Electronic Dolphin Eats Noise -2ページ目

Electronic Dolphin Eats Noise

空論上の九龍城

台湾ニューシネマを代表する作家エドワード・ヤン(1947.11.6-2007.6.29)、近年の世界的な再評価の高まりはここ日本にもリバイバル上映といった形で届いております。

 

彼のフィルモグラフィーは、

光陰的故事(1982年/台湾)

※台湾ニューシネマの夜明けを象徴する新人監督4人によるオムニバス映画。ヤンは2話目「指望」を担当

『海辺の一日』(1983年/台湾)

※長編デビュー作。ヒューストン国際映画祭グランプリ受賞

『台北ストーリー』(1985年/台湾)

※ロカルノ国際映画祭審査員特別賞受賞

『恐怖分子』(1986年/香港・台湾)

金馬奨最優秀作品賞受賞、ロカルノ国際映画祭銀豹賞受賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞受賞

牯嶺街少年殺人事件(1991年/台湾)

 金馬奨最優秀作品賞受賞、東京国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門審査員特別賞&国際批評家連盟賞受賞。長らく上映やソフト化が困難な状態になっていたことで知られる

『エドワード・ヤンの恋愛時代』(1994年/台湾)

 金馬奨脚本賞・助演男優賞・助演女優賞受賞

『カップルズ』(1996年)

ベルリン国際映画祭アルフレッド・バウアー名誉賞受賞、金馬奨助演男優賞受賞、シンガポール国際映画祭監督賞受賞、ナント三大映画祭ナント市賞受賞

『ヤンヤン 夏の思い出』(2000年/台湾・日本)

※カンヌ国際映画祭監督賞受賞。日本(岩井俊二監督)と台湾(エドワード・ヤン監督)と香港(スタンリー・クワン監督)の映画界が組んだY2Kプロジェクトがきっかけとなって生まれた作品で、その縁もあり日本版の予告は岩井俊二監督が手がけた

 

日本の劇場での公開の流れはこんな感じ

※映画祭等での上映は除外

1992年

4月

牯嶺街少年殺人事件

1995年

7月

『エドワード・ヤンの恋愛時代』

1996年

4月

『恐怖分子』

12月

『カップルズ』

2000年

12月

『ヤンヤン 夏の思い出』

2015年

3月

光陰的故事

2017年

5月

『台北ストーリー』

 

あとここ数年の日本でのリバイバル上映の流れ

2015年

3月

『恐怖分子』デジタルリマスター版

光陰的故事

2017年(生誕70年/没後10年)

3月

牯嶺街少年殺人事件4Kレストア・デジタルリマスター版

5月

『台北ストーリー』4Kデジタル修復版

2023年

8月

『エドワード・ヤンの恋愛時代』4Kレストア版

2025年

4月

『カップルズ』4Kレストア版

12月

『ヤンヤン 夏の思い出』4K版

 

とこんな風に過去作品がスクリーンに蘇った流れを押さえた上で…

長編デビュー作である『海辺の一日』はしかし、なぜだか日本での正式な劇場公開はなされず、映像ソフト・配信等にもならず長らく幻のデビュー作のままでした。

 

が、

 

いよいよです!

 

『海辺の一日』4K

(1983年/台湾)

配給:ツイン

2026年7月10日公開

主演にはシルビア・チャン、撮影にはウォン・カーウァイ作品で知られるクリストファー・ドイルの名前もあります(これが彼の撮影監督デビュー作)。

私も長年焦がれていた作品だけに非常に楽しみであります。

 

関西では…

7/17 (金)₋

kino cinéma心斎橋

テアトル梅田

京都シネマ

その後上映予定

シネ・リーブル神戸

となります。

 

さらにはこちらも併せて上映されるとか。

 

『恐怖分子』デジタルリマスター版

(1986年/香港・台湾)

配給:ツイン

今年は製作から40年、日本での最初の劇場公開からは30年の節目。

世界が囚われたあの闇とまたスクリーンで対峙できます。

 

さてここ数年日本での上映が様々な形で盛り上がる台湾映画ですが、今年も続々と気になる作品の上映が続きます。

いくつか紹介しましょう。

 

赤い糸 輪廻のひみつ

ギデンズ・コー監督(2021年/台湾)

配給:台湾映画社/台湾映画同好会

2023年末に小規模に劇場公開された本作。

監督は天才ギデンズ・コー。

メインキャストにはクー・チェンドン、ビビアン・ソン、ワン・ジン。

台湾の人々にとって身近な神様である月老(ユエラオ)と輪廻転生を軸に、ラヴロマンス/コメディ/ホラー/アクションと横断したうえ泣ける!その何でもありなエンタメっぷりが口コミで広がり2024~2025年にかけて全国に上映が拡がり、しかもロングラン&アンコール上映にまで及んだ作品でした。

ギデンズ・コーならではなジャパニーズ・サブカルネタ満載&お得意の下ネタも少々。名犬アルーの存在も忘れ難し。

しかし、上映権にはリミットがあり(ちなみに諸事情でソフト化も難しい)昨年の11月末に向けて全国で駆け込み上映&鑑賞が巻き起こったのも記憶に新しいですね。

あと配給を担ったのが個人レベルでやられている会社2社(どちらも女性)の共同だったのも話題になりました。

 

そんな『赤い糸 輪廻のひみつ』が早くも日本のスクリーンに帰ってきます!

新ビジュアルも鮮やかに、今回は2026年5月8日から2027年4月末までの上映権を同じく台湾映画社と台湾映画同好会が再取得してくださいました。ありがとうございます!

image

もう何度も観たって方々も、どうしても都合がつかず未鑑賞で終わってた方々も、そして気になってた・知らなかったって方々もどうぞ今回の貴重な機会を存分にご活用ください。

ちなみに私はわりと早い時期(2024年2月)にシネマ神戸で初めて鑑賞した後、2025年5月に塚口サンサン劇場で2度目、昨年の11月末のラストチャンスに同じく塚口サンサン劇場で3度目を堪能させてもらいました。

 

万博追跡

リャオ・シャンション監督(1970年/台湾)

配給:ハーク

1970年に開催され今もなお語り継がれる大阪万博、そこの台湾パビリオンのコンパニオンを務める日本育ちの台湾人女性が主人公。彼女は母から台湾から生活費を送ってくれている謎の人物と上海で父を謀殺した人物の2人を探すように命じられます。はたして見つけられるのか?万博会場、そして神戸へと駆けめぐる姿を描いた台湾映画になります。

主人公を演じるのは日本でも活躍したジュディ・オング氏。実際の万博の会場内でも撮影されております。

全然知らなかった作品でしたが、昨年の大阪アジアン映画祭のオープニング作品として2Kレストア版が日本初上映され気になっておりました。

この4月10日から一般の劇場公開が実現、現在109シネマズ大阪エキスポシティ(!)と出町座にて上映中、5/16 (土)からシネマ神戸でも上映されます。

 

最後は特集上映の話題。

 

台湾 Filmake——映画に恋した 3 つの人生——

配給:ライツキューブ

日本未公開含む3本の台湾映画の特集上映になります。

ラインナップは…

『台湾ハリウッド』

シャオ・リーショウ監督&北村豊晴監督(2013年/台湾)

1960年代の台湾語映画の黄金時代、“台湾のハリウッド”と呼ばれた温泉街・北投を舞台としたロマンスコメディ。台北映画祭にて脚本賞を受賞。

『めぐる面影、今、祖父に会う』

ホワン・ウェンイン監督(2023年/台湾)

映画美術の仕事に携わる主人公は父の介護のため撮影現場を一時的に離れ故郷へ戻ります。長年ホウ・シャオシェン監督作品で美術監督を務めたホワン・ウェンインの監督デビュー作で、プロデュースはホウ・シャオシェン。

『超低予算ムービー大作戦』

リー・ヨウチアオ監督(2024年/台湾)

ある低予算映画の制作過程でバカバカしくて奇妙な事態が次々と巻き起こるジェットコースター・コメディ。広告界の奇才リー・ヨウチアオの最新作。

と3作品ともに映画を作る人々の物語なんですね。これはコンプリートせねば!

 

関西では、

4/25 (土)₋

シネマ神戸

5/2 (土)₋

シアターセブン

でご覧になれます。

 

台湾映画最高!大好き

『ひなぎく』4Kレストア版

ヴェラ・ヒティロヴァ監督(1966年/チェコスロヴァキア)

配給: チェスキー・ケー

元町映画館

2018年以来、スクリーン鑑賞はこれで7回目。

神戸でのひなぎく上映はKAVCのイメージが強かった(2010年代は毎年の様に上映していた)けど、KAVCなきあとの4Kレストアでの初上映は元映になりました。

にしても何あの発色!そしてディテールの肌触り。初体験のような興奮でした。

唐突に奪われたプラハの春、その直前のひと刹那。

自由への渇望とそれへの覚悟、男性社会やブルジョワ階級への痛快なカウンター、実験映画の難解さを嘲笑うかのようなポップさを伴い、60年の時の流れすらものともしない確信と革新に満ちた映画体験。

全編ポップでお洒落、私ら世代だとガーリーだなんて言葉が何度も頭過ぎるわけですが、今これを撮らねば!残さねば!な気概や新訳以降幾分掴みやすくなったメッセージにも目を向けたい。

ちなみに今作は母国で当時発禁処分になり監督は7年間活動を停止させられた。

わがままを言わせてもらえば60周年/4Kレストア版のこのタイミングでのパンフレット欲しかったです。クリアファイル2種類(どちらか選べず!)購入しました。

※ 近々で同じスクリーンで鑑賞したのもあるけど『ひなぎく』とネリー・カプランには近しい臭いがあった

 

ペリリュー 楽園のゲルニカ

久慈悟郎監督(2025年/日本)

配給:東映

塚口サンサン劇場

武田一義氏の同名漫画を原作としたアニメーション映画。

太平洋戦争中のペリリュー島(パラオ諸島)での日本軍とアメリカ軍の戦いを史実を元に構成したフィクションになります。

漫画家志望である一等兵の主人公越しの戦場の地獄。

原作は未読ですが、可愛らしくデフォルメされたキャラ造形と戦場の地獄の描写とのギャップがよりそこにある恐怖や無慈悲さを浮かび上がらすなと。

それぞれの立場での苦しみも掴みやすく配置されていました。

今このタイミングでこの映画が広く観られ、過去が知られる事を強く望みます。

 

クロード・シャブロル傑作選

『肉屋』

クロード・シャブロル監督(1970年/フランス・イタリア)

配給:コピアポア・フィルム

シネマ神戸

これにて傑作選の鑑賞コンプリート。

3作共にサスペンスの体制用いながらも人の心の胡乱なグラデーションの揺めきをスクリーンに炙り出してたけど、これはもう究極っちゅーか、極地ってか、勘弁して欲しいほどに完璧に愛の前に倫理すっ飛ばされてて完敗。

規格外にフリーダムな小学校長の女性と軍隊上がりの肉屋の男性。強烈に惹かれ合う2人の背後には不穏な影が常に寄り添い…

今回の特集3作品全ての劇伴手掛けたピエール・ジャンセン✖️全ての撮影手掛けたジャン・ラビエの手腕も冴えまくる!

 

ジミ・ヘンドリックス「エレクトリック・レディ・スタジオ・ヴィジョン」

ジョン・マクダーモット監督(2024年/アメリカ)

配給:IAC MUSIC JAPAN/Santa Barbara Pictures

シネマ神戸

ジミヘンが専用(当時は画期的であった)スタジオとして創り上げたエレクトリック・レディ・スタジオがいかにして生まれたか?そこで(僅かな期間ではあるが)ジミはどう過ごしたか?そしてジミの死後のスタジオの行方…

ジミ含め周囲のミュージシャンやスタッフ達がここにどれだけの可能性を感じていたか?が関係者達の証言により浮き彫りになる。だけに早過ぎる唐突な死が悔やまれる。

ちなみに“エレクトリック・レディ”は勿論彼の(バンドの)3rd『エレクトリック・レディ・ランド』から。

この3rdの録音に要した費用がとんでもない額になったことが私設スタジオ構想の一因。

※ シネマ神戸②で観てたらこのスタジオから生まれた作品としてビリー・アイドル『反逆のアイドル』 (1983年)とアイアン・メイデン『頭脳改革』 (1983年)が紹介されてた!シネマ神戸②では今後両者のドキュメンタリー上映!『頭脳改革』はバハマのコンパス・ポイント・スタジオでの録音/エレクトリック・レディ・スタジオでのミキシングだそう

 

ジミ・ヘンドリックス「アトランタ・ポップ・フェスティヴァル1970

シネマ神戸

亡くなる2ヶ月前に出演したフェスの模様や関係者へのインタヴューを収録した『Jimi Hendrix:Electric Church』(アメリカで2015年にTV放送〜2019年に劇場公開)から演奏部分だけを抜粋した作品。

メンバーはエクスペリエンスからミッチ・ミッチェル(Ds.)、バンド・オブ・ジプシーズからビリー・コックス(Ba)。

圧巻の演奏の数々、その果てのラストのあれは見事。

 

イエス イエスソングス ライヴ・イン・ロンドン1972

(1975年/アメリカ映画)ピーター・ニール監督

配給:REWINDERA PICTURES/WOWOW

シネマ神戸

『こわれもの』(1971年)&『危機』(1972年)といったイエス史&プログレ史に残る名盤をリリースした彼らの『危機』直後のツアーの一環でのロンドンのレインボーシアターでのパフォーマンスを収録。

そもそもが1975年にアメリカで製作・公開された映画であり、要所要所にロジャー・ディーンのアートワークやシュールな映像(ミジンコ?)がフィーチャーされたり、ライヴ全編でなくバスっと切られまくる編集が今なら独特の味わい。

当時のライヴ映画ならではの制限ある尺内でこの時点の代表曲の網羅でなくソロコーナーも入ってたりするのが謎度高いですが、お陰で各プレーヤーのポテンシャルの高さは堪能できますな。

まぁ、何よりスティーヴ・ハウだろ。忙しなく様々なギターを操り、多彩な音楽性を投入する上、好青年。

そりゃカメラも彼を追うよ。

一方のリック・ウェイクマンは花があり過ぎるのに音の面では意外に目立ってないんだよな〜。ソロコーナーは鬱憤溜まってたかのように弾き倒しておりますが。

あとはオリジナルメンバーの2人、

ジョン・アンダーソンは驚く程に地味。

クリス・クスワイアは派手なパフォーマンスじゃないのにカメラ映えするな。

アラン・ホワイトがふらりとステージに上がった流しのドラマーの兄ちゃんってないでたちで、しかもほとんど映りませんが、それもそのはずで前任のビル・ブルーフォードが抜けたのはこのツアーが始まる1週間前なのである。

ちなみにこのツアーの音源はライヴアルバム『イエスソングス』(1973年)としてリリースされてますが、一部それ以前のツアーの音源もあるため、ブルーフォードとホワイト両者の演奏がそれぞれ収められている。

まぁ、印象的なのがメンバーが皆楽しそうに演奏している姿。相当にプログレ化に手応えを感じていたのだろう。翌年にはよりプログレを推し進めた『海洋地形学の物語』をリリースしますが、それはバンドの崩壊の始まりでもあった…

※ シネマ神戸②で現在上映中の『クリーム フェアウェル・コンサート1968』、このライヴの前座を務めたのがデビュー直前のイエス。意外な組み合わせな感じもしますが、この頃はまだプログレ化する前でクリームやジミヘンに近い音楽性でありました

つげ義春氏を最初に知ったのは…
間接的な形では江口寿史著『爆発ディナーショー』(1991.7.1)収録の「わたせの国のねじ式」だ。

わたせせいぞう氏の描く世界にねじ式の主人公が迷い込み医者ならぬ便所を探すマッシュアップ作品。

中3の時リアルタイムで買って読んだ。
でも元ネタは知らなかった…

同じく中3の時に竹中直人氏の映画監督デビュー作『無能の人』(1991.11.2)が劇場公開。
随分話題にはなっていたし、漫画原作なのも情報として得てたけど、まだその原作者がどんな人なのかは掴めてなかった。結局見たのは大人になってから。

つげ義春氏の存在やその作品をちゃんと知ったのはSTUDIO VOICEの名特集『マンガのパースペクティブ』(1993年11月号)が最初だ。高2の時。

ここで「わたせの国のねじ式」の元ネタと『無能の人』の原作者が一つに繋がった。

同年『ゲンセンカン主人』を石井輝男監督が映画化(1993.7.24)。

でもちゃんと読んだのはもう少し後。
1番最初に買ったのは『ねじ式・紅い花』(小学館/1988年刊)。
多分二十歳ぐらい(1990年代半ば)だったと思うけど当時はまだ古本屋でない本屋にも並んでてとりあえずオリジナルの「ねじ式」読みたさに購入。
所謂“奇跡の2年”に描かれた作品群が中心。

まぁ、ハマった訳ですが、とは言えこれ買ってから約四半世紀はこれしか持ってなかったんだよな…


長年一冊のみを愛読していたつげ義春作品でしたが、他も揃え始めたのはここ2-3年の話。きっかけは特にないんだけどコロナ禍以降古書店通いが増えたのが大きいかな。



ここ2-3年で自分の中で四半世紀“奇跡の2年”のみの存在であったつげ義春氏のBefore & Afterに触れられたんだよな。

Beforeでの様々な試作(時代劇/青春/SF etc.)、AfterのMore不条理やMore旅情、そしてMore私情…

もっと早く出会いたかった!


先日もまんだらけ寄って『つげ義春作品集2 ヨシボーの犯罪』(小学館/1992年刊行)を購入したばかりでした。


お疲れ様でした。ありがとうございました。