2014年06月28日 日出の港にて
朝っぱらから、メールの着信音。休日の睡眠を邪魔する奴は、例え橘咲(たちばなさき)であろうとも手打ちに致す!
にっくき携帯電話を逆えび固めにしてやろうかと思ったが、後で泣くのは自分であるからして、逆流した血液を何とか正常な状態に戻したところで、一度覚めた目はどうにもならず、不本意ながらメールを読む。
どうやら、疎遠になった釣りの師匠が、近くの港で竿を出しているらしい。取り敢えずスルー。
雨マークが消えて曇り空。日曜日が曇りの予報だったので、土曜日は雨だったら散髪、曇りだったら釣りに行くと決めていたのだが、状況が変わった。今週は、どうしても亀川の様子を探りに行きたかったのだ。
今日、師匠の釣りに付き合ったら、明日は散髪に行かなければならないし、夜、日出の港に一人残されても楽しい釣りになりそうにない。
朝食を食べ、洗濯物を干している間に決断した。今日は、刺し餌だけ持って行って、師匠とワイワイやる。師匠と一緒に俺も納竿する。体力を温存して、明日はちょいと早起きをする。起床するやいなや散髪に行き、その後亀川で釣りをする。
ってことで師匠に返信「了解。後で顔出します」
「やぁやぁ、久し振りやな。餌、買って来た?」
「撒き餌作ったら帰られんやん」
「そやな」
「で、釣れた?」
「さっぱり」
「さよか~・・・師匠、ここはもうちょっと遠目を流さんと釣れまへんでぇ」
「そうなん?」
「足元には敷石があって、そこから少し深うおます。そして、竿一本先くらいから駆け上がりで50センチ位浅そうなっておます」
「はんまかいな? なんでやろ?」
「基礎を入れるために掘ったんでっしゃろな」
「なるほど、なるほど、そ~かいな。ほんなら、もうちょっと遠く・・・見えまへん」
「眼鏡かけなはれ」
「持ってきてない」
視力は、僕と同じくらい悪いくせに、眼鏡を掛けようとしない師匠。まだまだ若いと言いたいようだが、しっかり老眼は始まっているし、近視も乱視も発祥済み。どういう思考回路なのか、さっぱり理解できないが、これ以上は言っても無駄。終いにゃあ、ぶち切れるので、忠告は一回こっきりってのが、師匠の取扱説明書に書いてある。
さて、師匠の隣で、撒き餌もせずに仕掛けを投入しますが、餌取りパラダイス。オキアミのボイルも練り餌も、何でも御座れ。そう言えば、さっきサビキ釣りのファミリーが5センチにも満たないチャリコ(真鯛の赤ちゃん)を鈴生りにさせてたな。
奴等は通称、「赤い悪魔」どんな餌だろうが貪り食って残さない。しかも餌が沈む途中で群がって食い千切るので、浮子に当りは出ないし、針も呑み込まない。
浮子が沈むこともなく、忽然と針に刺した餌が消える。釣り人は、狐につままれたようだ。
故に、我々チヌキチの間では「赤い悪魔」と恐れられている。
僕のアドバイスに従って、ちょいと遠目を流していた師匠(棒浮子のトップが見えないからと、沈め探り釣りに仕掛けを変更)が、メイタを釣り、41センチのチヌを釣り上げた。
師匠の向こう側で近場で釣っている師匠の知り合いは、延べ竿。鯵でも釣っているのかと思ったら「これでチヌを釣ると面白い」なんて大真面目。竿先のすぐ近くに唐辛子浮子で、糸の下の方に水中浮子。どうやら真面目にチヌを釣っているらしい。
が、残念ながらこの場所、岸壁の際ではあまり釣れない。それに、赤い悪魔の群がいては、岸壁の際は釣りになろうはずもなく、仕掛けが馴染む前に、ほとんど餌は食われてしまう。
が、それでも諦めない師匠の知り合い。なんと、帰る間際にメイタを釣り上げた。
師匠の撒き餌が終わると同時に、僕の所にいた餌取りも消え、オキアミでさえ食われなくなった。やがて、師匠と師匠の知り合いは帰り、何も釣っていない僕だけが残った。
「河豚でもいい、何か釣らなければ」
際っ際をオキアミで流していたら、浮子は沈まなかったが、ホゴ(標準和名 カサゴ)が釣れたので「やれやれ」と納竿して帰ったのでありました。
2014年06月29日 亀川の防波堤にて
さて、昨日、不本意な釣りをしてストレスを溜めたので、今日はリハビリに。と、言っても葱坊主のようになった直毛、剛毛の頭を処理しなければなりません。例によって例の如く、目覚ましを掛けずに目覚めた朝は、気分爽快であったものの、10時を大きく回り、どちらかと言えば11時に近い時刻。
「こりゃあ、いかん」
毛布を蹴っ飛ばし、新聞を読みながら朝食を食べ、排泄物を処理しながら広告を物色し、洗濯物を干したら一目散。刈りたての直毛、剛毛の角刈り頭は、気持ち良くもあり、痛くもあり。
防波堤に辿り着くと、先端に、この防波堤で声を掛けられたおじさんと、キャンピングカーで生活している奇妙なおっさんがいました。おじさんは、どうやらクロ釣りをしているようで、おっさんはその横でぺちゃくちゃとお喋りをしています。聞くともなしに聞こえたはなしは、過去の自慢話。「あそこで昔大きなチヌが釣れた・・・」ってな具合の。
「触らぬ神に祟りなし」
あんなおっさんになつかれて、毎回、毎回、自慢話を聞かされたのでは堪らない。どこの防波堤にも過去の自慢話をしたがるおっさんや爺がいるものだ。
予想通り、海には木っ端グロの群。おまけに今日は鯔もいる。
オキアミは底まで持たず、練り餌はたいした当りも無く消えている。
どうやら、ここにも赤い悪魔がいるらしい。干潮時には水深1ヒロの浅い海。どうにも餌取りをかわすのが難しい。
刺し餌を撒き餌に包んでドボン!なんちゃって紀州釣りの始まり、始まり。しかし、練り餌は残るものの、チヌ様の気配無し。オキアミは二回ほど浮子が震えたかと思ったら取られてる。
こうなったら、チヌが回遊してくるまで待つしかない。
ひたすら、刺し餌を撒き餌に包んでドボンを繰り返す。
やがて、撒き餌が終わったおじさんが道具を畳んで隣に座り、僕の釣りを見ながら、あれやこれやと質問をする。
基本、クロ釣りで遊んでいると言いながら、大型のチヌを何枚も釣り上げる僕を見て、俄然興味を持ったのだそうだ。おじさんは僕を「名人」と呼ぶ。
無論、名人と呼ばれるほどの腕ではないことは自覚しているが、悪い気はしない。あれや、これやと、丁寧に解説をしてあげると、嬉しそうに聞いている。根が素直なんだろうな。僕と違って。
そうこうしているうちに、今度はこの防波堤で、最初に僕の釣りに感心したおっちゃんがやってきた。おっさんと約束をしていたらしく、二人並んで竿を出した。
おじさんは、そこに行って、暫くした後、防波堤をあとにした。
やがて、おじさんは愛犬を連れて散歩にやってきた。先ずは、おっちゃんとおっさんペアとひとしきり話をし、僕の所にやってきた。
「あれからどうですか?」
「さっぱりです」
「そうですか」
「さっき、あっちのおっさんがメイタを釣りましたよ」
「あぁ、聞きました」
チラチラとこちらを見ながらタモ入れをしていたが、20センチ位にしか見えなかった。
おじさんは、愛犬と砂浜に行き、静かな時間が流れた。が、近くに大学生らしき群がやってきて、斜め方向にぶっこみの仕掛けを投げる。何故、防波堤と垂直に投げないのだろう?斜めに投げれば、他の釣り人の仕掛けとお祭りをする可能性が大きいと言うのに。まったく、素人の心理は理解できない。しかも、広い防波堤で、わざわざ僕の隣に来て。ぶっこみだったら、砂浜の方が釣れるだろうに。
そんな不快感を抱いていたら、一度沈んで浮いてきた浮子が海中に引き込まれて行きました。
「来たかも?」
竿を立てるとなかなかの引きです。以前、切られたモンスターほどではありませんが、元気がいい。少し楽しんで魚を寄せると、魚が水面を叩く音を聞いて、一斉に視線が集まります。おじさんにおっちゃん、おっさんとおっさんの彼女に大学生の群・・・
心の中でガッツポーズを取りながら、サッとタモを出して魚を掬います。すると、見ていた全員から拍手。何故か大学生の群まで拍手。
大学生の群は、見に来て「大きな魚だ」と、しきりに感心していましたが、33センチの中型
「もっと大きいのもいるよ」
「えぇ~そうなんですか?これよりも大きいんですか?そんな魚が釣れるんですか?」
「はい」
そして、次の一枚は痛恨のバラシ。針が外れてしまいました。まぁ、幸いにも誰も注目してなかったので、何事もなかったように釣りを続け、二枚目の35センチを上げると、完璧に防波堤のヒーローでした。
そして、周囲もかなり暗くなった頃、浮子がもぞもぞするので仕掛けを回収しようと道糸を巻き取ったら、巻き取る糸に比例して竿が曲がります。何か食ってる?と思った瞬間、またもや針外れによるバラシ。
さてさて、そろそろゴールデンタイム、ビッグママちゃんいらっしゃいと、ケミ点灯・・・アナゴ、アナゴ、砂漠・・・
すると、先ほどタモで魚らしきものを掬っていたおっちゃんが
「45センチくらいある大物が、素人の老いぼれに釣れました」
「おぉ!それは素晴らしい」
「貴方のお陰です」
「いえいえ、僕は何もしていませんよ」
「いえ、貴方が釣るのを見て、俄然遣る気がでたから」
「あぁ・・・」
「そうじゃなかったら、また、いつものように適当な釣りをして、チヌには出会えず帰ったでしょう」
「そうですか」
本音を言えば「俺よりでかいのを釣るなよぉ」なんだけど、やっぱりサイズは時の運。ストレートに祝福しました。
「おめでとうございます」
「しかし、貴方がチヌとやり取りをしている姿は、絵になりますなぁ」
「どうも」
ちょっぴり、頬が緩む。
それからは、待てど暮らせど、浮子は沈まず。
次の時合いは、引き三分。真夜中過ぎになってしまうので、ここで納竿。