き手を勇気づけるものになっている。
こちらも2000年以降にライブでの演奏頻度が高くなった。当初はバンドバージョンだったが,ギター弾き語りを挟んで,近年はエレキピアノのみの伴奏によるバージョンが主流になっている。
【レビュー】
前作「昭和」で見られた,あの一切の妥協を許さない峻烈なオーラとは対照的に,本作にはどこか風通しの良い空気が流れています。
#1「女よ、GOMEN」・#3「友だちがいなくなっちゃった」・#9「浦安の黒ちゃん」で見られるコミカルな雰囲気,#7「お家へ帰ろう」の社会風刺,そして#11「JEEP」の開放的な疾走感。
長渕剛という表現者が「己の生き様」という内なる戦いから一歩踏み出し,時代や社会をあえて一歩引いた位置から達観し始めた証なのかもしれません。
デビューして12年,ひたすら自分と向き合って歌い続けてきたスタンスからスケールアップして,もっと大きいものを見つめているような感覚を受けます。
先行シングルは#8「しょっぱい三日月の夜」と#10「JEEP」です。
前述のとおり,#8は映画の主題歌になりましたが,#10はこの頃にしては珍しくノンタイアップです。
そのため,「乾杯」「とんぼ」「しゃぼん玉」のような爆発的なヒット曲はありませんが,別の方法で採り上げられて知名度が高い曲が多く収録されています。
そういうわけで,後年のライブでも歌われる頻度の高い曲が多いです。
リリース1か月後から5か月間という長いスパンに渡って,アルバムを引っさげたツアーが行われました。
その様子は,ライブビデオ「カラス」に収められています。LIVE89に近い雰囲気,構成でありながらも,新曲はほぼ全曲が歌われ,日替わりの弾き語りコーナーも充実していました。
80年代後半以降は,ほぼ毎回のツアーがCDかビデオでリリースされるようになりました。このレビューシリーズはオリジナルアルバムに限定して書いていますが,ライブ盤についても機会があれば書いてみたいと思っています。
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