奇想天外映画祭が遂に本格的に神戸に上陸した。
※本格的の意味合いは後述
“映画史のはぐれもの、正統なる映画史にはどうしてもおさまりがきかない異形の存在、そんな作品を集めた裏街道が奇想天外映画祭である。” ※公式より引用
2019年6月に始まったこの映画祭は、新宿のミニシアター“K's cinema”をメイン会場に年々全国へと拡がりを見せ、今や全国の映画好きが自分の地元での開催を焦がれるカルト中のカルトな映画祭へとなりました。
関西では2020年12月に京都の出町座、2021年4月に大阪のシネ・ヌーヴォでそれぞれ初開催。
私もそれぞれの初回から通っております。
2022年には番外編としてジョン・ウォーターズ監督の『マルチプル・マニアックス』と『セシル・B / ザ・シネマ・ウォーズ』が幅広い劇場で上映。その流れは2024年4月にシネマ神戸にも及び、これが神戸で奇想天外映画祭の息のかかった作品の初の上映となりました。
が、映画祭本編は神戸では未だ開催されてはいなかったんですよね…
まぁ、前置きはこれぐらいで。
では今回の上映ラインナップに触れましょう。
ちなみにそもそもの“奇想天外映画祭2025”の上映ラインナップは、初登場となる作品+これまで上映で評判高かった作品のアンコールの混合構成になっております。
まずはシネマ神戸で上映の12本。
①『リキッド・スカイ』
(1982年/アメリカ)
監督はモスクワ出身/イスラエル経由のスラヴァ・ツッカーマン。
1980年代初頭のNYのファッション&ディスコシーンを舞台にした業界物を軸にしつつも、ジェンダーレスとSEXやドラッグに溺れる若者達の青春や葛藤を絡め、そこに侵略物SFが忍び寄る構成。
サウンドトラック盤は1980年代のテクノポップやニューウェーヴを語る際外せない名盤である。
②『ウィッカーマン』final cut
(1973年/イギリス)
スコットランドの原始的宗教が支配する島を舞台としたフォークホラー。
カルト映画の金字塔であり、この映画祭の代名詞的作品でもある。
アメリカでの公開の際に大幅なカットがなされた他、オリジナルのネガの紛失等も重なり本来の120分版は現在では観ることが出来ない。そのオリジナルに1番近いバージョンが2013年に作られたfinal cutである。
2006年にニコラス・ケイジ主演でリメイクされた。
③『赤い唇』
(1971年/ベルギー・フランス・ドイツ)
“『血とバラ』以来のアーティスティックなヴァンパイア映画”と賞賛された怪奇幻想映画の巨匠ハリー・クーメルの代表作。
④『デコーダー』
(1984年/ドイツ)
1980年代のヒンヤリとした西ドイツを舞台に当時のノイズ/インダストリアル・ミュージックシーンの才人が大挙して出演/音を提供したカルト映画。
原作はバロウズ(出演もしている)。いかにもバロウズ的な全体主義/監視社会/強権力への嫌悪、当時の西ドイツの袋小路感、そしてこの頃世界中で急速に浮上してきたノイズ/インダストリアルミュージックが持っていたカルト的ムードが張り詰めたSF的救世主譚。
昨年再発もされたサウンドトラック盤は当時のノイズ/インダストリアル・ミュージックやノイエ・ドイッチェ・ヴェレのムードが満載の名盤。
⑤『肉体の悪魔』
(1971年/イギリス)
17世紀のフランスで実際に起きた“ルーダンの悪魔憑き事件”をモティーフにした小説や戯曲を原作に描いたナンスプロイテーション映画の先駆的怪作。
監督は鬼才ケン・ラッセル。
デレク・ジャーマンが美術で参加。
⑥『闇の中の魑魅魍魎』
(1971年/日本)
ヌーヴェルヴァーグにも影響を与えたモダニスト中平康が自身のプロダクションを設立しての第一弾。
1960年代に空前のブームとなった19世紀の高知の浮世絵師“絵金こと弘瀬金蔵”の物語。
主人公が自身の中に巣食うもの、その血のルーツ、社会的な立ち位置等と向き合いながら自分だけの絵を獲得して行くまでをエログロも辞さぬ描写と外連味たっぷりの演出で魅せ切る。
ヘヴィなロックサウンドもフィーチャーしたドロドロな劇伴は黛敏郎で氏はナレーションも担当。
※ちなみにシネマ神戸では、
8/8(土)-8/14(金)
『月曜日のユカ』
8/15(土)-8/21(金)
『狂った果実』
の上映もあり!
⑦『チャパクア』
(1966年/アメリカ)
アルコールとドラッグの中毒から抜け出そうとサナトリウムに入ったビートニクな青年の体験を描く監督の自伝的要素強い作品。
ハードな幻想描写、ラヴィ・シャンカールの音楽とフィリップ・グラスの音楽監修、そして動くムーンドッグと見どころ・聴きどころ多し。
コンラッド・ルークス監督はこの後二作目『シッダールタ』を撮って忽然と表舞台から姿を消した。
⑧『プライベート・パーツ』
(1972年/アメリカ)
主人公女性が身を寄せた叔母の経営するホテルで遭遇する奇妙な住人たちの姿を描いたサイコサスペンス。
『デス・レース2000年』で知られる監督ポール・バーテルの初長編作品。
⑨『血を吸うカメラ』
(1960年/イギリス)
エメリック・プレスバーガーとのコンビで『赤い靴』や『ホフマン物語』を撮ったマイケル・パウエルの単独監督作品。
しかし公開当時はその性的・暴力的な内容から酷評されパウエルはこの後ほぼ作品を撮れなくなってしまった…
パウエルの没後に評価が高まり現在ではサイコ・スリラー映画の原点として認知されている。
⑩『昇天峠』
(1951年/メキシコ)
死期の迫った母親の遺言状を作るために町までのバスに乗った主人公に降りかかる不条理なトラブルの数々…
ブニュエルのメキシコ時代の傑作。
⑪『くすぶりの年代の記録』
(1975年/アルジェリア)
1954年のアルジェリア独立戦争までのアルジェリア建国の歴史を「灰の都市」「荷車の年」「くすぶりの年」「虐殺の年」という4つのテーマに分け3時間で描いた歴史ドラマ大作。
随所に登場するストーリーテラーの“Mad Man”に注目。
1975年の第28回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを獲得した。
⑫『赤い夜』
(1974年/フランス・イギリス)
テンプル騎士団の秘宝を手に入れるために共闘した“赤い仮面”の男が率いる仮面軍団とゾンビ軍団だったが…
カルト映画『顔のない眼』を撮り、シネマテーク・フランセーズの共同創設者でもあったジョルジュ・フランジュの遺作となった荒唐無稽なアクション活劇。
そしてパルシネマしんこうえんで上映の2本。
※両作品共に35㎜フィルム上映
①『フリークス』
(1932年/アメリカ)
見世物小屋を舞台にした物語を実際に見世物小屋で働く人々を起用して描いた作品で大きな衝撃を観客にあたえた一方、『魔人ドラキュラ』で知られるトッド・ブラウニング監督のキャリアは今作で閉じざるをえなくなってしまった曰くつきの作品。
日本では『怪物團』の邦題で封切られた。
デヴィッド・リンチ『イレイザーヘッド』でもオマージュをされている。
②『ラッチョ・ドローム』
(1993年/フランス)
自らのルーツであるロマの映画を撮り続けるトニー・ガトリフ監督が、その放浪の歴史を音楽を通して描いた映像叙事詩。
“ラッチョ・ドローム”とはロマの言葉で“良い旅を”の意。















