【紹介】
長渕剛さんのアルバム「HEAVY GAUGE」を紹介します。
本作は長渕さんの6thアルバムで,1983年にリリースされました。
前作「時代は僕らに雨を降らしてる」に近いサウンドイメージですが,それよりもややロック色が強めの作品になっています。
また,高かった声がかなく低くしゃがれ始めてきたのもこの頃です。
【収録曲】
1. Don't Cry My Love
2. わがまま気まま流れるまま
3. おいで僕のそばに
4. 冷たい外国人
5. すべてほんとだよ!!
6. いかさまだらけのルーレット
7. -100°の冷たい街
8. 僕だけのメリークリスマス
9. 午前0時の向こう側
10. 僕のギターにはいつもHeavy Gauge
【曲紹介】 ※曲名後のアルファベットは,個人的な5段階評価です。
1. Don't Cry My Love A
定番の失恋ソング。ピアノを主体とした壮大なバラードになっている。
間奏で鳴り響くオルガンの音が哀愁を増長させる。
2番の歌詞に「通りすぎてく季節の風が想い出とかす前に」というフレーズが出てくる。これが「思い出と化す」なのか「思い出溶かす」なのかは,しばしば議論される。主語が「雨」ではなく「風」なので,「溶かす」は合わないように見えるが,「梳かす」だったら整合性が取れる。歌詞カードには「思い出とかす」と平仮名で書かれているため,あえてリスナーに判断を委ねられているのかもしれない。
この曲は後年にもよく歌われており,1986年のシングル「SUPER STAR」ではカップリングに弾き語りバージョンが収録されている。ライブでは,1989年では熱いMCを伴うエレピバージョンを,2003年・2023年などではサックスを交えた大人のアレンジを聴くことができる。
2. わがまま気まま流れるまま A
軽快な8ビートに乗せて,若き日の青春を歌った曲。
間奏・後奏では,スキャットの代わりに口笛が入り,軽やかさを表現している。
ライブ映えしそうな曲だが,当年のツアーを含め,歌われる機会には恵まれていない。
3. おいで僕のそばに A
終始物悲しい曲調の中で,孤独の寂しさとそこに交わる恋心が歌われている。
曲の後半に進むに連れて演奏が壮大になっていく。
2007年のライブでは,ギター1本で重厚な弾き語りバージョンが披露された。
4. 冷たい外国人 C
第二次世界大戦の悲劇をセミフィクション風に歌ったロック。
歌詞に出てくる「731」とは,戦時中に実在した731部隊を指す。
5. すべてほんとだよ!! B
アコースティックギターのアンサンブルで演奏された優しいフォーク。
途中で混じるマンドリンが良い味を出している。
近年でもたまにライブで弾き語りが披露される。
6. いかさまだらけのルーレット D
ロック期への突入を象徴するような激しい曲調になっている。
フィクション調の歌詞になっていますが,これは,各所から叩かれることが増えてきた長渕さんが,その困惑と反抗心をたとえたものだと思われます。
7. -100°の冷たい街 B
こちらもライフソングです。
#6と比べて曲調は明るく,強さの中に優しさが表現されています。
後にリリースされたシングル「GOOD-BYE青春」のカップリングで収録され,ドラマ「家族ゲーム」の挿入歌にもなりました。
2004年の桜島前夜祭ライブでレア曲として披露されました。
8. 僕だけのメリークリスマス C
長渕さんの楽曲の中では珍しいクリスマスソング。
ピアノの弾き語りで,幼少期のクリスマスの日の思い出を物悲しく歌っている。
2009年の30thライブで,ピアノ弾き語りで披露され,ファンを喜ばせた。
つい最近の2025年オンラインクリスマスライブでも歌われた。
9. 午前0時の向こう側 A
こちらも失恋ソング。
ピアノ主体の王道バラード。
直後に行われたツアーではトリで歌われた。
10. 僕のギターにはいつもHeavy Gauge B
三拍子の軽快なリズムに乗せて歌われたフォーク。
30歳を間近にして,これからの未来に希望を持って生きていく決意を歌い上げている。
後年でも年齢の部分の歌詞を変えて頻繁に歌われている。
中でも,原曲に忠実なバンドサウンドで演奏された2002年のライブバージョンは秀逸。
【レビュー】
このアルバムを最後に,長渕さんはフォークと完全に訣別し,本格的なロック期へと突入していきます。
本作は,フォーク期の集大成であり,ロック期の走りという位置づけになっています。
私のおすすめは#3・#9です。どちらも物悲しいバラードですが,長渕サウンドの魅力が集約されていると言っても過言ではない2曲です。
後年のライブでよく歌われる曲も多く,中でも#1・#5・#10は今でも高頻度で聴くことができます。お気に入りの#9も現代風アレンジで歌ってほしいと願っています。ロック色の強い現在のライブだからこそ,こういうテイストの曲がセットリストに入ることで,全体が引き締まると思っています。
アルバムリリース翌月には,西武球場で2万人を動員した野外ライブが行われました。
1stから6thまでのアルバム曲やアルバム未収録曲の中からバランスよく選曲され,計22曲が歌われました。
この模様はライブアルバムに収められていて,22曲中16曲をほぼそのままのテイクで聴くことができます。ライブでは「HEAVY GAUGE」からも何曲か歌われましたが,アルバムのセールスや直後のツアー動員の目的で,収録されている曲はごくわずかとなっています。
このアルバムにも,シングル曲は1曲も収録されていません。
直前にリリースされた「恋人時代」と,直後にリリースされた「GOOD-BYE青春」はどちらも名曲で,シングルだけに留めておいたのはもったいない気もしますが,だからこそ今でも隠れた名曲であり続けているのかもしれません。
前5作のレビューも投稿しています。関連記事として,ぜひお読みください。
