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Electronic Dolphin Eats Noise

空論上の九龍城


クロード・シャブロル傑作選

『不貞の女』

(1969年/フランス・イタリア)

クロード・シャブロル監督

配給:コピアポア・フィルム

シネマ神戸②

美しい妻と可愛い息子との幸せな家庭をもつ主人公を襲ったのは妻の不貞への疑念。囚われてしまった彼は知り合いに探ってもらい証拠を掴んでしまう…

愛と裏切り、そして罪と罰。ありがちなメロドラマやサスペンスに陥らぬ珠玉の演技/出。

にしても当時の妻であるステファーヌ・オードランにまたこんな役やらすんだからシャブロルったら…

あと終盤のカメラワークが堪らん!


アメリアの息子たち

(2024年/ポルトガル)

ガブリエル・アブランテス監督

配給:Cinemago

シネマ神戸②

DNAの検査により生まれて間もなく生き別れた家族と再会する機会に恵まれた主人公が、自身の出生の秘密を知ると共に辿る恐怖を描いた作品。

フランシスコ・デ・ゴヤの絵画に着想を得た作品で、捻りの効いたアイデアと美醜が拮抗する怪奇描写が魅力。

※ ちなみに上映前の予告に『エリス&トム ボサノヴァ名盤誕生秘話』が流れてて、そこからの劇中に「イパネマの娘」流れて映画とは別のラインで戦慄(笑)!


『カリギュラ』究極版

(オリジナル:1980年/イタリア・アメリカ//究極版:2023年/アメリカ・イタリア)

オリジナル:ティント・ブラス監督/ジャンカルロ・ルイ監督

究極版:(主要撮影)ティント・ブラス監督/(プロデュース)トーマス・ネゴバン

配給:シンカ

シネマ神戸②

実在のローマ帝国皇帝の強権と狂気に満ちた生涯を描いた(色んな意味で)伝説の映画のこれは本来スタッフやキャストが目指していた形で復元した版。

そもそもはペントハウス誌を創刊したボブ・グッチョーネが私財を投じ製作を始めた映画であるが、出来に満足しなかった彼はポルノシーンを勝手に追加・編集、公開された映画は酷評されたが大ヒットした。しかし、スタッフ&キャスト陣からは当然総スカンだった。

昔VHSで見た記憶はあるんだけど全然覚えてなかった…

確かに過激なシーンもあるんだけど、やはりマルコム・マクダウェル演じるカリギュラの狂気が強烈よね。

正直長いなとは思うんだけど、ここまで描き切ってた当時のキャスト&スタッフはあっぱれですよ。

あと今回この復元を執念でやり通した面々には拍手を送りたい。

腐敗した権力が跋扈する今この世界に広く響いて欲しい作品だ。


ショート・パルス 5つの鼓動

配給:グッチーズ・フリースクール

元町映画館

❶空音央監督「まっすぐな首」(2025年/日本・中国)

❷ヨルゴス・ランティモス監督「二ミック」(2019年/ドイツ・アメリカ・イギリス)

❸&❹ジョナサン・グレイザー監督「ザ・フォール」(2020年/イギリス)&「ストラスブール1518」(2020年/イギリス)

❺アリーチェ・ロルバケル監督&JR監督「都市の寓話」(2024年/フランス)

以上5本のラインナップによる日本独自で編まれたオムニバス作品。

それぞれに撮られた時期も当然目的も違う作品ばかりな上に、どの監督もアク強いのでてんでバラバラな訳ですが、不思議と共通のトーンがあったな。構成も良かった。

是非こんな企画は今後も続けて欲しい。

 ロカルノ国際映画祭で最優秀短編映画賞受賞。原作は楢崎萌々恵さん。目覚めて痛みのある首が誘う身体と心の奥底にある迷宮。撮影は小田香監督で、こちらも元町映画館で上映中だった『じぶん、まる!いっぽのはなし』でも撮影を担当してましたね。

❷“らしい”設定と展開と演出がスパークする12分。マット・ディロンとダフネ・パタキアが狂演。あっ、リュック・フェラーリ使ってた?エンドロールでチラッと見掛けた気がする。

❸フランシスコ・デ・ゴヤの絵画に着想を得た作品。まぁ、怖い!怖い!怖い!こんなシンプルなアイデアとシチュエーションでここまでの未知なる恐怖を描けるものか…

❹1518年のストラスブールで実際に起きた“踊りのペスト”をコロナ禍の隔離下で再現。各ダンサーのパフォーマンスが驚異的。

❸&❹共に音楽は『関心領域』でも組んだ天才ミカ・レヴィ(a.k.a. ミカチュー!)。めちゃくちゃカッコよかった!音源出してくれ!!!

❺プラトンの『洞窟の比喩』の引用、レオス・カラックスの登場、挿入されるのはJRが手掛けた2023年にパリのオペラ座前で行われた150人参加のダンスパフォーマンス『カイロプタラ』。このパフォーマンスのサントラを担当したのはトーマ・バンガルテル(元ダフト・パンク)。音源を編集した12インチが出てたので鑑賞後取り寄せました!

※元町映画館では『ショート・パルス 5つの鼓動』の後に『ボーイ・ミーツ・ガール』4Kレストア版が組まれていてレオス・カラックス梯子になりました。


レオス・カラックス4Kレストア版

『ボーイ・ミーツ・ガール』

(1983年/フランス)

レオス・カラックス監督

配給:ユーロスペース


元町映画館

23歳で発表したデビュー作(1983年)。

実は元映のスクリーンでは2016年の6周年企画で35㎜フィルムで一度上映されていて、今回それ以来の鑑賞。

ドニ・ラヴァン演じるアレックスが街中で女性と出会い恋に堕ちるのはこの後続く3部作共通。デヴィッド・ボウイも流れる。撮影のジャン=イヴ・エスコフィエとは3部作を共に撮り別れた。

ポンヌフ➡︎汚れた血と辿ってから今作を初めて見た時は随分地味な映画でデビューしたんだなと思ったものですが、見返すごとにどんどん愛おしさ増す作品。

ちょっとしたエピソードや会話や仕草にツボつかれる。

またラストがねぇ…。デビュー作でこれをやれちゃえるんだもんなぁー


マーズ・エクスプレス

(2023年/フランス)

ジェレミー・ペラン監督

配給:ハーク/トムス・エンタティメント

塚口サンサン劇場

吹替で鑑賞。

人類が火星にまで居住区を拡げた未来、ロボット工学は驚異的な進歩を遂げた一方厳格な法律でその行動を制限されてもいた。

そんな社会で起きたある事件を調査する私立探偵と相棒(元人間/現ロボット)の物語。

これが長編デビュー作となった監督は最新の科学技術をもとに今作を作り上げたとか。

リアルな世界観とセンス・オブ・ワンダーが心地好く同居し、そこをスリリングなサスペンスと人間ドラマが疾走する。

ジャパニメーションからの影響も勿論大きいのだろうけど、キャラ萌え度が希薄故のドライな感触がよりリアリティの強度高める。

終盤はかなりハードなSF展開でこっちは燃えた。


TOGETHER トゥギャザー

(2025年/アメリカ・オーストラリア)

マイケル・シャンクス監督

配給:キノフィルムズ


塚口サンサン劇場

関係性を修復すべくある田舎へと移住した恋人同士が、現地で奇妙な現象に見舞われ始め…

監督はオーストラリア出身でこれが長編デビュー作。

主演のアリソン・ブリーとデイヴ・フランコは実生活でもパートナーである。

昨今流行りの奇天烈設定の映画の一本かと高を括ってたところあるんですが…いやぁ〜むっちゃ好みやった!

そもそもボディホラーは好みなんだけど、最近ちょっと食傷気味…な気持ち吹っ飛ばす愛と変態(=Transformation)度でガッツポーズ!

惜しむらくは最後のアレのインパクトの為に同僚の教師の真相をもうちょっとボヤかしておいて欲しかったかな?ってとこだけど、それは些細なことだ。


きょうとシネマクラブvol.10

「審判」  

(1999年/韓国)

パク・チャヌク監督

京都シネマ

最新作『しあわせな選択』が公開中の監督の日本未公開の1999年製作の短編作品。

フィルモグラフィー的にはブレイク作となった3作目『JSA』(2000年)の直前だ。

ある事故で亡くなったった身元不明の女性の遺体が安置されている霊安室。

行方不明だった自分たちの娘ではないか?と名乗り出た夫婦と共に職員や刑事や記者たちによる葬儀が始まるが…

僅か26分のワンシチュエーションのドラマの中に様々な思惑が交差し、そこに韓国社会が抱える様々な問題が浮かび上がる。

不敬さや不穏さの配分、緊張と緩和も見事で、終盤の畳みかけには鳥肌。

天才の爆発寸前のコアな部分がギュッと詰まった怪作!

福居ショウジン監督作品との出会いは…

1992年だ。
最初はSTUDIO VOICEの1992年10月号の“So Fucking What! あらかじめ壊れた子供たち”でのインタビューだった。

その2ヶ月後にはi-D JAPANの1992年12月号の“サイボーグになりたい”に『ピノキオの√964』の紹介記事が掲載。


当時は片田舎に住むおぼこい高校生、世の中にはとんでもない映画があるんだな…と震え上がってたものです。


ちゃんと見たのは20代前半?
VHSで『ピノキオ√964』や『ラバーズ・ラバー』を見つけてはあの映画じゃん!あの監督じゃん!と興奮して借りて帰りましたよね。
どちらも後々中古VHSでも入手しました。

画面からスピーカーから溢れ出るテンションと雑音と腐臭、人智越えたストーリー、まさにな怪演、見た当時ですらアウトなゲリラ撮影etc.に戦慄しつつ、好みが過ぎる音楽や美術の数々に一気に虜になったものです。

それぞれのサウンドトラック盤も大切な宝物。


とは言え、それ以前の短編群やそれ以後の作品の鑑賞、そして『ピノキオ√964』や『ラバーズ・ラバー』の劇場鑑賞の機会には恵まれず、20年近く2本のVHSとサントラで焦がれる気持ちを慰めていたものです。

そして2025年夏。
K's cinemaの福居ショウジン監督スペシャルデーの開催。
『ピノキオ√964』『ラバーズ・ラバー』に加えて、初期の「METAL DAYS」「ゲロリスト」「キャタピラ」の上映も有り。
しかも監督自身によるリアルタイム快音MIX!
そりゃ行かない訳にはいかないでしょ!!!
と結構な強行軍で飛び込みました。

いやぁ…ホントあれはあの体感込みでの映画だったのだなと。

舞台挨拶もあって、一生物の体験でした。
好評につき1週間の開催が2週間にも延びましたしね。

福居監督、お疲れ様でした。ありがとうございました。
『女鹿』
(1968年/フランス・イタリア)
クロード・シャブロル監督
群雄割拠なヌーヴェルヴァーグの作家たちの中でも異彩を放ちつつ晩年まで途切れることなく作品を撮り続けた異才の絶頂期を摘み食いできる嬉しい傑作選からまず1本。
ブルジョワなマダムと彼女に見そめられた若き女性画家。マダムの熱い眼差し、それを感じつつも巧みにかどわかす画家。そんな2人の前に現れたのはイケおじな建築家。画家は建築家に惹かれ、建築家もまんざらでもない。そんな2人を観たマダムは…
ありがちな三角関係から派生する愛憎劇もシャブロられたらこうも蠱惑で複雑で独創的な迷宮へと誘われる。
二転三転で変形する三角の死角に突如現れる女鹿(邦題が牝鹿でないのには唸る)に戦慄。
にしても当時シャブロルと結婚していたステファーヌ・オードランの前夫がジャン=ルイ・トランティニャンだなんて、マジでどんな神経でのキャスティングなんだ(苦笑)。オファー受ける側も受ける側だよ。
撮影と照明がまた見事で、スクリーンの端々に配置された官能の煌めきがある種の催眠効果あった気がする。あんなの普通ならあざとく感じるけどあのキャスト陣なら映えるよね。
あとマダムの謎の友人2人組がツボ。何あのケッタイな民族音楽!
 
蒸発
(2024年/ドイツ・日本)
アンドレスアス・ハートマン監督&森あらた監督
配給:アギィ
毎年約8万人が失踪す日本、この国ではそんな現象を蒸発と呼ぶ。
今作は独日合作で撮られた蒸発する人々・それを手助けする人々、そして身近な人に蒸発されてしまった人々に迫ったドキュメンタリー映画。
既に海外では大きな反響を得ているとか。
どうアプローチしてこれらの撮影や取材が実現したのか?な映像が並びますが、共通して見えてくるのはこの社会の生きにくさ。何かトラブルに直面した時の選択肢の(少)なさから選ばざるをえない蒸発…
それでもまだ生きる選択をしている・できるならね…
今作観るとどれも非常に身近な問題であるし、いつ自分がその渦中になるのかもしれない可能性をそこかしこに感じさせる。
 
(2022年/フィリピン)
ジュン・ロブレス・ラナ監督
『ダイ・ビューティフル』の監督の新作。
(ほぼ)ワンシチュエーション、(ほぼ)2人(+…)のみの会話劇ながら、巧みな脚本と演出/演技が冴え渡りスリリングなサスペンスと多彩な問題意識が交差する。
同性の恋人を亡くした作家であり大学の教授が、彼の教え子とあるレストランで繰り広げる様々な会話のやり取りから漏れ出るそれぞれの想い、亡くなった恋人を介して顕になる秘密、対話の先に見えてきたもの…
本国では舞台にもなる程の人気と評価で、それも納得の秀逸な会話劇で、話の展開、様々な感情や秘密の織り込み方、その見せ方・隠し方、そしてここにはいないはずの亡くなった恋人の表出のさせ方と唸りっぱなし。
オープニング早々のダフト・パンクのネタに捕まれますが、今作のタイでの公開が2022年でダフト・パンクの解散はその前年だから製作中にまさにニュースが飛び込んできたタイミングだったのかな?と。
 
(2009年/アメリカ)
タイ・ウェスト監督
配給: OSOREZONE
『X』シリーズで広く知られる様になった監督の日本未公開作品。
1980年代に実際に起きた事件に着想を得て、当時のオカルト映画の雰囲気を再現して撮った作品。
転居先の家賃を稼ぐべく高額のベビーシッター募集に惹かれた女子大生が辿る恐怖。
主人公の友人役で撮影当時マンブルコアの渦中にいたグレタ・ガーウィグが出演して好い味出してます。
近作でも1980年代のホラー映画への愛を惜しげもなく開陳しているタイ・ウェスト監督(因みに1980年生まれ)。
多分に低予算であるのも好転してか、そんな彼の愛がたっぷり。事が起きるまでのシビレ切れそうな長さもぽいと言えばぽい(苦笑)。
恐怖が起動してからの肝心の恐怖側があまりに無能でズッコケるとこもありますが、流石にショッキング描写の間合いや構成はこの頃から既に光るものあったな。
『X』シリーズの原点を堪能できました。