映画館に行くつもりじゃなかった?(2026年4月2日-3日) | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

『女鹿』
(1968年/フランス・イタリア)
クロード・シャブロル監督
群雄割拠なヌーヴェルヴァーグの作家たちの中でも異彩を放ちつつ晩年まで途切れることなく作品を撮り続けた異才の絶頂期を摘み食いできる嬉しい傑作選からまず1本。
ブルジョワなマダムと彼女に見そめられた若き女性画家。マダムの熱い眼差し、それを感じつつも巧みにかどわかす画家。そんな2人の前に現れたのはイケおじな建築家。画家は建築家に惹かれ、建築家もまんざらでもない。そんな2人を観たマダムは…
ありがちな三角関係から派生する愛憎劇もシャブロられたらこうも蠱惑で複雑で独創的な迷宮へと誘われる。
二転三転で変形する三角の死角に突如現れる女鹿(邦題が牝鹿でないのには唸る)に戦慄。
にしても当時シャブロルと結婚していたステファーヌ・オードランの前夫がジャン=ルイ・トランティニャンだなんて、マジでどんな神経でのキャスティングなんだ(苦笑)。オファー受ける側も受ける側だよ。
撮影と照明がまた見事で、スクリーンの端々に配置された官能の煌めきがある種の催眠効果あった気がする。あんなの普通ならあざとく感じるけどあのキャスト陣なら映えるよね。
あとマダムの謎の友人2人組がツボ。何あのケッタイな民族音楽!
 
蒸発
(2024年/ドイツ・日本)
アンドレスアス・ハートマン監督&森あらた監督
配給:アギィ
毎年約8万人が失踪す日本、この国ではそんな現象を蒸発と呼ぶ。
今作は独日合作で撮られた蒸発する人々・それを手助けする人々、そして身近な人に蒸発されてしまった人々に迫ったドキュメンタリー映画。
既に海外では大きな反響を得ているとか。
どうアプローチしてこれらの撮影や取材が実現したのか?な映像が並びますが、共通して見えてくるのはこの社会の生きにくさ。何かトラブルに直面した時の選択肢の(少)なさから選ばざるをえない蒸発…
それでもまだ生きる選択をしている・できるならね…
今作観るとどれも非常に身近な問題であるし、いつ自分がその渦中になるのかもしれない可能性をそこかしこに感じさせる。
 
(2022年/フィリピン)
ジュン・ロブレス・ラナ監督
『ダイ・ビューティフル』の監督の新作。
(ほぼ)ワンシチュエーション、(ほぼ)2人(+…)のみの会話劇ながら、巧みな脚本と演出/演技が冴え渡りスリリングなサスペンスと多彩な問題意識が交差する。
同性の恋人を亡くした作家であり大学の教授が、彼の教え子とあるレストランで繰り広げる様々な会話のやり取りから漏れ出るそれぞれの想い、亡くなった恋人を介して顕になる秘密、対話の先に見えてきたもの…
本国では舞台にもなる程の人気と評価で、それも納得の秀逸な会話劇で、話の展開、様々な感情や秘密の織り込み方、その見せ方・隠し方、そしてここにはいないはずの亡くなった恋人の表出のさせ方と唸りっぱなし。
オープニング早々のダフト・パンクのネタに捕まれますが、今作のタイでの公開が2022年でダフト・パンクの解散はその前年だから製作中にまさにニュースが飛び込んできたタイミングだったのかな?と。
 
(2009年/アメリカ)
タイ・ウェスト監督
配給: OSOREZONE
『X』シリーズで広く知られる様になった監督の日本未公開作品。
1980年代に実際に起きた事件に着想を得て、当時のオカルト映画の雰囲気を再現して撮った作品。
転居先の家賃を稼ぐべく高額のベビーシッター募集に惹かれた女子大生が辿る恐怖。
主人公の友人役で撮影当時マンブルコアの渦中にいたグレタ・ガーウィグが出演して好い味出してます。
近作でも1980年代のホラー映画への愛を惜しげもなく開陳しているタイ・ウェスト監督(因みに1980年生まれ)。
多分に低予算であるのも好転してか、そんな彼の愛がたっぷり。事が起きるまでのシビレ切れそうな長さもぽいと言えばぽい(苦笑)。
恐怖が起動してからの肝心の恐怖側があまりに無能でズッコケるとこもありますが、流石にショッキング描写の間合いや構成はこの頃から既に光るものあったな。
『X』シリーズの原点を堪能できました。