先日、関東地方のとある県から来られた患者さん。
地元の肛門専門のクリニックに受診したところ、初診でいきなり手術を勧められ、その場で申し込みの説明を受けましたが、家に帰って考えたいと伝えたところ、薬も出してもらえず、薬だけでも欲しいと言ったら手術の申し込みをしないと出せないと・・・
そこの肛門科はめっちゃ流行っていて待合室に患者が溢れているそうです。
そしてほぼ全員が手術を受けて通院していると・・・。
これはおかしい・・・
と思い、地元で古くから肛門科を専門にしている病院をセカンドオピニオンで受診。
手術の必要性については触れられたけれど、薬は普通に出してくれました。
肛門が狭くて切れ痔(裂肛)が治らない・・・ということで、そこの病院でも手術の話が出たそうですが、申し込みは強制されなかったそうです。
手術せずに治らないものか
と思い、遠方からわざわざ受診されたのでした。
確かに潰瘍化した古そうな傷(裂肛)があり、肛門も少し狭い状態でした。
だけど普通に診察できる。
肛門鏡も入る。
そしてもれなく出残り便秘。
残った便をちゃんと出さないと傷は治りません。
肛門の中が便まみれだと傷は治らない。
だから治療の第一歩は肛門のウンコを出すこと。
便まみれの肛門にどんな薬を塗っても、注入軟膏を入れてもちゃんと効きませんから
そして狭くなった肛門はブジー治療で拡げています。
痛みを伴うので、なかなかに辛い治療になるのですが、手術をせずに治したい患者さんは手術ではなくブジー治療を選ばれます。
あまりにも辛くて続けられない場合は手術治療にいつでも切り替えられますが(その場合は患者さんの地元の専門医を紹介しています)、うちの患者さんたちは頑張られます。
ブジー治療と肛門マッサージは頑張ったら頑張っただけ結果が出るので、月に1回の通院のたびに痛みが軽減し、拡がっていることが実感できるので頑張り甲斐があるようです。
痛いことされるので「通院が楽しみ〜」とはなりませんが、拡がってくると痛みがなくなるので、通院の間隔も3ヶ月に1回とか半年に1回になっていき、そうなると本当に通院を楽しみにして旅行気分で、実際、ご家族と旅行を兼ねて来られる遠方の患者さんもおられます。
そうなるまで頑張って下さいと励ましながら治療をしています。
患者さんにブジー治療の提案をしたところ、手術をしたくなくてここに来たので頑張りますと
痔の薬が欲しくて受診したのに、手術の申し込みをしないと薬を出してくれないなんて・・・
と言われていたその関東地方の某県の肛門科からは、実はたくさん患者さんが私の外来に流れて来ています
私の所にもこんなに流れて来ているくらいだから、おそらく、そこの地元の専門病院にもたくさん流れていることでしょう。
手術なんていらないのに手術と診断されている患者さんばかり
そして「そこで手術を受けてから肛門が痛くて便が出せなくなった」、「細い便しか出せない
」という患者さんも来られいて、おそらく必要のない手術をするから術後の後遺症が発生しているのだと思います。
セカンドオピニオンで受診した地元の専門病院でも、先生から私と同じようなことを言われたと多くの患者さんがおっしゃっているので、過剰手術をしていることは間違いないでしょう。
何度もブログでお伝えしていますが手術が必要な痔は一握りです。
痔の多くは手術をせずに改善します。
必要のない手術を受けると肛門が狭くなったり、手術の傷が治らず難治創になったり、色々なトラブルが起こりやすいです。
切りすぎた肛門は元に戻りません。
取り返しのつかないことにならないためにも安易に手術を受けないことです。
初診で受診して患者さんの承諾を得ずにその場で手術をしたり、手術を強制するようなことはあってはならないこと。
もしもそのような状況になったら一旦家に持ち帰りましょう。
そしてあと1軒でも2軒でもいい。
別の先生を受診してほしい。
その際は肛門を専門にしている先生を選んで下さいね。
こちらに専門の先生の探し方を書いています。
日本の肛門科の歴史と現状〜専門の医師を見分ける〜
あなたの近くにもきっといるはず。
まじめに良心的にやっている肛門科の先生が。
ところが、その患者さん
この記事を読んで専門の先生を見つけて受診されていたのです
クリニックのホームページを調べると確かに専門の先生でした。
ちょっと悲しくなりましたね。
専門の先生なら必要のない手術をしたり、術後にトラブルが起こっても責任を持って治るまで患者さんを見捨てないと思っていたから・・・。
研修経験もある
勤務実態もある
専門医も持っている
だけど一番大切なことが欠けていた。
それは肛門と患者さんに対する「気持ち」「思い」。
これは肛門科に限った話ではないのかもしれません。
売上げのことだけ考えれば、手術をせずに患者を帰すより、手術をしたほうが儲かります。
売上げは一桁違ってくる。
そして「いかにリピートしてもらうか」を考えると、手術をすると術後の通院が定期的に必ずあるので外来収入もあがる。
また言葉が悪いけれど「治らずにダラダラ通ってくれるほうが儲かる」。
待合室が混んでいるのも治ってない患者が多いからではないのか
痔を治して通院を終わらせようよ
皮膚科医から肛門科医に転身して27年。
憤りを感じながら診療をしてきて、抑えきれなくなってブログやホームページで情報発信をするようになりました。
必要のない手術を受けて苦しんでいる患者さんを一人でも減らしたいと思って。
結果、私のブログを読んで下さった方は手術を受けずにすんだと喜んで下さっていますが、私の存在やブログ、書籍を知らない人のほうが当然多いので、まだまだ犠牲者は増えるでしょう。
医者の良心に期待するしかないですね。
医者の振るまいが悪すぎる。
本当に悲しくなる。
同業者として。
医師として、専門医としての誇りはないのかと問いたくなる。
医者の使命は病気を治すこと。
治して患者を手放すこと。
自分のクリニックに患者を通わせることが目標になってはいないか
治して通院を終わらせてあげたい。
私はそんな気持ちで診療をしています。
そのためには患者さんの協力が必要。
痔は間違った排泄の結果。
だからその間違いを正さなければ痔は治らない。
治ってもまた繰り返す。
だから痔の根本治療は痔の原因となった便通を治すこと。
うちの診療所では薬や注射や手術ではなく、まずは排便を見直すことから始めます。
治療の第一歩は正しい排泄から。
そして治療は患者さんの生活の中にあります。
私が治療をするわけじゃない。
だって私が代わりに便を出してあげることもできないし、Sザルベを肛門の中に塗ってあげることもできません。
患者さんがやってくれなければ治療にならないんです。
だから治った時に患者さんから「先生のおかげです。ありがとうございました」とお礼を言われたときに「私はなんもしてへんで。治したのはあなただから
よく頑張りましたね
」と伝えています。
手術の申し込みをしなくても痔の薬は出してもらえるのが普通です。
どうか冷静になって受診して下さいね。
関東地方の方、まじめに良心的にやっている肛門科の先生はたくさんおられるので探して下さい。
診療所の患者さんへ
土曜日はビストロヒマワリのお弁当の配達があります。
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患者さんのリクエストで復活させた
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