【紹介】
長渕剛さんのアルバム「昭和」を紹介します。
本作は長渕さんの11thアルバムで,1989年にリリースされました。
前年にリリースされた「乾杯」「とんぼ」のヒットによってトップアーティストに登りつめた長渕さんは,ドラマ「とんぼ」への出演をきっかけに,大幅にイメージチェンジしました。
これまでの気のいい兄ちゃんキャラから,近寄りがたいオーラを纏ったカリスマキャラへと変貌し,これが大成功を収めました。
本作から1991年の「JAPAN」までは,長渕さんの全盛期と言えます。
【収録曲】
1. くそったれの人生
2. GO STRAIGHT
3. いつかの少年
4. とんぼ
5. シェリー
6. 激愛
7. NEVER CHANGE
8. プンプンプン
9. 裸足のまんまで
10. ほんまにうち寂しかったんよ
11. 明け方までにはケリがつく
12. 昭和
【曲紹介】 ※曲名後のアルファベットは,個人的な5段階評価です。
1. くそったれの人生 A
8ビートのフォークロックに乗せて,自らの生き様を歌っている。
「くそったれ」と卑下しながらも,「俺は俺」としたたかに生きていく決意がストレートな歌詞で表されている。
2002年の横スタライブで13年ぶりに披露されて以来,多くのライブで定番曲としてセットリスト入りすることとなった。
2. GO STRAIGHT B
ロック色の強い曲。「くそったれの人生」同様に,強い生き様が表現されている。
こちらも2000年代以降は頻繁にライブで歌われている。
久しぶりに披露された2000年のライブでは,エルトン永田さんの狂気的(褒め言葉)なピアノソロを聴くことができる。このテイクはライブDVDで視聴することができる。
3. いつかの少年 A
自らの故郷やルーツを歌った4ビートのバラード。「LICENCE」に次ぐ,家族を歌った楽曲となっている。
原曲はバンドだが,ライブでは弾き語りで歌われることがほとんどである。
1994年にリリースされた3枚組ベストアルバムのタイトルにもなっており,そのアルバムを引っさげた弾き語りツアーでは,本編ラストに歌われた。
4. とんぼ A
長渕さんを代表する1曲。
シンプルな8ビートに乗せたフォークロックで,冷めきった都会人の人柄に一石投じる内容になっている。
前年に放映されたドラマ「とんぼ」の主題歌にもなり,大ヒットを収めた。
1997年のドラマ「英二ふたたび」でも主題歌として使用され,ボーカル新録のバージョンが流れたが,こちらは残念ながら音源化されていない。
2000年代前半には,読売ジャイアンツの清原和博選手が登場曲として使用していたため,東京ドームでイントロが観客全員によって合唱されるのが恒例だった。
5. シェリー B
アコースティックギターのアルペジオに乗せた柔らかいバラード。
映画「オルゴール」の挿入歌として使用され,砂丘をジープで走るシーンと「砂煙が舞い」の歌詞が見事にマッチしていました。
ライブでの演奏頻度は2009年の35thライブ以降に急激に上がり,近年ではギター弾き語りで定期的に披露されている。
6. 激愛 B
幻想的なサウンドながらも強い緊張感のあるロックバラード。
間奏で流れる矢島賢さんのギターソロは,これだけで一聴の価値がある。
直後に主演した映画「オルゴール」の主題歌として起用された。
ライブでは,原曲バージョン・シンプルな弾き語りバージョン・ギターパーカッションバージョンとさまざまなアレンジで歌われていたが,近年は披露される機会がなくなっている。
7. NEVER CHANGE B
第一子が生まれたときの光景と心情をストレートな歌詞で歌ったバラード。
前年のセルフカバーアルバムのタイトルにもなったが,本曲がシングルでリリースされたのはその後である。
シングルとアルバムでは,リバーブのエフェクトが大きく異なり,ボーカルも再録されている。また,アルバムバージョンには間奏部分で長女の産声が入れられている。
8. プンプンプン B
ブルージーなロック。遊び心のある曲となっている。
男癖の悪い女性と関わってしまったことへの憤りを自嘲的に歌っている。
原曲ではアコースティックギターが前面に出ているが,直後のライブではピアノが主役となっており,中西康晴さんの神がかった長いピアノソロが挿入されている。
9. 裸足のまんまで A
「とんぼ」に似たシンプルなフォークロックで,「俺は俺を信じてやる」と歌う歌詞の内容は「くそったれの人生」に通じるものがある。
「とんぼ」が制作されていなければ,この曲がシングルカットされていてもおかしくないくらいにキャッチーな曲構成となっている。
ライブではごくたまに披露され,弾き語りのときもあれば,原曲バージョンのときもある。
10. ほんまにうち寂しかったんよ B
4ビートのミディアムテンポのリズムに乗せた曲で,うねるように動き回るベースラインが印象的。
終始関西弁で歌われており,当時としては珍しい女性視点での歌詞であることから,アルバムの中では一線を画す曲と言える。
11. 明け方までにはケリがつく A
ギター弾き語りにサイドギターとストリングスで味付けたフォーク。
シンセサイザーに包まれた柔らかいサウンドに乗った歌詞がとても力強いもので,そのコントラストが魅力的なものになっている。
3コーラス構成で,各コーラスに「ねえ もう少し○○でいいんじゃないか」という歌詞が2回ずつ出てくるが,すべて歌詞が異なる。「こう生きていきたい」というさまざまな思いが交錯していることがうまく表現されている。
12. 昭和 A
昭和の終わりを歌ったバラード。
昭和の終わりが1月7日,リリースが3月25日なので,かなり短期間で作曲してレコーディングしたものと思われる。
この曲の作曲風景が,ビデオ「LICENCE」の中で見られる。曲自体は先にできていたものだと考えられるが,もし昭和が終わっていなかったら,どういうコンセプトの曲やアルバムになっていたのかが興味深い。
【レビュー】
アルバム「昭和」は,音楽性は前作「LICENCE」に近いアコースティック中心なものになっていますが,歌い手・長渕剛のキャラが180度異なるため,まったく別の世界観を味わうことになります。
5段階評価がAかBばかりであることからもわかるように,捨て曲がなく,すべてが高いクオリティに仕上がっているアルバムです。後述するライブアルバムと併せて聴くと,それぞれの楽曲の良さがさらによくわかると思います。
この頃になるとラブソングがほとんど歌われなくなり,本作の中でもラブソングに該当するのは#5「シェリー」・#6「激愛」・#10「ほんまにうち寂しかったんよ」の3曲のみです。
代わって増えてきたのは,ライフソングや,故郷・家族を歌った楽曲です。とくに故郷については,初期の頃にはほとんど歌われることがありませんでしたが,「LICENCE」で解禁されたのを皮切りに,多く歌われていきます。
また,自身も家庭を持つようになり,妻子を歌った曲も増えていきます。
先行シングル曲は#7「NEVER CHANGE」・#4「とんぼ」・#6「激愛」です。
3曲の先行シングルを擁するアルバムは本作「昭和」のみです。この頃はほとんどのシングルがタイアップとなっていて,シングルのリリースにも精力的だったようです。
アルバムを引っ下げたツアーは,リリース直後に始まりました。
ファイナルの公演が2枚組ライブアルバム「LIVE'89」に収録されています。
22曲が収録されており,ライブの完全版のように見えますが,実際には2日間の公演からピックアップされており,曲順も一部が入れ替わっています。
この公演の模様を映像で見ることは難しいですが,CD音源やブックレットの写真集を見る限り,「とんぼ」の小川英二さながらの硬派なイメージでライブに臨んでいたことがわかります。
一度で良いので,この頃のライブに行ってみたかったです。
他作品のレビューも投稿しています。関連記事として,ぜひお読みください。

