日本のコーン缶は「ここまでやるか!」ってぐらい品質がいい。粒はそろってるし、弾力があってシャッキリしてるし、発色剤を使用していない商品でも色鮮やかだし。
一般的にはサラダ、シチュー、ピラフなどの具に使用するため「素材系缶詰」の印象が強いものの、じつは「ひとヒネリ」で手早く酒のツマミに仕立てることも可能な万能選手なのです。
汁を切ってコーンを耐熱容器にあけ、塩コショウをしてレンジで加熱し、バターをからめれば美味しい「バター・コーン」の出来上がり。ビールやウイスキーによく合います。
こんなに手軽で美味しいバター・コーンですが、食べることは稀です。バター・コーンには、つらい思い出があるのです。トラウマというやつです。
今回はその話をしたいと思います。
あれは中学1年の出来事。放課後、帰宅しようとすると、2年生のある先輩に呼び止められました。
「面倒なことになった」
私は内心で舌打ちしました。と言いますのもその先輩、いつも長い学ランと極太ズボンをお召しになっているヤンチャな2年生だったのです。かといって逃げたりすれば翌日の鉄拳制裁は目に見えているので渋々歩み寄りました。
先輩には連れがおりました。なんと、わけあって学校から一定期間登校をご遠慮いただいている3年生の重鎮が、お忍びで学校を視察に参られていたのです。2年の先輩としては、なにをおいても接待しなければなりません。そんなところへ通りかかった1年は、いいカモ以外の何者でもありませんでした。
「おう1年、駅前のドムドムでハンバーガー買ってこい!」
私は2年の先輩から任務を仰せつかりました。選択肢は二つ。素直に使い走りをするか、きっぱり断ってから鉄拳制裁を受け泣く泣く使い走りをするか、です。もちろん前者を選びます。
気の進まないミッションは一刻も早く済ませるに限ります。私は先輩から預かった小銭を握りしめ、駅前のハンバーガー・ショップ『ドムドム』へと自転車を飛ばしました。先輩の注文はチーズバーガーとポテト、重鎮はフィッシュ・バーガーとバター・コーン。いまでも忘れられません。あいにく、バター・コーンは品切れでしたが、それは私の責任ではありません。
速攻で戻った私の気も知らず、先輩は「オッ、早かったねえ!」と上機嫌です。私は注文の品を渡しながら重鎮に言いました。
「あ、バター・コーンは品切れでした」
次の瞬間、上機嫌だった先輩が鬼の形相に急変し、怒声を発したのです。
「なんで品切れなんだよぉ!」
そればかりか私は、手加減なしの往復ビンタを食らって吹き飛びました。こんな理不尽な仕打ちを受けては、もう黙っていられません。私は地面にひざまずきながらも、先輩にきっぱり言ってやりましたよ。
「も・・・申し訳ありませんでした!」
平謝りですよ。すかさず重鎮が「いや、品切れはその1年のせいじゃねーだろ」と宥めてくれたので、その場は収まりました。当時は「さすがは重鎮、懐が広いな」などと感心しておりましたが、よく考えれば彼さえ学校に来なければ余計な使い走りも、とばっちりの往復ビンタもなかったのです。
停学くらったんなら家で大人しく『西部警察』の再放送でも見てろよな・・・。
原価 150円前後。
難易度 1,5mdk
心的外傷度 32trm
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