ドラゴンクエスト日記 -96ページ目

065.アレフガルド---エンディング  on ドラゴンクエストI

もはや動かなくなった竜王の口の中から、ころんと小さな玉が転がり落ちてきた。
激しい疲労で震えが止まらない両手をなんとか動かしてその玉を拾い上げると、その玉がいったい何なのかすぐに思い至った。



そう。
これこそがアレフガルドの大地が闇に閉ざされることになった原因に違いない。
竜王が奪い去ったあの光の玉を、ようやく取り戻すことができたのだ。



そのまま僕が光の玉を天高くかざすと、まばゆいばかりの光があたりにあふれ出した・・・。

両目からは、いつの間にか涙が溢れ出ていた。
ついに、ついに世界に平和が戻ったんだ!



光の玉から放たれた光を間近で受けたせいか、僕の体力とマジックポイントは最大限にまで回復していた。
しかしもう戦う必要などない。
このアレフガルドに、もう恐るべきモンスターは存在しないのだから。



竜王の城を歩み出ると、そこには懐かしくもまぶしい太陽の光がきらめいていた。
太陽の暖かい日差しを受け、思わずこ笑みがこぼれでた。



最初竜王の城に訪れたとき、この城の周りには毒の沼地が禍々しい瘴気を放っていたものだ。
しかし今その場所にはきれいな花々が咲き乱れており、つい先ほどまでここが恐怖の中枢だったとは想像もできない平和な光景に変わっていた。



暖かい日差しの中を、気持ちの良い風が駆け抜けていく。
たったそれだけの当たり前のことを、いったいいつから忘れてしまっていたのだろう。



僕の最後の仕事は、ラダトーム城に戻って王に竜王撃破の報告をすることだけだ。
ルーラでラダトーム城まで戻ればあっという間だが、せっかくなのでこれまでお世話になった人たちに挨拶していこう。



まずは虹の洞窟。
初めて来たときは、「愚か者よ、立ち去れい!」なんて言われてじいさんに叩き出されたっけ。
そのじいさんは相変わらず小難しい顔をしていたけれど、それでもじいさんなりの表現で
僕を褒め称えてくれた。



「よくぞやった、リューンよ。精霊ルビス様もきっとお喜びのことじゃろう。ルビス様はこの地を作られたお方。そなたのことを見守っていたはずじゃぞ」

精霊ルビス様。この世界を作った偉大な精霊だ。ご先祖さまだけじゃなく、ルビス様まで見守ってくれていたのか。竜王を倒すことができたのも、きっとその見えざる助力があってこそなのだろう。



続いてリムルダールの町を訪れた。
光を取り戻した町の人々は活気に満ち溢れ、平和な時代の到来を心から喜んでいる。
僕が通りを歩くと、誰が伝えたのか僕が竜王を倒したことをみんなが知っているようだった。



町の人たちと話をしたが、ラダトーム城にも知らせが届いているようなので早く戻れと急かされてしまった。でも、もうちょっとのんびりして帰りたいなぁ。



町の外壁で、ロッコさんとナナさんに再び出会った。行き違いになっていた二人もなんとか出会うことができたようで、喧嘩にならないでよかったよ。ほんと。



そして鍵屋に行くと、もう新しい鍵は売ってくれず、これからは研究生活に入るらしかった。なんでも何回使っても壊れない魔法の鍵を作るんだそうだ。
それが完成したら、すごい重宝するなぁ。ぜひ完成させて欲しいな。悪用厳禁だけど。



マイラの村でもみな喜びの声を上げていた。
パフパフお姉さんにも褒めてもらえるかしらと、ちょっとドキドキして温泉場に行ってみた。



うーん、お姉さんはドコかなぁ・・・いた。
お姉さんは今日は休業中のようで、まったりと足湯を満喫しているようだった。
僕に気がつくと、トロンとした目で話しかけてきた。



「こんなにのんびりした気持ちでお湯につかるのは何年ぶりかしら・・・。前はお湯につかっていても、心まではあったまらなかったものね」



そういうとにっこりと微笑み、またトロンとした目で空を見上げていた。
お姉さんもここで戦っていたに違いない。男性限定だけど、人の心を少しでもあったかくするために、ここで戦っていたに違いない。



パフパフというある意味最強の武器で。



世の中がついに平和になり、お姉さんは戦う必要がなくなったのだろう。
いつまでも穏やかな顔で空を見上げているお姉さんを残し、僕はマイラの村を後にした。



お次は雨のほこら。
ここには人のいいじいさんがいるので、聖なるほこらのいかついじいさんよりも気軽に訪れることができた。



「そのせつはそなたの力を試させて欲しいなどと、失礼つかまつった。そなたこそ真のロトの血を引きし勇者! 伝説の勇者の再来であった。そなたのことはのちのちの世にきっと言い伝えられてゆくことじゃろう。みごとじゃったぞ、リューンよ」



これまた最大限の祝辞で、聞いているこちらが照れてしまうほどだ。
その後は僕が始めてこのほこらを訪れたときや、ガライの竪琴を携えて戻ってきたときの思い出話に花を咲かせた。



じいさんはまだまだ話したそうにしていたが、次回の来訪を約束して別れを告げ、次にガライの町へと向かった。
モンスターの出現しない旅路はとても快適だ。



とくに夜、野宿する際はこれまで慎重に野営地を決める必要があった。
寝ている間に襲われたらひとたまりもないので、岩の隙間や木の穴などを探し、体をキュウキュウにしながら寝ていたのだ。
体を伸ばして寝ることができることは、なにものにも代えがたい幸せの一つだった。



ガライの町でもみな平和を謳歌し、僕のために詩を作ってくれるという人まで現れた。
ご先祖さまには及ばないかもしれないけど、これからは僕の冒険譚も語り継がれていくのだろうか。
ちょっと嬉しはずかしいい気分。。。



そして次に訪れたのはドムドーラの町。
もはやここには誰も残っていないが、竜王を倒したことを報告しに行こうと思ったのだ。
光の玉の輝きによって、アレフガルドに散在していた毒の沼地はそのすべてがきれいな花畑へと変わっている。



ドムドーラの町でもそれは同じで、以前に訪れたときのような死の気配は微塵もない。
しかし崩れ去った町並みが元に戻るはずもなく、物悲しさは以前のままだった。



町の大通りに足を踏み入れると、僕は目をぱちぱちとしばたかせた。
・・・人?



まさかこんなところに人がいるとは思えなかったが、通りの中央に立っているのはまさしう人間だ。
・・・でも、なんだかうっすらと透明になっているんですけど。。。

たとえて言うなら、ガラスに映った人影のように希薄で・・・しかし確実にそこに見えているわけで・・・。
((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル



敵意はないようなので恐る恐る近づき、声をかけてみる。
旅慣れている感じではあるが、とてもおしゃれな外見で普通の冒険者ではなさそうだ。



「おや? あなたには私の姿が見えるようですね。私の名はガライ。かつてこの地を旅していた吟遊詩人です」
ガライデス ( ゚Д゚) ΣΣ(◎Д◎;)ナンデスト!?



ええぇ!?
あの有名な吟遊詩人の、ガライその人だってぇ!?
しかもとっくの昔に死んだはずのガライさんが、どうしてまたこんなところに??



「かつて、ここドムドーラもそれはそれはにぎやかな町でした。ほら、こうして目を閉じると、あのころの情景が浮かび上がってきました」
そういいながら目を閉じたガライさんは遠く何かに思いをはせ、そして霞のように消え去ってしまった。



そしてまた町には静寂が戻り、通りの真ん中で僕は一人立ち尽くしていた。
ガライさんが詩を歌っているんだろうか。
町の雰囲気がどこか軽くなったような気がした。



・・・なんだったんだろう、今の。



夢を見ていたようで、でも確かに現実の出来事だった。
それにしてもガライさんに会うことができるとは驚きだ。
また後でガライの墓にでも行ってこようかしら。



そして最奥の城塞都市、メルキド。
僕が倒したゴーレムは町の人に片付けられたのか、すっかり跡形もなくなっている。
もし僕がまだ倒していなかったら、竜王亡き今でもまだここで仁王立ちしていたのだろうか。



この遠く離れた町にも伝令は駆けつけていたらしく、町はお祭り騒ぎになっていた。
そんな中、町の片隅に住むゆきのふさんのお孫さんが、しんみりとお酒を飲んでいた。
僕が話しかけると、おじいさんのことを思い出したのか不意に泣き出してしまい、なだめるのにひとしきりの時間がかかってしまった。



これで一通りの町や祠を見て回った。
最後はラダトームの町を見て、そしていよいよ城に戻ろう。



歩いて帰ろうかとも思ったけど、時間がかかるばかりなのでルーラでひとっ飛びすることにした。
ラダトーム城の光景を思い浮かべ、ルーラの呪文を唱える。すると僕の体は光を放ちながら宙を飛び、五回ほど目をまばたかせた頃にはもうラダトーム城まで戻ってきていた。



ホント、便利な呪文だなぁ。



海を挟んで竜王の城が目前にあったラダトームの町では、その脅威がついに消え去り、人々は笑い、歌い、明日への活力に満ち満ちていた。
感慨深く町に足を踏み入れ、入ってすぐの武器屋に目を向ける。



懐かしいな・・・・。
僕がこの冒険で一番最初に買った武器は、たしかこの店のこんぼうだったよな。
普段着のままこんぼう一本を振り回し、スライムと死闘を繰り返していた日々がなんだかとても遠い昔のことのように思えた。



そういえば、町の片隅でローラ姫捜索隊の人が倒れていたよな。
なんど話しかけても「もうだめだ・・・ぐふっ」とか言って、それなりに元気そうにしてたっけ。
町の人に言付けておいたからちゃんと介抱されただろうけど、ちゃんと城に戻れたんだろうか。



そんなことを考えながら、妙に懐かしくてその場所に足を向け、僕は愕然としてしまった。
・・・そんな、そんなバカな。



僕がこの冒険を始めたのはもうずっと昔のことだ。
そのとき、彼はこの町の片隅で傷を負って倒れていた。
その彼が、どうして同じ場所でまだ寝ているんだ?



竜王が倒れ、平和になったこの世界で、なぜ彼はまだ路傍の傍らで一人倒れたままになっているんだ?



かつてローラ姫を捜索するために旅に出た兵士。その彼が、人目につかない町の片隅で人生の終幕を迎えていた。
僕が話しかけても、当然返事はない。物言わぬ屍になっていた・・・。



浮かれていた気分はすっかりと消沈し、僕は町の人にこのことを伝えた。
しかし町の人々はそれに気軽に応対し、すっかり意気消沈していた僕は肩透かしを食らったような感じになった。



町の人々はまさにお祭り騒ぎで、竜王がいなくなったことに揚々とし、一人の兵士が命を落としていることにさして興味が沸かないようだった。
大きな違和感を感じつつ、僕はがっくりと肩を落としてラダトーム城へと向かった。



最初に訪れたときからずっと、ラダトーム城は緊張と不安と恐怖に覆われていた。
それだけ目前に迫る竜王の城からの無言の圧力が強かったのだろう。
だがその暗雲は切り開かれ、人々は再び日の光の下にその身をさらすことができるようになったのだ。



遠目からでもよく目立つロトの鎧を着ているせいか、城門に近づく僕に気づいた衛兵たちが一斉に立ち並び、最敬礼で道を開けてくれた。
うーん、気持ち良いけど照れくさいなぁ。



城の中に入ると、僕の帰還を歓迎する笛の音が鳴り響き、色とりどりの花吹雪が舞い踊り、
まさに城をあげての歓待ぶりだった。
そして中庭に兵士たちが隊列を組んで立ち並び、その奥にラダトーム王が待っていた。



長かった僕の冒険が、ようやくここで終わりを告げるようだ。
ラダトーム王が杖を片手に一歩僕へ歩み寄り、いつものように威厳に満ちた声を城内に響き渡らせる。



「おお! リューン! すべては古い言い伝えのままであった! すなわち、そなたこそは勇者ロトの血を引く者! そなたこそこの世界を治めるにふさわしいお方なのじゃ!」



ラダトーム王が高らかにそう宣言すると、隊列を組んだ兵士たちもそれにあわせて歓喜の雄たけびをあげる。
って、僕がラダトームの王に!? そんなばかな。



「どうじゃ? このわしにかわってこの国を治めてくれるな?」
兵士たちの声が収まるのを待ち、王が僕に問いかけてきた。しかし、そのときにもう僕の答えは決まっていたのだ。



もし僕が治める国があるとしたら、それは自分自身で探さなくては。



僕がそう答えるとうすうすわかっていたのだろうか。ラダトーム王は案外あっさりと引き下がってくれた。ありがたい。



「そうか・・・。そういうことならもう止めまい。リューンよ。気をつけて旅立つのじゃぞ」
そう言って僕を送り出そうとしたとき、二階へと続く階段から女性の声が響き渡った。
「待ってください!」



その場にいた全員が声をしたほうを振り向き、二階からその声の主が駆け下りてくるのを見つめていた。
そう、ローラ姫が駆け下りてくるところを。



息を切らせ、上気した顔を火照らせながら王の横に立ったローラ姫は、瞳を潤ませながらその一大決心を僕にぶつけてきた。



「そのあなたの旅に、ローラもお供しとうございます。このローラも連れていってくださいますね?」



これほどまでに見事な駆け落ち宣言もないだろう。
ラダトーム王の顔が怖くてとても見ることができないぞ。。。



父親を目の前にしてのこの大胆発言を受け、僕はどう答えるべきなんだろうか。
ローラ姫の申し出は、僕個人としては当然飛び上がるほど嬉しいことだったし、まさに夢にまで見た出来事だ。



しかし僕はこのままこの城を出て、再び旅に出ることになる。
アレフガルドの大地には平和が戻ったが、それ以外のまだ見ぬ世界にはどんな危険が待ち受けているかもわからない。



そんなあてのない危険な旅に、ローラ姫を連れていってもいいものだろうか。
ローラ姫は不安と緊張からか、その大きな瞳を潤ませて僕を見つめている。
この人を傷つけるようなことがあったら、もしものことがあったら、僕は決して自分を許すことができないだろう。



やはりダメだ。
ローラ姫を連れて行くことはとてもできそうにない。
もし僕がいつか自分の国を見つけることができたとき、そのときに迎えに来るまで待っていて欲しい。



そう伝えたのだが、ローラ姫は断固として自分の意思を変えるつもりはないようだった。
瞳をさらに潤ませて「そんな、ひどい・・・」と絶句した後、「連れて行ってくださいますね?」とただそれだけを繰り返す。



この調子だと、置いていこうとしても勝手についてきそうな勢いだ。
ラダトーム王をちらりと見ると、自分の娘のあまりの強引さに苦笑いしていた。
もはや引き止めても無駄だと悟っているらしい。



その顔を見て僕もようやく決心した。
終わりがないかもしれない新しい旅に、二人で出発することを。



「さあ! リューンの新しい旅立ちじゃ!」
辛抱強く僕とローラ姫のやりとりを待っていてくれたラダトーム王が、最後に一際高らかな声を響かせた。

僕とローラ姫はくるりと振り返り、そして歩き始めた。



頭をよぎるのは、これまでの長く苦しかった旅の思い出。
多くの人たちとの出会いと別れ。
ご先祖さまの残した伝説との邂逅。



それらを胸に、僕は歩き出す。
走り出さんばかりの勢いで僕の横を歩く、美しい王女と共に。



僕は歩き出す。
僕たちは歩き出す。



新しい世界を目指して。


===今日のリューン===
レベル  20
HP    138
MP    131
お金   12806
経験地 29087

道具   やくそう×4、かぎ×1、りゅうのうろこ、おうじょのあい、ロトのしるし、ほのおのつるぎ、キメラのつばさ
武器   ロトのつるぎ
鎧    ロトのよろい
盾    みかがみのたて
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