高齢者の便通管理 | みのり先生の診察室

みのり先生の診察室

5万人以上の「オシリ」を診察してきた
肛門科専門医の女医がつづる
お尻で悩める人へのメッセージ

時々、90歳を超える超高齢者の方が付き添いの方と一緒に来院されます。

ご家族に連れられて来られる方もいますが、老人ホームからヘルパーさんと一緒に来院される方もいます。

痔で悩んで来られる場合も多いのですが、困っておられるのは便通です。

便秘で出ない
出るけどスッキリしない
下剤を飲むと下痢になる
便がもれてオムツが汚れる
糞詰まりになってしまって出ない

悩みは人それぞれですが、便通のコントロールがうまくいってなくて悩んでおられます。

便秘だから下剤を飲んで出せばいいんでしょ!

というものではないんです。

下剤で、かえって症状を悪化させているケースも多いです。

下剤にも色々な種類があります。
どの薬がいいのかは人によります。
合う合わないもありますが、適切に合わせることが大切です。

よく飲んでおられるのが「便をやわらかくする薬」です。
酸化マグネシウム、マグミット、マグラックスなどがこれです。

これは便の水分を増やすお薬です。

便を出す薬じゃないです。

だから、これを飲んでも便が出ないからって、量を増やすと、便が軟らかくなりすぎて下痢になったり、ねちょっとした便になるので、かえって便が出しにくかったり、残りやすかったりするんです。


blog82

診療所のセラピードッグ「ラブ」
セラピー犬の認定条件・その6
「声を出さない」
目の輝き・活動が生き生きし、
常にうれしい・楽しいという表情でありながら、
どんな場合でも声を出さない。



また出口の便秘には飲み薬は効きません。

出口の便秘を直腸性便秘と言います。

以前のブログで詳しく解説しましたので、知りたい方はコチラも読んで下さい↓

痔になる人とならない人の違い
痔になる人はどんな人?毎日出てても便秘?!
「おなかの便秘」と「出口の便秘」
食事のたびに便が出るのも便秘?!
おしりの感覚が鈍ってる?
トイレを我慢すると便秘になる?!
紙に便が付いたら便秘?!
下剤を飲んで便秘になる?!
下剤の効かない便秘?!
便秘とは「便を秘めること」
週末排便  


直腸性便秘になると「便を出す力」が弱くなります。

排泄力の低下ですね。

でも、考えてもみてください。

歳を取ると体の機能が低下しますから、排泄力だって落ちるんです。

だから便が出しにくくなったり、スッキリ出なくなるのは、ある意味「老化現象」なんです。

だからある程度、排泄をサポートしてくれるようなものが必要になります。

それが人によったら漢方薬で効いたり、下剤で効いたり、便を出す座薬を使ったりと、対処法が異なります。

どれが合うか、どれなら毎日使えるか、色々試してみます。

そして大切なことは、そのように治療することによって、少しでも快適な生活を送れるようになることです。

体が不自由でお一人では出来ないケースは周りの人に協力してもらう必要があります。

認知症の方は内服薬の管理も必要です。

ですからご家族やヘルパーさんと一緒に治療を考えていきます。

ご本人も周りの人も幸せになるような治療を提案できたらいいなあと思っていつも診療に当たっています。

便通が良くなると気が晴れます。

そのせいでしょうか。

皆さん、お元気になられるんです。

その変化を見るのがとても嬉しいです。

排泄サポートすることによって生活の質も変わり、人生までもが変わります。

どうか「歳だから」「こんなに体が不自由だから」とあきらめないで、相談して欲しいです(*^_^*)